第17話 「夜に舞う大鎌の軌跡」
混沌魔力操作に変化したことで強化された肉体強化やエンチャントなどの感覚を慣らしながら、夜を待つ。
一気に狩りを進めるための準備は既に終えた。マジックタンクには一日フルで魔力を使っても問題無いくらいの魔力は溜めたし、体調も問題無い。
「始めるか、鉱魔獣狩り。試練の大鎌『機動』」
大鎌片手に洞窟を出て、肉体強化を発動させた。更に、魔力を薄く広範囲で広げることで探知も発動。鉱魔獣の位置を把握すると共に、今回の目標以上の力を持つ鉱魔獣には近づかないように注意する。
「いくぞ」
決意を口に出し、鉱魔獣を狩るために森を駆ける。
全力で行う肉体強化は10秒もしないうちに標的の鉱魔獣の元へと辿り着くほどの力を発揮した。
見つけたのは初めて俺が殺した魔鉱石の角を持つ3匹の狼の群れ。ステータスを見るに名前はローンホーンウルフだろうか。
勢いをそのままに先頭の一匹へと試練の大鎌を振り下ろす。抵抗も無く首を刈られたローンホーンウルフは死んだことにも気づかずに血を地面へとぶちまけた。
他のローンホーンウルフたちは仲間が一瞬で殺されたことに驚いているが、その隙は逃さない。
(アンバーバードの目『解放』試練の大鎌『機動』月光エンチャント)
俺は近くの一匹の首を更に刈り、アンバーバードの目を発動させて最後の一匹の動きを止める。壊れた試練の大鎌を再度呼び出してエンチャントをかけ直し、動き出したそいつの首も刈り取った。
断面から血が出て地面を濡らしている中で、一度息を整えてから洞窟へ運ぶ準備を始める。
「光の網」
光の線で編まれた網が現れ、ローンホーンウルフの死体を包んでいく。これも魔法を作ったときよりも強度が上がっているな。
死体がなかに入った網を持ち上げて、また洞窟の前まで戻ってきた。
適当に洞窟へと網を投げ捨て、また次の獲物を探すために走り出す。ある程度奥にいけば沢山の種類の鉱魔獣が生息しているからな。どんどん狩っていこう。
光を纏う大鎌の刃が、漆黒の夜に浮き上がる。
◇◆◇◆
同じようなやり方で吸収したことのある鉱魔獣たちを狩っては運ぶを繰り返していたが、普段よりも奥の狩場で遂に新しい鉱魔獣を見つけた。
人の子供くらいの背丈で犬みたいな見た目なんだが、二足歩行をしていて何故か背中から排気口が生えている不思議な動物。
こんな奴が存在するなんて......今まで動物に鉱石が生えているような鉱魔獣しか見てこなかったからな。警戒はしておこう。
俺は見つけた勢いそのままに他の鉱魔獣が反応出来ない速度で近づき、大鎌を振り下ろす。
しかし、そいつは刃が届く前にピクッと鼻を動かしたかと思ったら、排気口から煙を出して凄まじい速度で加速した。
そのせいで大鎌は空振り、地面に刺さった衝撃で壊れて光の塵となる。
「避けられた......匂いで勘付かれたのかな。あとは、あの速さにどう対応するか」
予想外の出来事に考えを口に出して整理しながら、試練の大鎌を再度出現させてエンチャントをかけ直す。
(追いかけっこは難しいかも......なら、通り道に刃を置くか)
いきなり攻撃されたことで憤っている謎の犬は唸り声を上げて威嚇してくる。
その姿は背丈も合わさって癇癪を起こす子供にしか見えない。
「こういうときには挑発だよ、な」
俺はわざと見下したように口角を上げ、指先で「来いよ」と挑発した。
こいつに言語を理解する知能は無いだろうが、自分が馬鹿にされていることはわかったらしい。
『ワオーーーン!!!』
空に向かって吠えてから魔力を高めて、地団駄を踏み始めた。魔力熱を発生させながら、背中の排気口から煙が何度も繰り返し噴出する。
完全に頭に血が昇ったのか、謎の犬は突進するように直線で俺に突っ込んできた。
「単細胞は扱いやすいな」
俺は少し右に逸れながら、大鎌の刃をこいつが進む進行方向の少し先へ置いて前に振り抜く。
怒りで正常な判断が出来ない哀れな犬が失敗したと理解したときにはもう遅い。
加速したエネルギーと俺の力が合わさり、刃が通った後、胴から真っ二つに分かれる結果となった。俺の背後でべちゃっという音とともに二つの肉塊が地面へと落ちた音が聞こえる。
振り向くと、血と石油が混じったような不快な匂いをさせる液体が肉塊から溢れ出ていた。
「なんだったんだ、こいつ。背中に人工物が生えているなんて奇天烈すぎるだろ」
肉塊になった上半身に近づいてよく見ると、排気口は魔鉱石で出来ており無理矢理加工されたような無骨なものだった。
人工物というよりも、それを模しただけと言われた方がしっくりくる見た目をしているな。
「拾ってくっつけたとかではなさそうだな。ということは、鉱魔獣の進化の形としてこの排気口が生えた種なのかも......」
断面から見える内臓の半分は機械に酷似しており、中心からパイプが繋がって排気口近くに伸びている。あの煙はこのパイプを伝って出ていたのかもしれない。
確かなことはわからないが、食ってみれば何かわかるだろ。
「これも持ち帰って検証だな。俺の持っている鉱魔獣発熱器官操作も使えるようになるかもしれない」
楽しみだ......こいつの力があれば更に強さを目指せるだろう。
せっかく珍しい肉を手に入れたんだ。こいつのためにも、最大限の力を発揮するために全部位を鉱魔獣にしなければ。
「それこそがシューラ様の試練を生き残る鍵になるかもしれないしな」
――それから俺は夜が明けて、太陽が顔を出すまで鉱魔獣を狩りを続ける。
新しい狩場は新種の宝庫であり、カンガルーにワニ、毛むくじゃらの人型狼にスライムと中型の爬虫類など、今まで見たことが無い多種多様な鉱魔獣に大鎌を振り下ろしていった。
残念ながら、謎犬のような変な個体を見つけることは叶わなかったが、目的であった部位を持つ鉱魔獣は確保することが出来た。こいつらを食うのが今から楽しみだ。
俺は最後に狩ったライオンを持ち帰り、地面へと投げ捨てる。
眠気で落ちかけている瞼を擦りながら、光線解体で全ての肉をブロック状へと加工して要らない部位はリフレッシュで分解する作業を進めた。
全てを解体し終えたときには太陽は頂点へと達し、相応の時間が掛かっていたことを俺に知らせている。
「もう......眠気が限界だ。食うのは起きてからでもいいだろ......」
全力で動き続けた俺には、この眠気に耐えることは難しそうだ。
最後に洞窟入口を光の網で塞いでから、倒れるように意識を手放した。
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