プロローグ
「のう、シューラよ。どうして下界は妾たちの力を鉱魔獣を倒すことに用いずに、戦争の道具にするものがいるのだろうな」
「ふむ、それは難しい問題だな。我らとは違い数が多い人の子は様々な思考をすることでその結論に至っている。その中で自分だけが甘い蜜を吸えればそれで良いと考える者が争いを扇動し、企てるのが原因ではあるだろうな」
青と黄色の花々が広がる草原の中心に建つ神殿で妾、暗影の神シャーマと陽光の神シューラは顔を見合わせて下界を見ていた。
「そうじゃよな~......人の子全ての考えを変えるのは不可能じゃし、酷い扱いを受けた人の子を救い、試練を乗り越えて貰うのが丸いかの」
人の子全てを害する鉱魔獣という共通の敵が居ようとも関係無いのじゃな。結局は鉱魔獣を滅したとしても人の子同士の争いが激化していくのじゃろう。
妾たち神は力を分け与えることくらいしか下界に干渉できないからな。思考力が欠落した害獣どもを処分してくれる人の子が増えればいいのじゃが。それも妾、仕事のひとつじゃな。
「シューラは正道を歩んでいる者に力を与える役目じゃしな。妾が力を与える者に期待するとしよう」
「そうだな、我の力は幸せに触れる機会が多いものに渡されることが多い性質上、世界の均衡を保つために使われることが多いからな。太陽に照らされた道を歩く者が恨みを抱くことは少ないだろう」
これまでの歴史を見ても人の子は争い続けてきた。その出来事の大小はあるが、地位と力が無いものが捨て駒にされるのが常であり、鉱魔獣が現れてからも変わらないのじゃ。
妾の力を与ええずに済む者が増えるのが理想なのじゃが、それは難しいというのが現実。ならば、このまま死にたくないという想いがある人の子に力を分け与えるのがやはり近道じゃな。
「願わくば妾の力で自分の望む道を歩けるようになる人の子が増えてくれればよいの」
「恨みや苦悩を持つ者は我らでも思いもよらぬ方向性へ成長することがあるからな。その者が腐った者たちを淘汰してくれることを願おうではないか」
与えた力を取り上げることも出来るが、世界の流れを変えることに繋がるため最終手段になるしな。妾のことを信仰しろとは言わないが、力を与えた者が畜生以下の存在になることだけは避けたいのじゃ。
「悩んでいても仕方が無いの。屑以下の者どもに虐げられた哀れな人の子の元へ行こうではないか」
目を閉じて、下界へと意識を飛ばしながら強い情念を持つ子を探していく。妾の加護を与えるには生きたいという想いと理不尽に抗うという意思が必要じゃ。
定期的に下界は見ているが条件に該当する者を見つける方が難し......いたの。
「どれどれ、こやつはどのような扱いを受けてこんな場所にいるのかの」
過去を遡り、この者の記憶を辿る。ふむふむ、なるほど......な。本当に何処にでも畜生以下の存在はいるもんじゃの。子供にこのような仕打ちが出来るなんて神経がいかれているとしか思えんわ!
「シューラよ、妾の力を授ける者がいたのでの。ちと行ってくるとしよう」
「ほう、珍しいな。シャーマの力は与える力が多い分、条件が厳しいはず。その者の名は何と言うんだ?」
「こやつの名は『ゼノヴェル』じゃ。孤立無援の状態に居る可哀そうな人の子よ」
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