居酒屋で愚痴
"今週金曜の夜とか空いてたら飲みに行かねえ?"
数少ない高校の友達のグループチャットから久しぶりに通知音が鳴った。
メンバーは5人しかいないんだけどな。
入船大和の誘いに、"OK"といち早く反応したのは古賀瑞樹。
"明日まで待って"との返信が、間山聡史。
川崎一彩が、"りょ"って…社会人なんだからもうちょっとなかったのかよ?
俺は、スケジュールを確認しながら土曜日に依頼がないことを確認して、昴義兄に飲み会の予定の連絡を入れて、土曜の午前中の依頼は受けないようにお願いした。
昴義兄から、了解をもらってからチャットに"参加"の返信をした。
チャットでは、何を食べにいくかで盛り上がっている。
俺はビールが飲めればいいけどな。
結局、ダンジョンでドロップした肉が売りの居酒屋に決まった。
予約は大和が取ってくれたらしい。
チャットしながら器用だな。
楽しみが増えたな。
「リッカは今日晩ご飯いらないのよね?」
母さんに聞かれて頷く。
「大和達と飲みにいくから、いらないよ」
「あら?大和くんたちと?久しぶりじゃない?」
そうだな。
「去年の年末以来かな?」
だから、半年は経ってるよな。
「飲みすぎないようにね」
「わかってるよ」
でもなぁ、残念ながら俺【毒無効】スキルがあるから、飲んでもアルコール分解されちゃうんだよな。
だから飲んでる雰囲気と美味しいものを楽しむことにするよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
全員ジョッキ片手に時間通り始まった。
何故かこのメンバーには、遅刻する奴がいない。
いや、いいことだよ?
けど、男5人もいたら、絶対時間にルーズなヤツっているじゃん?
まぁ、そんなのがいないから集まってるのかも知れないけどな。
俺たちは高校のクラスが同じで、その頃からなんだかんだとウマがあって一緒にいた。
俺と瑞樹以外は大学へ進学して、みんなは社会人2年目に突入したばかり。
「リーマン2年目はどうよ?」
俺は体験することはないだろうからな。
ちょっと気になるんだよな。
「どうもこうもねぇよ」
大和はジョッキを飲み干して、おかわりを要求する。
なんかスイッチ入れちゃったか?
なんかあったからの飲み会だったか?
「仕事の出来ねぇ上司と、他人の粗ばかり探すお局。
一方的に俺のことをライバル視する同期に、ミスをなすりつける先輩と同僚。
媚びを売って仕事を押し付けようとする新人の女に、獲物を狙うような視線で監視する他部署の女性社員…」
えっ…会社勤めってそんななのかよ?
俺にはムリだ。
聡史と一彩を見ると、こちらも深く頷いていたので、どこの会社も同じようだ。
マジかよ…。
「聡史と一彩もそうなのか?」
瑞樹が驚いた顔で聞いている。
「俺はもっとひどいよ」
一彩が項垂れている。
「俺のステータスの職業って、薬師で化粧品特化だったじゃん?
だから化粧品メーカーに就職したんだけど、社員の割合が女の人8割なんだよ」
肩身が狭いらしい。
あとは、大和以上に結婚相手として狙われているらしい。
数少ない男の社員の取り合いらしい。
うわー、なんだろう。
女の人が8割って聞いて、ちょっと羨ましい気がしてたんだけど、全然羨ましくなくなったな。
「一彩はなんで就職したんだ?
起業すればよかったんじゃないのか?自分で作った化粧品を売るために」
そしたら自由じゃん?
そう言ってみたら、
「いや、なんか面倒そうだったから」
って、返答が来た。
それはわかる。
だから俺は、昴義兄に丸投げした。
けどさ?
「それで別の面倒事に巻き込まれてたら意味なくね?」
「…こんなことになると思わねぇじゃん」
いやまぁ、確かにそうか。
「聡史は?」
「俺は…辞めるかも」
「マジかよ、なんかあったのか?」
聡史はでっかいため息を吐いて、
「俺は都内から出るつもりはなかったから、転勤のない会社を選んだわけ。
なのに転勤の打診が来てさ…断るなら辞めろみたいな風潮の会社だったんだよ。
別に今の会社じゃなきゃダメなわけじゃないし、辞めようかなって」
なるほど?
最初の条件と違うわけか。
「じゃあ3人とも辞めて起業しようぜ?」
瑞樹がなんか言い出したぞ?
しかも簡単に辞めてとか言ってるぞ?
「起業!?なんの?」
「俺と一彩の作ったものを売れるような会社?」
それはありかもな?
瑞樹はグラスとか作成しても販路がなかったしな。
一彩は心置きなく化粧品を作ることが出来るようになる。
「誰が会社を回すんだよ?」
大和の問いに、
「はっ?お前しかいないじゃん、大和。お前の職業って妖精王じゃん」
「妖精王と会社の経営とか関係ないだろ?」
大和が反論する。
確かに妖精王は会社経営とは結びつかないけれど、でもなぁ。
「大和はダンジョンにいる妖精で情報収集とかしてただろ?妖精は基本的には誰にも見えないし」
大和が見せてもいいと思ってる人にしか見えない。
だから俺たちには妖精が見えている。
妖精はなぜかダンジョンの外でも活動できるんだよな。
「それに妖精が好きだから、果物もドロップするんだろ?それも売れるじゃん?」
ダンジョンの食べ物は美味しいからな。
「それにさ?大和、優秀じゃん!」
瑞樹のその一言に尽きるな。
確かに大和は俺たちの中で1番頭がいい。
勉強も出来るが、頭でっかちではなく知識を使える頭の良さだ。
地頭がいいって言うのか?
確かに経営を任せるのはうってつけかもな。
「俺の出番は無さそうだが?」
聡史の声のトーンが落ちる。
「いや、聡史も要じゃないのか?事務や経理なんかはアドミンの聡史の独壇場だろ?」
「リッカ、正解!聡史がいないと成り立たない」
聡史は腕組みをして、何かを考えている。
「確かに俺なら出来るな」
うんうん。
いい感じにまとまりそうじゃねぇの!
やっぱり友達は、笑っててくれないとな?
「で、リッカはどうする?」
「俺?俺は昴義兄となんでも屋をやってるしな」
あぁ、そうだったーって忘れてたんかいっ!
「リッカも軸に考えてたんだよ。俺たち元々魔物の討伐にあんま興味ないから、よくアラート出しちゃって、慌てて潜るってことを繰り返しててだな?リッカに潜ってもらえたらなぁってちょっと思ってたんだよ」
それは、俺にもメリットはあるけど…。
よろずやの社員っつうか、経営者側だしな。
なんでも屋のまま、こいつらのダンジョンを管理する方法…。
「あっ、なら業務提携みたいにすればいいんじゃないか?通常より安めの価格で依頼を受けるとかさ。魔石はなんでも屋で買取させてもらうとか、その辺は昴義兄とも相談だけど、どうだ?」
みんなは顔を見合わせて、
「俺たちが使わない素材を買取してもらうのはいいかもな!個人の収入にするか会社の収入にするかは、後でちゃんと考えればいいしな。起業しようぜ!」
「だな!そうと決まれば、夏のボーナスもらって辞めるぞ!」
「「おー!!!」」
3人とも本当に7月末までに退職して、起業の準備を始めた。
ガンバレ!
お読みいただきありがとうございます!
もしよければ評価もおねがいしますm(_ _)m
トーヤのテンションがあがります(笑)
感想、誤字脱字報告もありがとうございます。
引き続き他の作品共々よろしくお願いします!
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