EPISODE:053 [だ・か・ら、トレジャーハンティングだっ、つってんだろうがタコ野郎。]
遅くなって本当に申し訳ないです。ごめんなさい。
私達は今、この魔窟を上へ上へと上っていた。
遭遇した魔物を一人残らず経験値に変えながら。
壁に埋め込まれている篝火がユラユラと揺れ、私達の影が伸び縮みする。
フェルには音を立てずに動けるように、独特の歩法を教えている。
今はまだぎこちなく、度々音を出しているが、思いの外飲み込みが早い。
やはり、こいつ才能があるな。
メイドじゃなくて護衛としてたら、こいつの愛しのお嬢様も守れていたと思う。
タラレバの話は置いといて、地上までもうそろそろか?
結構歩いたと思うが…。
そう考えていると、大きな空間に出てきた。
その規模は今までの広間とは違い、およそ10倍の広さはあった。
そして、決定的に違う所は、恐らくはこの場所が祭儀場だということだ。
部屋の中心には、私の知らない女神の像が建っていて、その前方に祭壇が置かれている。
どちらも、元は綺羅びやかな装飾が施されていたのだろうが、墓荒らしや風化などによって無惨な姿となっていた。
女神像の手には金属製の斧槍と円盾が握られており、戦神だということが分かる。
この2つが墓荒らしの被害にあってないのは、嵩張って目立つからだろう。
ここまで大きい墳墓、または魔窟だと、見張りみたいな奴もきっといる筈だ。
それに見つからないように運ぶには、これは大きすぎる。
いや、魔窟なら良いのか?まあいい。
しかし、そんなことは私には関係無い。
これらの武具は錆びれているが、素人目で見ても上質な物と一目で分かる。
欲しい。
なら?
取ってしまえ。
女神像に向かって歩き出し、祭壇の前に来ると私はそれに足を掛けて登った。
そこから手を伸ばして武具を取ろうとしたが、どうやら女神像にがっちりと固定されているようで、いくら引っ張ってみてもビクともしない。
幸いにして、見たところ材質は大理石のようで、戦鎚ならば破壊出来るだろう。
という訳で、フェルを手招きして呼び寄せる。
(戦鎚・を・貸せ)
(あなた・という・人・は・まったく・……・罰・が・当たっても・知りません・から・ね・?)
フェルは戦鎚をあっさりと私に手渡して、他の所を物色し始めた。
(神・は・信じ・ない・の・か・?)
(私達・を・助けて・くれ・なかった・です・から)
宗教関連はどいつもこいつも面倒臭いからな。狂信でもしてたら殺してたかも知れんな。
そこで会話を終わらし、私は女神像に向き直る。
祭壇の上で姿勢を整え、腕を狙いながら戦鎚を振りかぶる。
ガーーン!!ゴロガラ……。ゴンッ!!パラパラ…。
それぞれ一発で石像の腕は破壊されて、地面に転がる。
祭壇から降りると、腕を拾い上げて、一旦周りに何も無い位置に移動させた。
そこで、武具を傷つけないように慎重に手の部分に振り下ろしていくと、指は砕けて、私は武具だけの状態にすることに成功した。
手に持って装備してみると、思いのほか手に馴染み、その軽さに驚く。配布された槍よりも軽いのではないか、と思う程だ。
斧槍の重心も丁度良い。
試しに、女神像に斧槍を斜めに叩き入れると、半ばくらいで止まった。
抜いてから刃を見てみたが、刃こぼれは一切無く、強いて言えば少し錆び付いている程度だ。
これくらいの錆ならば手入れをすれば元通りになるので、心配は要らない。
そういえば、武器のステータス欄を開いたことが無かったな。《鑑定》してみるか。
『魔銀の斧槍(模倣)
魔銀で鍛造された斧槍、を魔窟が複製した物。その性能に差は無い。』
能力値の加算とかは無い感じか。
だとすると、余り武器に拘る必要は無いな。機能と耐久性だけ有ればいいや。
にしても、ミスリルね。ラノベじゃ定番の金属だけど、作品によってレア度がまったく異なるから参考にならないんだよなー。
あまり期待しないでおくとしよう。
他に気になる物も無いな。全部盗られている。
それじゃ、上に行きますか。
私が女神像の視線の先に目をやると、そこには上へと続く幅広い階段があった。
そこから下りてくると、女神像が丁度出迎えるようになっているらしい。
(おい・フェル・もう・行く・ぞ・!)
私はフェルに声をかけ、階段を昇りだす。
フェルは置いて行かれまいと小走りで駆け寄ってきた。
手には数枚の銀貨が握られていて、やや黒ずんでいる。
(それ・は・?)
(呪われて・いる・銀貨・です・何か・に・使える・かも・と・思い・まし・て)
呪いに対する世間の認識はどうなんだ?呪術師(呪法師?)とか。
そう聞くと、「バレたら袋叩きにされて私刑される」との回答を頂いた。
こいつちょっと殴って良いかな?ポンっていうか、なんか…、…うん。クソ野郎の臭いがする。
そんな話をしていると、階段が終わり、縦横どちらも5メートル以上ありそうな大きな扉が現れた。
これも剥げた装飾で、見窄らしい印象を受ける。
しかし、そんな事すら気にならない程に、私の目はそれに固定されていた。
隙間から光が漏れている!
やっと、この埃臭い、薄暗い、陰の気でジメジメしている場所から抜け出せる!!
さらば墳墓!!
こんにちは外界!!
未練なんかこれっぽっちも無いね!
意気揚々と扉に手を押し付け、私は扉を限界まで開け放った。
ずっと暗所に居たからだろうか、光に目が眩み、私はそのまま日光に焼かれた。
ていうか、称号って基本的には習得順なんですよね。
つまり、『死者』の前に『同族殺し』の称号があったフェルは………
ヤるとこヤってんな!!




