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東方剣士、華麗にねずみを迎撃する

 FBWには自動戦闘モード、というものがある。


 スキルは何を使うか、HPやSPが何割になったら、どの回復薬を使うのか、PTメンバーへの回復をするかしないか、事細かく決められる。

 PTでの狩りでは、戦闘での動きは決まっている。

 それに、毎回手動で決めていたら、時間もかかるから大顰蹙ものだ。

 自動戦闘こそ主流。


 日付変更でクエストが更新されたら、野良狩りPTに応募して、自動戦闘で引っぱられたまんま寝落ちて、目覚めてみたら荒野にぽつねんと突っ立ってたり、したなあ。


 懐かし楽しい、あの日々。


 もっとも、マッハは誰よりも早かったから、PTメンバーから依頼されて、野良ペット捕獲クエスト達成のために、殲滅される前に手動で捕獲作業してたりも多かったけど。


 あ~、なんかそんなこと考えてたら、PT狩りやりたくなってきたな。

 ソロはお気楽だけど侘しいな。



 頭の中で、自動戦闘の設定をしてみる。


 ええと、スキルは星光、HP、SPともに回復は最安の丸薬を使用……っと。

 HPは8割、SPは4割切ったら使うことにして、ペットやPTメンバーへの支援はなし……。


 よし。これでよさそうだ。


 設定も終わったことだし、待ち構えてみるか。



 高速腿上げを中止して、剣をぶら下げて静かに待つ。


 どうでもいいけど、高速足踏みしてる間に体力回復できる不思議なおじさんや風来坊ってすげぇな。


 と、また、キキッ、キキッと鳴き声をあげながら、ねずみたちが近寄ってくる。


 さあ、どうだ。

 いけるか? いけるのか?



 突如、体が勝手に動き出し、剣に緑の輝きが纏わりついた。



 ヒュオッ



 風切り音を立てて、一閃。

 俺は地面すれすれを横薙ぎにして、元の位置に戻った。


 クエスト受領欄を確認してみると、ねずみの討伐数が8に増えている。


「おおお! すごい!」


 周りは暗くて全く見えないのに、たった一閃で鮮やかにねずみを斬り捨ててしまった。

 達人やん。


 あれだな。

 素人の中身が自分の感覚でやるより、やりたいことを決めて、身体の動きに身を任せた方がいいな。


 そのまま、そろそろと歩き始めてみる。


 足元が覚束ないが、ゆっくりと奥に進んでいくと、時々剣が輝いては一閃していく。

 おおぉ~、これはいい。いいものだ。便利すぎる。



 ヒュッ


 ヒュオッ


 シュバッ!



 ふー。

 ストレスフリーだな。


 この暗闇で、ねずみのような小さな的相手に百発百中とか、どんな達人だよ。


 あんまり頼り切るのは良くないから、もっと安全っていうか、ここもまあ危険なわけじゃないけど、とにかくもうちょっとイージーな環境から始めて、修行したほうがいいかもなあ。


 人目につかないところで。

 恰好がつかないし。


 その後は快適に、かかってくるねずみを斬っては、その時出る光で道を確認して、進んでいく。


 待ち伏せては、斬る。


 斬っては、歩く。


 待ち伏せては、斬る。


 斬っては歩く。



 こりゃいいや。


 でもちょっと、まだるっこしい感があるなぁ。



 ヒュバッ



 お、T字路が見えた。

 あそこまで行ったらどうするかな。


 待てよ。

 移動も、身体を動かそう、って念じるんじゃなくて、あの目的地へ行こうって考えてみるか。


 俺の考えが正しければ、うまくいくはず。


 お。

 おお。

 おおおお~~。


 俺は、暗闇をスタタタッと危なげなく駆け始めた。


 さらに。



 シュッ


 シュバッ!



 抜き打ちで、ねずみを切り伏せていく。


「南無三!」


 とうちゃ~~く。

 早い。あっという間に着いた。


 さっきまで、無様に剣を振り回して疲労してたのが、ウソみたいだ。

 これが本来の東方剣士か。カッコイイな。


「フッ。つまらぬものを斬ってしまった」


 調子に乗ってキメてしまったぜ。


 どれどれ。

 おー。討伐数、あっという間に32。


 よし。

 このT字路でのんびり待ちながら、100匹まで狩ろう。



 俺は、戦闘を自動迎撃に任せて、インベントリのアイテム整理をしたり、装備の修理をしたり、武器防具の更新に必要な素材を確認したりして過ごした。


 ふむふむ。やっぱり希少金属が圧倒的に足りないな。

 ひと通り仲間探しが終わったら、東方剣士には鉱山に籠ってもらうか、砂漠の攻略でも繰り返してもらっとくかな。



 ……。



 腹、減ってきたな。


 なんか食べたいけど、ここちょっと臭すぎるからなあ。

 食べるのは後回しにしないとダメかあ。



 ……。


 いや、ちょっとだけ。


 俺は、口元を覆っている布を少しずらしてみる。



 うわ、くっさ! めっちゃくっさ! ムリムリムリムリムリ!


 慌てて元に戻す。

 うごはっ! 絶対ムリ。


 なにここ臭すぎない?

 なんかねずみの数も多いし。

 どうなってんの?


 気になってきた俺は、剣の血を拭って一度鞘に納め、松明の火を灯した。

 まだ100匹狩ってないけど、気になってしょうがない。


 案の定、ねずみは松明がつくと同時に逃げ散っていった。


 松明の火をかざしながら、周囲を探索してみる。

 T字路の下の棒の方からやってきた形で、右側の方から、かすかに物音が聞こえる。

 なんだろう?


 ちょっと進んでみると、だんだん大きく聞こえるようになってきた。



 ピチョン……


 ピチョン……



 何か、したたってるような……。

 ものごっつい嫌な予感がするなあ。


 死体とかじゃないだろうな。


 クエストというわけでもないので、回れ右して帰ってもいいんだが。


 うん。

 そうだな。

 そうしようか。



 ピチョン、ピチョン……



 回れ右して歩き出した途端、まるで呼び止めるかのように、また物音。



 ……ヤベー! ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!


 ムリムリムリムリムリィ!


 なんで急にホラー? マジ無理なんですけど!


 めちゃくちゃこわい。

 立ち止まっちゃったよ。

 こうなると、振り返るのも怖いし、歩き始めるのにも勇気がいる。


 ……ん?


 止まった?




















 ピチョン!



 ひっ!!













 ピチャ
















 ピチャ


















 ピチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュ




 ドサッ!!






 え?


 今、

 今、何か落ちた?


 何か落ちたよな?



 ひいーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

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