中の人、神になる
ここは……酒場か。
朝っぱらから酒場に入り浸ってるとは、けっこうなご身分だなあ。
いや、考えてみれば楽師だし、俺の設定通りだから、何もおかしくないか。
俺が楽師で作ったキャラの名前は「ぎんゆうしじん」。
オール平仮名だ。
チャットも全て平仮名で通した。
スーパーファミコン出身ってことで、漢字は使えない設定だ。
俺が大好きなフリーシナリオのRPGから拝借したキャラクターで、本当は神なのだが、ひとりの詩人として旅の仲間になる。
このシリーズのゲームには通して登場している、重要キャラクターだ。
そう、俺は今、詩人に扮した神になっているんだ!
設定だけの神だけど。
FBWでも、決して俺の方から本来の名前を名乗ることはせず、「わたしはしじんです」を押し通したが、元ネタを理解した別の人に正体を見抜かれても、「実はそうなんですよ~!」と自ら暴くことはなかった。
そういうキャラクターだからだ。
重要キャラクターではあるが、若干困ったちゃんの一面もある。
「プレイヤーキャラクターと一緒にいると、良い詩が作れそうだ」とついてきて、仲間から外そうとしても「いやです」といって外すことができない。
冒険を重ねて詩ができると、ようやく外すことができる曲者だ。
FBW内でも、いったんPTを組んだ後、正体を知っているメンバー相手に解散する時にわざと「いやです」とギャグで言ってみたりしたものだ。
そういえば、東方剣士でも、おんなじようなことあったな。
初期から徹底してキャラを作っていたから、野良PT募集に対して、「参加させて頂きたい」とか、「宜しく頼む」とか言ってたら、礼儀がなってないとか、丁寧に頼んでないから駄目とかいって断られたっけ。
そのうち、東方剣士自体の知名度が上がってきて、そういうのもなくなったけどな。
さて、それで今、俺は楽師「ぎんゆうしじん」にチェンジできて、酒場のカウンター近くにある椅子に座っている。
どうしてチェンジできたんだろう。
手にしたリュートを奏でながら、物思いにふける。
聖職者や魔法士にはなれないのに、何故か楽師にはなれた。
その違いはいったい何だろう。
アンやひげもじゃにはチェンジできなかった。
元々、俺が作ったキャラじゃないからだろう。
俺が元々作ったキャラでも、チェンジできるのとできないのがいる。
これがわからない。
マッハから、初めて東方剣士にチェンジした時のことを考えてみる。
あの時は、マッハの前に東方剣士がいて、強く念じた。
その場にいることが条件?
しかし、以後は離れていようがお構いなし。
……お構いなしだもんなあ、まったく。
おっと、また思考がそれてしまった。
戻そう、戻そう。
東方剣士とはPTを組んだ。
そうすると、俺が作ったキャラで、PTを組んだことがあるならチェンジできるようになる、のか?
しかし、ぎんゆうしじんとPTを組んだことはないし、
それどころか会った覚えすらない。
それなのに何故……。
あ。
そういえば、この場所で、マッハでチラッとだけ見かけたことがあった。
反乱軍討伐を終えて宿に帰る前に、酒場へと寄った。
その時に、砂漠の大迷宮に関する歌を歌っていた楽師を見かけていたな。
ひょっとして、あれがぎんゆうしじんだったのか。
もう一度整理してみよう。
どうやら、俺がチェンジできるのは、俺が作ったキャラで、かつ、チラッとでも見かけたことがあるやつに限られるようだ。
なんか、某RPGのワープ魔法の場所登録みたいだな。
一度でも行ったことのある街にはワープできます、みたいな。
そして、俺の意識がない間、それぞれがキャラクターに合った自律行動をしているらしい、ってところか。
この辺、ただの夢でもなく、ゲームのようにログオフしている間は何の行動も起こさないというわけでもなく、曖昧だな。
曖昧であるが故に、検証や改善の余地はあるか。
オートモードの時の判断や、行動、チェンジしている間の記憶やら何やらがどうなってるのか、チェンジする前に、オートモードでも行動指針、例えば、狩りをしてろとか、素材を掘ってろとか、ダンジョンに潜れとかいった指定ができるのかどうか、などなど、パッと考えただけでも、色々と試しておきたいことが出てきた。
検証の結果如何では、ちゃんと東方剣士にも謝らないといけないし。
……覗いてすいませんって。
覗くっていうのとは微妙に違うんだが。
こんな現象聞いたことないし、こんな時、どんな表現をすればいいのか分からない。
笑えばいいのだろうか。
っと、いかんいかん。
それで、これからどうするか、だが。
ポロン♪
考えをまとめた俺は、最後の1弾きをしてから、立ち上がる。
残り3人のキャラクターを探そう。
とりあえず、それぞれがどんな生活を送っているのか、
確認しがてら、会いに行こう。
そして、チェンジできるキャラが増えれば、情報収集の類いも、効率が上がるだろう。
何よりも。
ゲーマーとしての性が、そうSAGAが、機能の開放とか、コンプリートとか、
コレクションとか、自分の行動した結果によって明らかに達成されるであろう
事柄に対して突き進むという以外の選択肢を選べないのだ。




