砂漠の大迷宮探索 トラップ一過物語
スフィンクスの問いを越え、王の間へと探索を続ける。
隊列は元通り、東方さん、プリウス、アン、マッハの順だ。
「おっラッキー♪ Bみっけ♪」
王の間へと続く道には、ところどころに調度品が転がっている。
代表的なのは、壺だな。
大抵は空っぽだが、たまにペットの育成剤が入っていることがある。
ピラミッドで入手したアイテムは、脱出すると砂と化してしまうが、使ってしまった薬の効力は消えない。
育成剤Bは、ここで手に入る中では、真ん中の品質だな。
貴重なお宝、というわけだ。
そんなわけで、アンが鼻歌交じりに壺を漁っては、お宝を回収している。
「アン殿、ほどほどにしておくことだ」
リーダーとして、東方さんが注意を促す。
俺も賛成だ。
「ふっふ~ん♪ だいじょび だいじょび♪
うほっ 今度はCだ。大漁~~~♪」
「おい。団体行動中だぜ! そういうのはソロでやれよ!」
「うす。自重するっす」
「う~んいけず♪ いいじゃんいいじゃん。
プップクプー♪」
アンは意に介した様子もなく、壺漁りをしている。
しょうがないやっちゃな。即席PTだとこういうこともあるか。
説得を諦めて、探索に専念する。
無心だ、無心。
カチッ
「あ~れ~♪」
言わんこっちゃない。
アンのやつ、トラップに引っかかりやがった。
「散開」
鋭く、東方さんが一言。
各々が構えて、不測の事態に備える。
敵が出るか。矢が飛んでくるか。それとも落とし穴か。
……。
何も起きないな。
しばらく様子を見るが、何の気配も感じられない。
油断なく周囲をうかがいながら、PTメンバーに目を向ける。
東方さんは剣を抜き放ったまま。
プリウスはキノコを持って、辺りを見回している。ひでぇな、盾代わりか。
アンは……って、アンがいない。
「おい、アンがいねえぞ!」
「そのようだ。現状把握」
「うす。無事っす」
「オレも今んとこ平気!」
「とすると、転移系か。アン殿! 聞こえるか」
『はいは~い♪ ごめんね、しくじっちゃった♪』
ため息をつきながら、東方さんは会話を続ける。
PTを組んでいれば、離れていてもPTメンバー同士だけでチャットを共有できるのだ。
「今、どこにいるんだ」
『壁の中にいる』
トラップでの転移からの壁の中コンボ。
ゲームが違えばアウトじゃないか。
「それでは分からん。ひとまず脱出してくれないか」
PTで移動していると、処理速度の関係で引っぱられている後方のメンバーが地形をショートカットして歩くことがあり、普通は移動できない場所も通れる。
それを利用した裏ワザなんかもあるが、逆に、壁の中などでタイミングを合わせてPTから離脱すると、地形にハマってしまうこともある。
そんな時に、『地形脱出』をすると、マップ毎に特定の場所に出てくる。
『りょーか~~い♪ ただいま脱出中♪』
ちなみに脱出中、チャットはできるが移動その他、キャラクターの操作は一切できない。
『脱出完了~♪ あちゃ~、小部屋だ』
小部屋、か。ということは、スフィンクスの前だ。
「よぉ。どうする? 迎えに行くか?」
『あ、だいじょーぶ。逃げながら合流するから』
「だってよ。どうする?」
「うむ。アン殿。自業自得だ。
首飾りを入手しておくから、分岐の前で合流しよう」
『はーい♪ がんばってね~~ん♪』
「お気楽だな。反省してねえぞ、あれ!」
「致し方ない。3人でも不足はなかろう。進もう」
「うす」
「ったく! 追いついてこなきゃ、そのまま攻略しちまうぞ」
王の玄室でのボス戦に備えて、隠し部屋からお守りを取ってくることにした。
その間に、アンも追いついてくるだろう。




