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なんでもやります!? よろず同好会  作者: 岩戸 勇太
けんだま同好会のゆくえ
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教室の砂彩

 次の日、教室に行くと教室の隅に目を向けた。

「砂彩と俺は、同じクラスだったんだよな……」

 砂彩の事を見たのは、入学初日であったはずだ。

 入学初日の自己紹介の時、彼女が机から立ち上がると、周囲の目を引いた。

 彼女の細い体が立ち上がり、長い髪が揺れ、少し切れ長の目が回りを見回す。

「日和田 砂彩。趣味はUMA関係のミステリーものです」

 それだけ言うと、砂彩はそのまま静かに座り、次の子の自己紹介に移っていった。

 彼女は、その数秒だけの自己紹介で、休み時間の男子達の話題を独占した。

 ちょっと変わった趣味を持っているものの、これくらいなら許容範囲。イエティや、ネッシーなどの目撃情報を聞いて、楽しんでいるくらいであろう。

『あの子の事を狙ってみよう』男子の考える事など、結局はそれ。

 誰があの子を落とすか競争だ。そんな無謀な事を、話し合っていたのだ。

 俺はその頃、けんだま同好会を作るために人手を集めていた最中だったし、もっと素直でかわいい子のほうがいい。あのツンケンした態度の女子にはそれほど惹かれなかった。

 噂で聞いただけであるが、砂彩にアタックした男子は、全員玉砕をしたのだという。

 手ひどい振り方をしたらしく、泣く奴もでてきたとの事。

 それから、クラスの奴らは砂彩のことを腫れ物を触るように扱い始め、今に至るのだという。

 俺は、教室の隅にある、砂彩のところまで向かっていった。

「何よ? 何か用?」

 とりあえず、挨拶をしようと思って声をかけたのだが、いきなり砂彩にはツンケンとした態度を取られる。

「部活以外では、はなしかけないで。私の仲間だとか思われたらあんたが困るわよ」

 それに、俺は頭を掻く。

 確かに、砂彩はこのクラスでの変人として通っている。

「人の悪口以外に話題が無い人間との付き合いなんて、こっちから願い下げよ」

 元々、砂彩は顔はいい。だから周囲の注目を浴びる。

「私が学校に持ってきた雑誌の事を、横からジロジロ見てくるし、『この本を読みたいの?』って聞いても『別に読みたくない』って返事。それで、私の前からいなくなったと思ったら、『あいつ、あんな雑誌読んでたぜ』だとか、いう話題で盛り上がり始める……」

 それは、いままであった事だろう。砂彩は脈絡もなく愚痴を言い始めた。

 こういうところがとっつきにくい。準備もないまま、こんなネガティブな話題に入られても、こっちとしても困る。

「何のつもりか分からない。人が雑誌を読むのがそんなに珍しいの? って思っていたら、『仲良くなりたいと思った』『声をかけようと思った』だの言い出す。こっちだってワケが分からないのよ」

 まあ、その言い分は分かる。

「どんな雑誌を読んでいたんだ……?」

 こいつの読む雑誌というんだから、大体ロクでもない物だと思う。まあ、聞いてみれば分かるか。

「未確認生物、科学解析ファイル」

 そんなとこだろう……そりゃ気になる……そして読みたくは無い……そして、いい話のネタでもある……。

 そのクラスメイトの行動も、もっともだろう。

「お前、顔はいいんだから、もうちょっと愛想よくすりゃいい」

 ぶしつけに俺が言う。

 それを聞いて、顔を歪めた砂彩。

「用は済んだでしょう? さっさと行きなさい」

 部室では、あんなに生き生きしていたのに、教室では、居場所すらも見つけられず、檻の中の猫のように大人しくしている砂彩。

 俺は砂彩から離れながら言う。

「余計に付き合い辛くなったじゃないか……」

 前々から、面倒なやつだとは思っていたが、さらに付き合いにくくなった感じである。

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