購買で……
昼休みに、購買にまで歩いていく俺。
目当てにしているパンなど存在しない俺は、皆が居なくなった後に残ったものを買うのが常であった。
「相変わらずすごい数だ……」
人ごみが嫌いな性質である俺は、それを遠巻きに見ながら、人が空いていくのを待っていた。
そこで、いきなり横から腕をつかまれる。
「ヨシ兄……こんにちは」
同じ学年であるはずなのに、俺よりも一回り背の低い魅成は、俺に寄りかかりながら俺のことを見上げた。
「何かほしいものがあるなら、買ってくるよ」
「俺は、いつも人が居なくなってから買ってるんだ」
「なら、私も一緒に待つ」
俺の隣でチョコンと立つ魅成。俺はこの子にいつの間に懐かれたんだろう?
不思議に思いつつも、俺は魅成と隣り合いになりながら購買の様子を見つめていた。
それから、腕を引っ張られて中庭にまでやってきた。
そこは、用務員の人の趣味でアサガオが植えられており、アサガオの蔦が適度に日の光を遮る、気持ちのいい場所だ。
そこで、壁に寄りかかる俺と魅成は、隣同士になって、購買で買ったコッペパンを齧っているところだ。
ふいに魅成が言い出した。
「アサガオには、呪術に使える毒がある」
知りたくもない知識をいきなり聞かされる俺。
口の中が乾いて、パンがモソモソしてくる。
「ドクダミのお茶。よかったら飲んで」
なぜにドクダミ……? 名前とは違って薬になるお茶のはずであるが、名前を聞くと、少し気になってくる。
何も言わずにお茶を口にする俺。
それを見て、ニコリと笑う魅成。この笑顔だけを見れば、かわいいものなのだが……
「なあ、どうして俺についてくるんだ?」
俺は聞いた。俺は、会ったときから意味も分からずに、この子に懐かれている。
俺のどこが気に入ったのだろうか?
「お兄ちゃんに似ていたから……」
お兄ちゃんか……
魅成にも兄弟がいるんだな。
「私のお兄ちゃんも、ヨシトっていうの。だからヨシ兄っていうの」
「ふーん。お兄さんは何歳なんだ?」
「十一歳」
「それ、どう考えてもお兄さんじゃねぇよ!」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんなの」
言い張り始める魅成。この子だって、結局は一度言い出したら聞かない子であるというのは骨身に染みて分かっているのだ。特に何も言うまい……
妹ができたようなものだろうか?
ちょっと変わっている事を除けば、素直でかわいいもんだろう。
俺は、魅成の頭に手を置いた。不思議に思ったのか? 魅成は俺の事を見上げてきた。
「どうしたの?」
魅成が俺に向けて聞いてくる。
はっきりとそうやって聞かれると、どうも居心地が悪くなってくる。こうやって見ると、魅成の目は子供らしいどんぐり眼をしている。
純真無垢を思わせる目であった。
『こうしてればかわいいんだがな……』
素直に俺はそう思った。
「別に……ちょっとやってみたくなっただけさ」
俺が言うと、魅成は顔を伏せる。
まるで、頭をなでる暖かい感触を十分に楽しもうとしているようであった。




