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けんだま体験コーナーに戻ると

 全員の所を回り終えたら、行くところが無くなってしまった。

 閑古鳥が鳴いているはずのこの場所。けんだま体験コーナーは、俺の予想に反し、小さく賑わいを見せていた。

「ほれ。こうやるんだ」

 そう言い、おじいさんがけんだまを振ると、赤い玉が、カンッ……と音を立てて刺さっていく。

 ふむ……なんて洗練をされた動きだ……

 そして、それを見た小学生低学年くらいの少年たちは、感嘆の声を上げる。

 無理もない、熟練のカンと最高の力加減、繊細な動き、それらは職人技に値するものである。

 ………

 ……

 …

 砂彩に言われた言葉を思い出すな……どれだけ難しいか? どれだけの苦労が裏にあるか? そんな事を考えるのは無意味か……

 そして、目の前で繰り広げられている姿こそが、理想的な有り様である。

 自分の技を披露している人がいて、それを見て楽しんでいる人がいる。

 今になって、俺があの中に入っていって、水を差すのはいけない。

 なんとも和む光景だ。その光景を壊すのはやめておくことにして、俺はその場から離れていった。


 というか、恥ずかしくて入っていけなかった。

 あの、おじいさんと子供達の仲睦まじい光景を怖るのが嫌で、あそこから退散をしたなどという言葉は、半分以上が建前である。

 放置をしていた自分のコーナーが他人によって和気あいあいと使われている。そこに、どんな顔をして入っていけばいいのだろうか?

 俺はいま学校の屋上にいる。ポツポツと、空の星が見えてくるくらいの暗さになっていた空を見つめる。

 見空であれば、あの星の名前なども分かるのだろうが、自分には、たただの光の点にしか見えない。

 ならばなぜ俺がこんな所にいるのかと言えば、見空にメールで呼び出されたからである。

 見空に教えた携帯番号を、さっそく利用され、一本のメールが送られてきた。そして、そのメールは短く、こう書いてあった。


 一緒に星を見ましょう。

 文化祭が終わったら、学校の屋上にやってきてください。


 俺は、そのメールを打つのに慣れていないような文面を見て、とりあえずは『了解』と、短く返しておいたのだ。

「空を眺めるのも飽きてくる……」

『夜空を眺める』と言えばロマンチックな話にも聞こえる。だが、その情緒を感じられない人間には、ただの無意味な時間に過ぎないのだろう。

 何もせずにボーッ……と眺めているのも辛い。

「見空……早く来てくれ……」

 つい、口からそう声が漏れる……

「うらめしやー」

 耳元でそう声がしてくるのに、俺は驚き、急いで振り返った。そうすると、俺の頭が見空の頭と、思いっきりぶつかった。

 顎のあたりを押さえる俺と、鼻の辺りを押さえる見空。

「魅成ちゃんみたいに、上手くはいきませんね……」

 魅成……? あいつ、何か余計な事を言ったんじゃないだろうな……?

「ただ、耳元で『うらめしやー』って言うと、慶次がすっごく驚くからやってみるといい……って言われたんですよ」

 なるほど……一度ならず二度までも、俺は魅成にしてやられたわけか……

「だけどその先が……『すぐに振り返ってくるから、いそいで離れないとケガするよ』とも言われていたのに、そこが上手くいきませんでした」

 魅成は、見た目はあんなに幼いのに、結構知恵が働くし、物事の手際もいい。

 味方につければ頼もしいが、敵に回れば厄介この上ない……

「そうですね……魅成ちゃんを敵に回すのは大変ですよ。抜け駆けをしようとしても、すぐに見抜かれますし」

 キョロキョロと回りを見回す見空。

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