見空を見に行く
砂彩は、ああ言っていたが……、目的を決めて動いているのには変わりない。何もしていないのは俺だけだ。
自習室を借り、そこで、自分の撮影したYFO写真を掲載する事になっている見空。今頃は写真を飾るためにパネルや台の整理をしているはずである。
……ところで、あいつUFO写真なんていつの間に撮っていたんだ……? まったく記憶に無いんだが。
二階の自習室に行くと、見空の後姿が見える。
「見空。何か手伝うことは無いか?」
俺の声を聞くと、見空は体をビクリと震わせた。
「な、な……慶次! なんでここに!」
慌てた様子の見空は、俺を近づけさせまいとするようにして、俺の前に立った。
「いいです! 手伝いなんていいです!」
だが、後ろには、立てかけられていないパネルや、裏返しになっている額縁が床の上に積まれていた。
「力仕事もあるだろう?」
「いいです! 本当に自分ひとりでやりますから!」
それでも、頑なに自分ひとりでやると言って、俺を近づけさせない見空。
何を隠しているのか……俺にはメンバー達の頭の中を読む能力がないのが悔やまれる。
「そうだ。お前のメールアドレスを教えてくれよ」
「え……! なんで私のメールアドレスなんて知りたいんですか!」
こいつはなぜがすっごく驚く……。
「もしかして、男子にメールアドレスを教えるのは初めてか?」
「何で! 慶次には私の頭の中を読む能力なんて、無いと思っていたのに!」
正解だったか……
なるほど……魅成と砂彩の二人も、こんな感じで俺の頭を読んでいるのか……慣れると、俺が何かを考えるだけで会話が成立するようになっていく……と。
「助けが必要になったらいつでも呼んでくれ。俺はヒマだしな」
そう言い、携帯を出す。アドレス交換が初めてというわけでもないようで、操作に手間取るという事もない。
「なんか、変な感じです……」
「俺なんだからいいだろう」
そう言うと、見空は、俺の事を見た。
ちょっとばかし、その視線には熱が篭っているように見える。
ちょっと……不用意な事を言ってしまったかな……?
「慶次ならいいかもしれません……」
携帯を胸の前で握りしめる見空。
その様子を見ると……恥ずかしくなってくる……
「と……とにかく! ありがとうございました。必ず連絡しますね」
ここで、俺の頭の中を読んだのか? 見空は慌てて俺に背中を向けた。
「ところで……」
背中を向けたまま、見空は俺に向けて言い出した。
「携帯の番号は誰かに教えましたか?」
「誰かって言われても、他に教えている友人くらいならいるぞ……」
「そうではなく! 魅成ちゃんとか、砂彩にも教えましたか!?」
見空は、クルリと振り向き、俺に向けて迫ってきながら言う。
その剣幕に、俺はたじろぎながらも答えた。
「砂彩には教えてある……魅成にはまだ教えてない……」
「そうですか……」
そうすると、またもクルリと振り向いた見空は、小さな声で言う。
「魅成ちゃんには勝った……」
バカ……
勝った負けたの話じゃないだろう……
気恥しくなってしまった俺は、見空のところから離れていった。




