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見空、軽くおしゃれをしてみる

「待ちなさいよ見空。そんなのは放っておいて、こっちに来なさい」

「『そんなの』ってのはないんじゃない~?」

 完全に逃げる体勢になっており、机の上に立っていた奏多先輩が言うが、見空は砂彩に誘われたまま椅子に座る。

「これを使ってみなさい」

 砂彩は自分の首に巻いたスカーフを外し、見空の首に巻いた。

「これも使って」

 魅成も、自分の髪を縛っていたリボンを見空の髪に結いつけた。

「慶次!」

 砂彩が俺に向けてそう言う。それだけで察した俺は、携帯のカメラを向けて見空の事を撮った。

「ほら、可愛いぞ」

「か……可愛いって……」

 俺が言った言葉に、顔を赤くする見空。彼女に俺の撮った写真を見せる。

 髪をリボンで結い、首にスカーフを巻いた見空の姿が写っていた。

 顔は少し恥ずかしげで、はにかんだ女の子の顔をしているのだ。いつもとは違い、女の子らしい顔をしている自分を見て、俺の顔から目をそらした。

「美空、かわいい」

 クスリと笑って魅成が言う。

「魅成ちゃんの方が可愛いですよ」

 そう言いながら、首に巻かれたスカーフや、髪を束ねているリボンをいじる見空。

「一曲歌わせてください……」

 そう言い、見空は曲を選択した。

「もっと身近なものに目を向けるべきだったかもしれません」

 曲が選択され、曲名が表示される。そこで、見空は俺達に向けて言い出した。

「私は、もっと面白い世界があるんじゃないか? って、昔から思っていたんです。だから、望遠鏡を使って宇宙を覗き続けました」

 宇宙は地球なんかよりも、ずっと広大である。地球には、すでに人の入ったことのない場所などほとんど無い。

 だが、宇宙は人が見つけてすらいない場所もある。前人未到で、謎の世界であると感じる、とても素晴らしい場所だ。

 大きなもの、さらに大きなものと、求めて天体を追い求めた。だが、それでも足りなくなって、UFOの存在を追うようになっていった。

 だが、天体を調べるだけでは物足りなくなり、UFOの存在を追い求めていくようになった。

「だけど、大きいもの、大きいものと、見つめる対象をいくら変えても本当の自分は見えないですよね」

「もっと、自分に自信を持たないと」

 そうすれば、それらを眺めるよりも、何倍も楽しいものを見れるのだと、見空は言う。

 何か意味深なものを感じる……この前歌った、見空の十八番の歌であった。

 いきなりYFOが自分の前に現れたら、迷わずに乗ってみたい。そういう歌である。

 前歌ったときは、一番だけで終わっていた。

 新しい世界にいきたい。それを宇宙に求めて、望遠鏡を覗き続けた見空。彼女の願望をそのまま歌にしたようなものである。

 前は、ここまでで終った。

 見空は二番を知らないと言っていた。だが、見空は、一番が終わっても曲を止めずに歌い続けた。

「やっぱり二番も歌えるんじゃない……」

 砂彩は口を尖らせながら見空の歌に聞き入っていった。

 おそらく、この歌詞はUFOには乗れなかったものの、自分が目指していた世界に入ることのできた後の歌を歌っているのだろう。

 歌詞を聞くと、どうも満足をしていない感じである。

『途中で放り投げないようにしよう。ここは自分の望んだ場所であるのだから』

 それを歌った歌であったのだ。

「私、この歌の二番は好きじゃないんです……」

 期待と羨望を胸にして望遠鏡を覗き続けてきた自分。だけど、望んだ場所に行ったとしても、そんな思い描いたような素晴らしい場所ではない。

 それを暗喩するような歌詞で、何かを望むことがバカらしくなってくる気がするのだ。

「なんか、この歌って本当の事のような気がしてきました」

 首に巻いたスカーフを恭しく手で撫で、俺達に笑いかける見空。

「同好会のみんなと一緒にいる方が何倍も楽しいです」

 そう言った後、見空は軽くうつむいた。

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