十五分後
あれから十五分くらい経ち、メンツがポツリポツリと集まってくる。
「それじゃ、半分くらいそろってきたから入ろうか」
奏多先輩が言う。
「半分で入るんですか?」
「そこそこ集まれば十分だよ。後は勝手に集まってくるって」
このカラオケの人の集まりの悪さには、奏多先輩も、慣れきっているようである。
「これが普通なんですよ」
見空がポツリと言う。普通と言えばそうなのだろうな……
カラオケに入って、最初にマイクを渡されたのは俺だった。
「新参君が最初に歌うべきだよ」
奏多先輩が言う。この仕切りの上手さは、さすがに生徒会をまとめるだけの事はある。
この前の、砂彩達とのカラオケで歌った歌でいいか……
俺は、昔のアニソンを選択した。
結果、結構盛り上がった。なんでも歌ってみるもんであると思う。先入観で、この歌はいけないとか考えるものではない。
新参としての役目を果たした俺は、次の曲が選択されているのを確認した後、見空の隣の席に腰掛けた。
奏多先輩の様子があまりにもインパクトが強すぎて忘れていたが、見空は休みであるにもかかわらず、学校の制服を着てやってきていた。
服の袖をギュッ……と握っているのを見る。
回りのメンツには、制服を着てやってきている者もいるが、リボンやブローチをつけたりして着飾っている。野暮ったく見えそうなくらい、折り目正しく制服を着た見空は、楽しくもなさそうにして座っているだけだ。
彼女の姿は、この空間では宙に浮いている。
そして、カラオケの隅の席で、オレンジシュースをチビチビと飲んでいる東屋の姿もあった。
東屋は、いつものふてぶてしい態度は見る影もなく、意気消沈していた。
『眼鏡が曇ってる……』
俺がそう考えると、見空は『プッ……』と吹き出す。
俺の考えは、またも見空に読まれたようだ。
眼鏡の裏にある東屋の目は、まるで、死んだ魚のように、これ以上になく濁っているだろう。
東屋は東屋で、見空とは違った形でこの空間から宙に浮いている。
その二つの異物などまったく気にもせずに、カラオケは大盛り上がりを見せながら進んでいた。
「盛り上がった~盛り上がった~。こんだけ大盛況だと、幹事をやった甲斐があるってもんだよね~」
奏多先輩は、大満足の様子で家路についていた。
カラオケが終わった後、奏多先輩は用が終わったため、東屋の縄から手を離した。手を離した瞬間に、東屋は脱兎のように逃げ出していった。
「ささ君も、よくがんばってくれたし、これくらいで開放してあげてもいいだろうね」
あっけらかんとしながら言う奏多先輩。幹事としての役割も終わり、肩の荷が降りた感じであろう。
そしてお疲れ様、東屋。知らない人ばっかりで怖かったね。
……なんか、子供にでも声をかけているような言いようだな。
人見知りのクセに生徒会長なんかに立候補して。しかも当選なんかしてしまうお前が悪いんだぞ。
「おー。いたいた。カラオケは楽しかった?」
「なんであなた達が来ているのですか!?」
そこに、声をかけてきた砂彩。魅成も隣におり、同好会のメンバーが揃うことになった。
そういえば、場所と時間は砂彩に教えてあったな。なんかしつこく聞いてきたから教えざるを得なかった感じだった。
見空がそこで、俺のことをジトリ……とした目で睨んできた。
なんでだ? なにがいけなかったんだ……?
「見空。遊びに来たっていうのに、なんでそんなカッコをしているのよ?」
「学校でもないのに、なんで制服を着ているの?」
顔を伏せた見空は、またも、目だけをこちらに向けてジトリと睨んできた。
本当に……何がいけなかったんだよ……
「それじゃ、口直しに、二度目のカラオケに行きましょう!」
俺が会話から離れている間に、話がどう転んだのか? 砂彩がそう言い出した。
「『口直し』は、ないんじゃないかな~? 結構盛り上がってたよ」
奏多先輩も、そう言いつつおとなしく砂彩について行く。
これから、カラオケに行く話になってしまっているらしい。俺も付き合って付いていくことにした。




