部長を決めよう
「まずは部長を決めなければならないわね」
砂彩が言い出す。
この部室には、中心に小さな机がある。その机を囲んで話し合いを始めた。同好会の名前を決めようという話は、収拾がつかない事が分かったため、ほかの話に切り替えたのだ。
「当然部長になった人間に、部の名前を決める決定権があるわよね」
そんなこったろうと思った……
それを先に言ってしまうと、収拾がつかなくなるってのに……
「ならば部長は私ですね。ほかのみんなは一年生ですので、二年生の私が適任であると……」
「一年とか、二年とか、関係あるの! 部長なんだから、みんなの事をグイグイと引っ張っていくような人が適任じゃない?」
二人の言い争いを見て、唖然としている俺と魅成。
魅成は、俺の事を見上げた。
どうしたんだ……? 何があったんだ……?
もめている二人に向けて顔を向けた魅成は言い出した。
「部長に向くのは、みんなの意見をよく聞く、まとめ役に適した人」
もっともらしい事を言う魅成。
その言葉を聞くと、砂彩と見空はお互いに気まずそうにして顔を外した。
「私は慶次お兄ちゃんを推す」
魅成が言う。
ちょっと待て……いきなり何を言い出すんだこの子は……
それを聞いて、砂彩と見空は一度目配せをした後に、同時に鼻を鳴らした。
「なにそれ? 優柔不断の意見無しが一番部長に向くっていうの?」
「さっきだって、部活動の名前の話にも入ってこなかったじゃないですか? 積極性にも疑問がありますね」
こういう時だけこの二人は息が、ピッタリになるらしい。
魅成がそう言われて、俺の事を見上げた。
『こうなったら俺任せなわけね……』
いろいろ、疑問や不満がある。
このまとまりの無い奴らと一緒の同好会になる事。そして、俺がこいつらのまとめ役に推されている事。そして、どうやら、こいつらをまとめる役は俺しか適任がいそうにない事。これらは不満だ。
俺が一年生であるにもかかわらず、初めて会った子に『お兄ちゃん』呼ばわりされている事は謎である。俺にそんな趣味は無い。
「多数決を取る……」
いきなり言う俺。
こいつらに理屈は通用しない。それはいままでのやりとりでよく分かった。
「部長にふさわしいのは誰だと思う?」
一人一人名前を言っていく俺。
当然、砂彩と見空は自分の名前で手を挙げる。
「最後に、南 慶次」
俺が自分の名前を言うと、俺と魅成の手が上がった。
「これにて、同好会の部長は、南 慶次に決定した!」
「待ちなさい!」
「お待ちください!」
砂彩と見空の二人が同時に異を唱える。だが、俺はこのまま強行採決を決める。




