同好会の統合
固まる怪獣フィギュアの女の子に、メモ帳の女の子は、思いっきり抱きついていった。
「こら! バカ! アホ! 離れなさい!」
「ああぁ~ん、もっと罵倒してください~」
いきなり俺の部室に入ってきた二人は、唐突にケンカを始める。
古い紙を持ってきた小柄な女の子は、俺の隣に座ってそれを観戦し始めた。
「両倒れ……両倒れ……私の呪いで二人とも倒れるがいいわ……」
なんか、この子怖いんだけど……
抱えている古い紙をこっそりと横から見てみると……『呪』『裁』『罪』などといった、暗い文字ばかりがびっしりと書いてあった。
「その紙は一体何ですか……」
俺はその子の事を横目で見て、目線を送りながら言った。彼女の事を直視するのは正直怖い……
「呪いの書……これを使えば、恨んだ奴を殺す事ができる」
ニヤリと笑ったその子の笑顔に、俺は恐怖を覚えた。
「あの二人が死ねば、敵が減る」
敵……?
俺はイマイチこの状況を飲み込めていない。この子にとって、この二人は何かの敵であるのだろうか?
そこで、さらに部屋のドアが開けられる。
「みんな揃っていたか」
無遠慮にドアを開けて入ってきたのは、俺の頼みの綱であった東屋である。
辺りを見回した東屋は、言い出した。
「UMA同好会、『日和田 砂彩』(ひよた さあや)、心霊同好会、『水川 魅成』(みずかわ みな)UFO同好会『円 見空』(まどか みそら)そして、けんだま同好会の『南 慶次』(みなみ よしつぐ)。今日より、四つの同好会を統合して、『よろず同好会』とすることにした」
東屋は、それから詳しい説明を始める。
この四つの同好会は、設立当初より、活動らしい活動をしていない。そのため、同好会達を一つにまとめて、再スタートをしてもらう。
今は七月。三ヵ月後には文化祭がある。この文化祭で活動の成果を見せて欲しい。成果が認められない場合は、こんどこそ、この同好会を廃部にする。
それが校長と教頭の結論であった。
「聞けば聞くほど……かなりガケっぷちな条件を提示されてるな……」
俺が呻くようにして言う。そうすると、東屋は言う。
「これでも、かなりゴネたんだ」
まあそうだろう……この同好会の惨状を見れば、これでもかなりの温情措置といえる。
「最後に伝える。『よろず同好会』という名前は、俺が考えた仮の名前だ。名前を変えたいというのなら一週間以内に申し出てくれ」
東屋がそこまで言うと、怪獣フィギュアを持ってきた女の子。日和田 砂彩が声を上げた。
「この部の名前は、『新UMA同好会』にして!」
それに負けじと、メモ帳の女の子円 見空が言い出す。
「いいえ! ここは『UFO同好会&愉快な仲間達』で!」
さらに俺の隣の呪いの書の女の子水川 魅成も言う。
「心霊同好会とその贄達」
三人が、東屋に詰め寄っていき、東屋はモミクチャにされていく。
あの、普段からクールな東屋も、辟易しているようだ。
「とにかく、みんなで話し合った後、文書にして出してくれ」
それだけ言い捨てると、東屋は逃げるようにして部室から出ていった。




