美空ちゃん奮闘
だが、顔はポーカーフェイスでも、体は正直だ。特に鼻が。というか、鼻血が。
「恥ずかしがりながら、健気にセリフを言う姿には、素直に萌えます。頑張ってくださった美色さんに盛大な拍手をお願いします」
東屋が言う。
奏多先輩を始め、生徒会の面々が美色に向けて拍手を始める。
「あ……あう……」
パチパチと拍手を送られると、普段から人前に出ることに慣れていない美空ちゃんは、顔を真っ赤にして目を白黒させ始めた。
「いやぁぁぁぁあああ!」
ついには、耐え切れなくなりそう叫んで、調理実習室から逃げていってしまったのだ。
かわいそうなことをしたな……
少しぐらいは反省の色を見せるかと思って、生徒会の奴らの顔を見たのだが、反省の色は全く見えない。
「余は満足じゃ」
ポツリと本音を口に出す東屋。その口に手を突っ込んで奥歯をガタガタいわせてやりたい……
「これは永久保存ものです」
カメラを恭しいくらいのやさしい手で撫でながら、優しい目で見つめる架名。まるで、赤ん坊の事を慈しむ母親のようにすら見間違いそうな姿だ。
相変わらず鼻血がボトボトと落ちているが……
その様子を、楽しそうに見ていた奏多先輩だが、俺の方を見ると、こう言い出してきた。
「まあまあ、美色ちゃんの事は、後で私の方からフォローをしておくから、大会の方を進めちゃって」
生徒会唯一の良心である奏多先輩がいうのだから、任せてもいいだろう。
「調理を開始してください!」
俺が言うと、合図を待っていた三人が調理を開始する。
そこで、調理実習室のドアが開けられた。
美色が入口に立っているのを見かける。
「外で……男子に会っちゃって……恥ずかしくて……」
美色がか細い声で言う言葉だけで大体分かる。
どうせなら、着替えてから外に逃げ出すべきだったな。
「まったく……あんたは昔からそうなんだから、嫌なら嫌っていいなさいよ」
タマネギを切る手を止めた砂彩が言う。
エプロンを羽織るために脱いでいた制服の上着を、美空の肩にかけた。
「ありがとう。さやちゃん」
この様子を見ると、この二人も幼馴染か何かだろうか?
まあ、俺と東屋の幼馴染の関係もあるし、見空と彼方先輩に、魅成と架名の関係だってある。
砂彩と美色ちゃんに、何かの関係があったとしても、いまさら驚きはしない。
「ごめんねー。美色ちゃん。わたしがあやしてあげるから、こっちに来てよ。砂彩ちゃんは、今大会の最中なんだから」
ケラケラ言いながらやってきた奏多先輩に連れられて、砂彩のところからはなれていく美空ちゃん。




