料理対決開始
次の日の放課後。
調理実習室に行くと、東屋が待っていた。
「とりあえずは、調理実習室を何に使うか確認するために来た。生徒会の義務だ」
口ではそう言っているが、東屋の後ろにあるものに、俺の目がいっていた。
『よろず同好会主催、料理大会』
そう大きく書かれた看板が天井からぶら下げられ、小さなステージが設置をされている。
そのステージの上に立ち、何食わぬ顔をしている東屋に向けて、俺は言う。
「確認する必要ないだろう」
とりあえず、何が行われるか、完全に把握しといて『様子を見に来た』は、ないだろう……
「こんな面白そうなイベントをやるなら、言ってくれないと」
奏多先輩が、ステージの飾りつけをしながら言う。
「不正使用がなかったという事を確認するため、証拠のビデオを撮らせてもらいます」
架名が、デジタルビデオカメラを脚立に取り付けながら言う。本格的に撮る気だ……
「よろず同好会って、なんだかんだいって美少女揃いだからねー。はりきってるでしょう?」
奏多先輩が、ケラケラ笑いながら言う。
え……架名ってそういう気があるの?
「そんな邪な気持ちは持っていません。飽くまで記録を付けるためです」
ならばなぜ、鼻血をたらしているのか……
俺の中の架名のイメージが、百八十度変わった……
「学校の施設を使用して行われるのだ。その時点で、これは学校行事である。学校の生徒が参加をする事に問題があるわけがない」
手に持ったカメラのレンズをキラリと光らせながら、東屋が言う。しかも、顔から鼻血が垂れていく。
「みんな、体は正直だねー。主に鼻限定で」
奏多先輩が言うと、東屋と架名は、そろって鼻血をぬぐった。
ステージの裏側から、見知った顔がピョコンと顔を出した。
美色ちゃんの顔が見えないと思ったら、そんな所に……
「慶次君。こっちを見ないでくださいね」
美色ちゃんが言う。そんな事を言われると、ものすごく見てみたくなる。
「そうだ、あの中を覗こうなど、考えるんじゃない。早漏の変態め。美色の出番は、後でやってくるんだから待っていろ」
やはり、いきなり罵倒をされるのか……
「これは何なのよ……」
そこに、砂彩と魅成と見空がやってきた。うんざりした気分の俺は、それを隠さずに、表情に思いっきり出しながら三人に向けて振り返った。
「冷かしに来た、野次馬だ」
一言で、今の状況を説明するには、これが一番しっくりとくるだろう。




