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なんでもやります!? よろず同好会  作者: 岩戸 勇太
夏休みはどうしようか?
25/67

部室に残っているのは砂彩だけ

 不毛なことに大半の時間を使ったものの、調理実習室の使用許可はしっかりともらってきた。

 その事を報告するために、部室に戻ってみようと思うものの、あの三人はおそらく帰っているだろう。

 むしろ、あの気まずい雰囲気のまま、ずっと部室に篭もりっきりであったのならば、よほどの精神力を胆力を持ち合わせている事になる。

 そんな根性があるなら、ほかの事に使えと言いたくなるくらいだ。

「俺の心配は必要だったかな……」

 俺が部室のドアを開け、隙間から中をのぞき込む。

 すると、一気にドアが開け放たれ、俺の前に砂彩が立っている姿が見える。

「なんでドアを開けて中を覗いているのよ? 入ってきなさいよ」

 そう言う砂彩は一人。魅成と見空は帰っているのだろう。

「あんたが帰ってくるのがあんまりにも遅いから帰らせたのよ。私からあの二人に連絡をする事になってるわ」

 携帯を取り出す砂彩。

「それで? いつの何時くらいに使える事になったの?」

 メールで二人に連絡をするつもりらしい。

「俺の方から伝える。番号教えてくれ」

「ふざけないで! 私が連絡するわ!」

 何を、いきなり大きな声を出しているんだ……

 肩をいからせ、俺に食ってかかりながら言う。

「番号が知りたいなら本人に聞いて、勝手に人の番号を他人に教えるわけにはいかないもの……」

 そりゃ、ごもっともだ……

 勝手に携帯の番号を教えられるというのは、迷惑なもんだ。面倒だが、そうするのが正しい。

「ついてきて……」

 メールを送り終えた砂彩は、俺の手を掴んだ。

 俺は砂彩に言われた通りについていった。


「ここは……?」

 目の前に見える建物を見ても、状況が飲み込めない俺は、間抜けな質問であるのを分かった上で、砂彩に向けて聞いた。

「見て分かんないの? スーパーよ」

 まあそうなんだろうな……

 『えぷろん』という名前の看板が目の前に見え、入った先に見えるのは野菜売り場だ。

 この時間は人が多い時間のようで、主婦だけではなく、仕事帰りのサラリーマンの姿も見える。

 混雑をしているスーパーの中に、砂彩に手を引かれて入っていく。

「どうして、俺はここに連れてこられたんだ……?」

「ここまで付き合っておいて、いまさら何を?」

 学校を出て、いくつもの交差点を渡り、ここまでやってきた。

 本来、もっと早く聞いておいてもいいはずであった。今になるまで、何も聞かなかった俺も俺だろう。

「まあ、そうなんだが……」

 俺が言うのが、聞こえているのか、聞こえていないのか分からない様子で、ズンズンと奥に入っていく砂彩。

「慶次。好きな食べ物は何?」

「カレーかな?」

「お子様な舌ね。もっと作り甲斐のあるものを言いなさいよ」

 だから、なぜ俺は罵倒をされる……?

 片手でカートを押し、もう片手で俺の手を掴みながらの砂彩は、カートの中にじゃがいもやニンジンなんかを放り込んでいく。

「あれから審査員を慶次にする事に決めたの。だから、直接作って欲しいものを聞こうと思ってね」

「カンニングに近いぞ」

「カンニング禁止なんて、ルールになかったわよ」

 俺から直接、好きなものを聞く。それを作れば、採点の時に有利に働く。

 俺の帰りが遅いから二人を帰らせた。その事だって、二人に砂彩のたくらみを読ませないように打った芝居なのだ。

「意外と、いい性格をしているなお前」

「今回は慶次の方から嫌味を言うのね」

 砂彩がそう言うが、悪い気がしているという感じではない。

 むしろ、自分の賢い部分を褒められたのを嬉しがっているような感じだ。

「性根が悪いってだけだ。そこまで、自慢できる事じゃないだろう?」

「今度の嫌味は、嫌な嫌味ね」

 そこで初めて、ぶすっとした顔をした砂彩は、俺の手を掴んでいる手を外した。

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