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なんでもやります!? よろず同好会  作者: 岩戸 勇太
夏休みはどうしようか?
23/67

生徒会室へ 1

 俺は、にらみ合いをする三人を残して、部室を出ていった。

「部室よりも、あっちの方が落ち着くかもしれないな……」

 料理対決をすると決まった以上、調理場の確保は当然必要になる。

 だから、生徒会長に顔がきく事を理由に、俺が調理実習室の使用許可をもらいに行く。

 そういう建前であの場から逃げ出したのだ。

 気の置けない仲である、東屋のいる生徒会室は、俺にとっていい逃げ場になってしまった。

 生徒会室の扉を開けると、上から黒板消しが落ちてきた。もろに頭の上に乗っかる。

 頭の上の黒板消しを取って見てみると、たっぷりとチョークを塗ってある。俺が頭を払うと白い粉が舞った。

 こんな事をするのはあいつしかいない……

「やあ、慶次。生徒会室に何の用かな? 君であればいつでも大歓迎だぞ」

 なんでもない顔をしてサラリとしながら言う東屋。

「道化役として大歓迎されるのは、ご遠慮願いたいがな……」

「はっはっは。一体何を言い出すんだ? 人聞きの悪い」

 相変わらずこいつは言動一つ一つが怪しすぎる。

 さっきの『はっはっは』だって、完全に乾いた笑いだったし。

「からかってもらえるってのは、君が『愛されている証拠』だよ。悪いもんじゃないって」

 そう言いながら、ニンマリとした顔をこっちに向けるのは、生徒会の書記である斎藤さいとう 奏多かなただ。

「会長の擁護をしないでください……こいつは、昔からすぐに調子に乗るから」

 俺が言うと、クスクスと笑い出す。

「私としては、調子に乗ったささ君が見たいけどね」

 どうせ、そんな事を考えているんだろう……

「奏多先輩にとっては、俺の事なんて対岸の火事ですからね」

「まあまあ、そんなに拗ねないの。今度美色みいろちゃんのパンツ見せてあげるから許してよ」

 そう奏多先輩が言うと、体をビクッ……と震わせた出雲いずも 美色みいろは怯えた顔をした。

「見せません……」

 小さな声で答える美色ちゃん。

「いいんでないの~? 減るもんやないし、この前、慶次君の事を「ちょっといいかも」とか言っていたじゃないの~」

 奏多先輩は、美色ちゃんの耳元で囁く。美色は目を大きく開き、奏多先輩の口を押さえながら言う。

「それ、言っちゃだめです!」

 奏多先輩は、美色ちゃんをからかうのが大好きのようだ。見ていると、美色ちゃんとのやりとりに、微笑ましくなる。

 美色ちゃんは俺の方を向き、キッ……と睨んできた。

 誰かのとばっちりで俺が睨まれるのは、ここでも変わらないわけだ。

「そろそろ、美色ちゃんをいじめるのはやめたらどうですか?」

 そして、このクセ者揃いの生徒会を、表面的に仕切っている、塩谷しおたに 架名かなが奏多先輩の事を止めに入った。

「架名ちゃんに言われちゃしょうがないなー」

 口では『しょうがない』とは言いつつも、態度では、『ちょうどいい引き際を用意してもらってありがたい』といったところである。

 奏多先輩は、素直に書記の仕事に戻っていった。

 このデコボコのようで、実はピッタリと型にはまっている関係は羨ましい。うちのよろず同好会も、このようなよくできた関係になれればいいと思う。

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