ある男の子の話
人によっては嫌な表現が(病気の姿を現す表現)あるかもしれません。嫌な方は飛ばしてもらって大丈夫です。
僕の名前はハワード・ルイ・アンダーソン。公爵家に産まれた。産まれた時から僕は病弱でベッドの上にいる事が多かった。調子が良い時は外に出て庭を散歩したが、すぐに疲れてしまい、抱き抱えられてベッドの上にすぐ逆戻りする。
咳が止まらず苦しかったり、寒気がひどくて眠れなかったり、ご飯を食べれば気持ち悪くて吐く日もある。僕の身体は他の子供と比べると小さい。同じ歳の従兄弟のアレクシスが見舞いに来てくれた時に実感した。僕よりもかなりデカいし、髪の毛もツヤツヤ、サラサラで肌も綺麗だった。それに比べて僕は骨ばっていて、唇も肌もハリが無い、髪の毛もケアはしてもらっているがパサついている。骸骨の様な自分を鏡を見るのが嫌になりこの部屋の鏡を撤去してもらった。
そんな中、僕を治そうとして、たくさん見舞いにやってきてくれる人物がいた。従兄弟のレイシスだ。めちゃくちゃ苦いお茶を飲まされたり、見た目がドロドロの何かを食べさせられたり、変な踊りを踊らされたり、見たりもした。その他、民間療法などもたくさん試した。ただ、レイシスは治療だけではなく、僕の先生もしてくれた。主に魔法だが、文字の読み書き、歴史や算術、マナーなど、生きていく為に必要な事は殆どレイシスから学んだ。他にも先生は居たが、僕の姿を見て目を合わせてくれる先生は1人も居なかった。だからちゃんと目を見て会話をするレイシスの授業はとても楽しかった。それに、僕が辛くてあたってしまう時も腹を立てずに茶化して場を和ませてくれた。それに、内緒で外に連れ出してくれる時もあった。レイシスは歳の離れた僕の兄上の様な存在だ。父様と母様を除いたら僕の一番の心の拠り所になっていた。
僕はもう長く無いと思う。最近は手足を動かすことも出来なくなったのだ。ご飯も噛む力がなく、ほぼ飲み物だけになった。父様と母様にはこれまで育ててくれた恩を返せないまま僕は死んでしまうのではないか…………僕は何の為に生まれてきたんだろう…………父様と母様の顔が日に日にやつれていき、涙で腫れたような真っ赤な目が辛かった。
そんな中、レイシスだけは変わらずに居た。とうとう動けなくなった僕の元へやってきて、
「今度は魔法の治療をしてみようと考えてるんだ。君の病気を治せるかもしれない魔法があって、それを扱える唯一の子が居るんだ。今度連れてくるからそれまでハワードは頑張って待っててくれるかい?」
(今までどんな事をしても治らなかった僕の病が治るかもしれない魔法?それって、、魔法なの?)
もう身体全身が痛くて辛くて涙も枯れ果てて、今にも意識を飛ばしてしまいそうな僕に、楽しそうに話をするレイシス。まるで次こそは治るとでも言いたそうな口ぶりだ。
僕が今にも死にそうだから優しさで言ってくれているのかもとも思ったが、レイシスは一度たりとも僕に嘘をついた事はなかい。自然と期待で心臓が高鳴る。
「じゃぁ…………それまで…………生きる、ゲホッゲホッ……」
今できる精一杯の笑顔で応える。咳が止まらなくなり、身体が蝕まれていく。優しく水を飲ませてくれるレイシス。しかし喉に詰まり半分口から溢れてしまう。汚いのにそれすらも動けない僕の代わりに綺麗に拭いてくれる。
「ごめ……
「ハワード、もうすぐ自分で何もかもできる様になるんだから謝るのは無しだよ」
ウィンクをして、僕の唇に人差し指をそっと押し当てる。レイシスの優しさに自然と笑みが溢れる。そして僕は意識を手放した。そして、次に目覚めた時には、レイシスと小さなフードを被った女の子が僕のベッドの脇に立っていて、僕の身体は今まで味わった事のない物になっていた。苦しさや痛みもない軽やかな身体、病が治るかもしれない魔法……レイシスが言っていた事が嘘ではなかった事が証明された。
お礼をしたかったから名前を聞こうとしたらレイシスに濁されてしまった。死んだも同然の僕を救ってくれた救世主…………いや、僕を救ってくれた神様。僕なんかが名前を知ろうなんて烏滸がましかったかもしれないが、いつか会えるなら僕の感謝の気持ちを伝えよう。
その後、病は治ったが、体力が大幅に落ちていた。リハビリを繰り返しながら勉強をする日々が続いた。そんなある日、父様からある国の学校への入学を勧められた。そこは皆が平等で、学びたい事は自ら進んで何個でも学んでいいという事だった。この国の学校は魔法が主だが、勧められた他国の学校は、魔法以外の学びや、他国同士のコミュニケーションなど、沢山取り入れて学べるらしい。僕は死ぬ覚悟ができていた頃、殆どの可能性を諦めていた。その反動で、今は貪欲に色々学びたい。だから僕は父様が勧めてくれたドミノレイル王国の学校に入学する事に決めた。
(僕の可能性をこれからもどんどん増やしていこう!!なんたって、僕は生きているんだから!!)




