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160・サクヤ、生徒会長に目をつけられる


「はう!?ち、ちち、ちょっと胡桃沢会長!?そんなに力強く抱き付かないで離れてくれませんか!?あ、ああ、当たってる!当たってますからぁぁぁあっ!?」


身体にフニフニと当たる柔らかい二つの感触に、俺のドキドキ鼓動が速くなっていく。


「くくく。離れてやってもいいが、但し条件があるっ!」


「じょ、条件!?条件って何ですか!い、いいや言わずとも分かるっ!どうせダンジョン探索部に入れとか言うんでしょっ!!」


「ほほう。直感能力も高いのか。ますます気にいったぞ、新入生っ!」


「そんなもん、誰にだって分かる―――わひゃっ!?だ、抱き付く力が強くなってっ!?」


サクヤは必死に胡桃沢会長の抱き付き攻撃から脱出しようと試みるが、しかし胡桃沢会長はそれをさせるかと両腕の力を強めそれを阻止する。


そして胡桃沢会長は悪どい笑顔をニヤリと浮かべ、


「くくく。さぁ、新入生よ!離れて欲しければ、今すぐダンジョン探索部に入ると約束するのだっ!」


とても生徒会長とは思えない取り引きをしてくる。


「ちょっ!生徒を脅して交換条件をしてくるなんて、あんたそれでも生徒会長ですかぁぁあっ!?そ、それにあんた、『我々生徒会は、過剰で強引で暴挙な行為は絶対にしない!』とか言ってませんでしたかねぇぇぇええっ!!」


「ふふふ。臨機応変という言葉を知っているかな、新入生?つまりはあの時はあの時、今は今だという事さっ!そう!時代は常に動いているのだよっ!!」.


「うわお!これはヒドイッ!?」


こ、こいつ!?


響堂と交渉していたあのしつこさが、胡桃沢会長(こいつ)の本性だったかっ!


胡桃沢会長の清々しいまでの開き直りな態度に、俺は心の底からドン引きする。


―――くっ、参った!厄介なのに絡まれてしまったっ!


こんな目立つ人物と関わりたくないんだけどっ!


だって胡桃沢会長みたいな陽キャラの代表と関わると、絶対に俺の目指す平穏な学校生活が終わりを告げるのは火を見るよりも明らかじゃんっ!


正直ナイスバディーの胡桃沢会長にまだ抱き付かれていたかったという女にモテない陰キャラ心はある。


だがしかし、それ以上に厄介事に巻き込まれたくないという陰キャラ心の方がそれを上回るっ!


......と言う訳で、


少し本気を出してでも急ぎこの場から逃げねばっ!


俺はそう意を決すると、


「ウリャッ!!」


「―――のわ!?」


両腕に力を込めて胡桃沢会長の捕縛から脱出する。


「で、では胡桃沢生徒会長。教室に戻る時間が迫っているので、ここで失礼させていただきますねっ!」


俺は胡桃沢会長に頭を軽く下げたあと、踵を返し猛ダッシュで自分の教室に駆けて行く。





「な!?何なんだ、あの新入生の足の速さはっ!?」


脱兎の如くスピードでその場を去っていくサクヤを見て、胡桃沢会長が唖然とした表情で驚愕している。


「そ、それに新入生が先程見せた私を振りほどいた力......」


私はかなり本気の力で新入生に抱き付いていた。


だというのに、


それを意図も簡単にあの新入生に外されてしまった。


そして今の新入生の見せた、目を見張る程の移動速度。


「くくく...あははははっ!これは面白い!実に面白いぞっ!!」


これは思わぬ所で響堂以上の逸材を見つけてしまったっ!


「この発見がその響堂のやらかしで増えた仕事のせいだというのは、何とも皮肉だがな......」


胡桃沢は先程まで響堂のせいで、てんやわんやと行っていた後片付けを思い出して苦笑する。


......まあいい。


響堂の事なんぞは、今は後回しだ。


今私が考えるべき事は、あの頑なに入部を嫌がる新入生の心を一体どうやって柔軟させ、ダンジョン探索部に入部をさせるかだ。


「......そういえば、あの新入生。私の抱き付かれて翻弄していたな?」


新入生のあの翻弄ぶりを考えるに、


道下達に冗談と言った、色気で誘惑作戦が意外と幸と出るやもしれんな?


「本当はやりたくないのだが、しかしダンジョン探索部の繁栄の為には致し方なしだよな.....くくくく♪」


胡桃沢会長はやりたくないと言っている割には口角がニヤリと吊り上がり、必ずサクヤのハートを落とし、ダンジョン部に入部させようと画策する。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「―――ふぇっくしゅん!?な、何だ!?今のゾクゾクッとする身の震えはっ!?」


突如身体中に悪寒が走ったサクヤは、自分の身体を両腕でギュッと抱き締める。


「も、もしや胡桃沢会長が、何やら良からぬ事を俺にしようとしているのではっ!?」


ああいったタイプって、本当に諦めが悪いからな。


あっちの世界で追い払っても逃げ回っても、しつこく付き纏ってくる連中の事を嫌な顔をして思い出す。


「......やれやれ。こいつは面倒くさい事になりそうだ......ハァ」


サクヤは今後の想像を思い浮かべ、深い嘆息を口からこぼす。


「......おっと。そんなこんなと悩んでいる内に教室へ着いたようだな」


滅入った気持ちを切り替え教室のドアを開けて中に入ると、席の空いている机へと移動し、そして椅子に腰を下ろす。


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