154・俺のスローライフを脅かす存在
「それでね、この間も佐紀の奴がさ......おっと。お兄ちゃんと一緒の通学路はどうやらここまでみたいだね?」
成美が通学路の分かれ道で止まる。
「わたしの通う中学校はこっちだからここでお別れだね、お兄ちゃん!」
そして自分の通う中学校の通学路にトコトコと歩いて行く。
しばらく歩いた後、成美は身体をクルッとサクヤに向けると、
「それじゃあね、お兄ちゃん。お兄ちゃんが友達百人作れるよう、佐紀達と祈っているからねぇ~♪」
成美は揶揄う様なニマニマ顔でそう言う。
「そんなに作れるかい!ひとり作れるかも怪しいってのによっ!」
「あはは♪お兄ちゃん陰キャラだもんねぇ~!」
「うっせい!」
「あはは♪初日から遅刻は嫌だし、わたしそろそろ行くねぇ~バイバイ♪」
成美がクスクスと屈託ない笑顔でサクヤに手を振った後、自分の通う通学路に身体を向けて少し早足で歩いて行く。
「......ったく。さて俺も行くかな」
成美が奥にある曲がり角に入り消えた事を確認した俺は、自分の通う通学路を歩き出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここが俺の通う学校.....『青文守高校』か!」
うん。
普通だ。
普通の学校だ。
学校名も普通。
行き交う学生達から戦いとは無関係って感じで、熱気も威圧も感じない。
「うっしあっ!今日からここで戦闘とはご無縁のスローライフが始まるのだぁっ!」
サクヤが意気揚々と、校門入り口に向かって足を一歩踏む入れようとしたその瞬間、
「「「「キャァァァァァァア――――♪」」」」
学校内から悲鳴に似た歓声が周りに響き渡る。
「うひゃっ!?な、なな、なんだ!?い、今の悲鳴はっ!?」
いや、悲鳴というか......歓声か?
「......今の歓声、学校内から聞こえてきたみたいだが?」
この歓声が一体何なのかを確かめるべく、俺は歓声の聞こえてきた方角へと駆けて行く。
「......どうやらあの人だかりが悲鳴の元凶みたいだな?」
しばらく学校内の通路を移動していると体育館らしき建物が見えてきて、そしてその体育館らしき建物の出入口前に、女子生徒の人だかりが出来ているのを発見した。
「しかし一体何の人だかりだ、あれ?」
サクヤは訝しい表情しつつ、騒ぎの元凶の人だかりまで近付いて行くと、
「あははは♪落ち着きたまえ、僕の大事なファン達よ!僕は逃げも隠れもしないからさぁ~~♪」
優男っぽいイケメン男子が爽やかボイスで、黄色い歓声をあげている周囲の女子生徒達に笑顔を振り撒いていた。
「だ、誰だあいつ!?も、もしかして有名人か、何かなのか?」
「ん?あいつかい?あいつは響堂雄馬っていう人物で、数いる十代新人冒険者の中で決闘ギルドに期待されている人物のひとりらしいぜ!」
サクヤが目の前の光景に唖然としていると、近くにいた男子生徒が女子生徒達に囲まれて笑顔を振り撒いている優イケメンの情報を教えてくれた。
「何でもあいつ、冒険ギルドで行われる仮免を一発で解除出来る試合で勝利してF級冒険者になったエリートでさ......」
「......しかもその後クエストを次々とクリアし、あれよあれよの快進撃であっという間にC級冒険者へと駆け上がった、凄腕冒険者なんだぜ!」
「ホントスゲェよな、響堂の奴!」
「聞いた話じゃ、俺達の年代で冒険者になった新人冒険者の中では、あいつと松島将。そして最近ランクアップした東雲柚奈さんだけらしいぞ、C級冒険者に昇格した奴ってさ!」
「俺達の年代でC級冒険者かぁ。そんなスゴい冒険者がうちの高校に通うなんて、あの女子生徒達じゃないがテンション上がるよなぁ~♪」
「俺、後でサイン貰おうかな?」
「多分サインしてくれないと思うぞ?あいつ、女子以外には興味がないタイプみたいだからな!」
「それは見ただけで分かる。ただ言ってみただけだ!」
優イケメンの情報をくれた男子生徒に続く様に、周囲にいた男子生徒達も優イケメンの事、響堂雄馬の情報を次々と語っていく。
「へえ~あの優イケメン、そんなにスゴい奴なんだ......」
俺は男子生徒達が次々語る響堂の情報にそうなんだという驚く姿を見せる。
がしかし心の中では、
イヤイヤイヤイヤッ!!
イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッッ!!!
何でそんなスゲェ奴が、うちみたいな普通の学校に来るんだよぉぉぉおっ!
そんなエリートはエクトス学園に行けやぁぁぁああ、エクトス学園によぉぉおおぉぉおおっ!!!
初日から俺のスローライフを脅かす存在に対し、苛立ちMAXで地団駄を踏みながら抗議という名の愚痴と文句を叫んでいた。




