#22 親の心配と初詣
直人からの話を聞いた裕子は少し驚いていた。
「じゃあそんな前から想いあってたって事なの?」
「はい、まぁ亜沙美さんの話は僕も大晦日に初めて聞いたわけなんですが」
「亜沙美、あなたバイトの子に目をつけてたってわけ?」
「お母さん、ちょっと言い方が悪いよ」
「あ、あぁごめんね。いや、あなたにしてはやるなと思って」
「ちょっとどういう意味?」
「実を言うとね、亜沙美は恋愛が苦手なんじゃないか、もしかしたら興味無いんじゃないかって思ってたの。私もお父さんも」
「そうだったの!?」
「だから三十歳過ぎた辺りから心配でね。ほら、あなた昔から彼氏を紹介してきたこともなかったじゃない」
「まぁ確かにそれはそうだけど」
「だからお見合いの話を出したのだけど、彼氏いるって言うじゃない?私達は嘘だと思ってたのよ。それが年末に突然藤堂君連れて病院に来て、ビックリしたわよ」
「本当にいたの?って言ってたもんね」
「お父さんにも話したわよ、そしたら喜んでた。昔は絶対に結婚なんかさせない!とか言ってたのに」
裕子は大笑いした。
「藤堂君、もしかしたらお父さんに挨拶するとき変に頑固親父っぽかったり、なんか怒ってるような感じになってるかもしれないけど、絶対に演技だから気にしないでね。下手したら今からどうするか考えてるかも 」
裕子はクックックと体を震わせている。
「はい、僕もご挨拶させていただいたあと色々とお話もさせていただきたいです」
「そういえばお父さん仕事は大丈夫なの?手術終わってもすぐに動かせるわけじゃないでしょ?」
「そうだろうけど、まぁ私もいるから大丈夫よ。配達も私が運転すればいいんだし」
「配達ですか?お父さんの仕事って?」
「うち金物屋やってるの、家から数メートル離れたところに店があるのよ。って言ってもお客さんはほとんど来なくて周辺の飲食店からの注文がメインなのよ、たまに個人からも注文来るけどね」
「あっ、それを配達で届けてるんですね」
「そうなの、まぁ重いものも滅多に無いし、お父さんには店番と注文受付を頼んで、私が配達に行けば何とかなると思うわよ」
「金物だけじゃなくて包丁とかの調理道具もあるんだよ、ナオは料理好きだよね?」
「あれ?好きって言ったっ……」
「ナオは料理好きだよね?」
「はい、好きでよくやってます」
「こら!亜沙美、言わせるような事をするんじゃありません、そうやって雑煮を作らせようとしてるんでしょ」
「バレた?ハハッ」
「お母さん、私とナオは初詣行こうと思うんだけどお母さんも一緒に行く?」
「私はいつも通りご近所さんと落ち着いたときに行くからいいわよ、二人で行ってらっしゃい」
「わかった、それじゃ行ってくるね。ほら、ナオ行こう?」
「藤堂く……ううん、これからは直人さんって呼ぶわね。直人さん、亜沙美の事よろしくお願いしますね」
「はい、ありがとうございます。行ってきます」
直人は裕子からの呼び方が変わったことを喜んだ。少し壁があった気がしたが色々話したことで認めてくれたのだろう、そう思った。
二人は地元の人達が行く神社に向かった。
「へへー、直人さんだって」
「…認めてもらえたのかな」
「なぁに?そこ不安だったの?」
「そりゃあね、彼女の親に会うっていうのも初めてだったから」
「そうなの?もしかして緊張してた?」
「もちろん、どうやってお土産渡そうとか何を話せばいいかとか考えてたよ」
「…そのわりには雑煮いっぱい食べたね」
「すごく美味しかったから…」
直人は耳の後ろ辺りをポリポリ掻いた。
「そっか、今日が初めてだったのか」
亜沙美は少しニヤついている。
「うん、そして今日が最初で最後」
「最後?」
「これから先、亜沙美以外の親に挨拶に行くことなんてないから、お父さんへの挨拶が終わったら次からは会いに来るって形でお邪魔したい」
直人の言葉は亜沙美にとって未来を約束するような言葉に聞こえ、一気に顔が熱くなったような気がした。その後何を言っていいのか言葉が出てこなかった為、とりあえずおもいっきり直人の腕にしがみついた。
「おわっ、と」
直人は驚いて少しバランスを崩した。亜沙美を見るとクリスマスイブの時に見た以上の笑顔になっていた。
直人は亜沙美のその笑顔がとても好きだった。
これからもこの笑顔の為に頑張ろうと心に誓った。
神社
周辺や参道にはいくつかの出店もあり、地元の人達で混雑していた。
「すごいね、屋台まで出てる」
「そうなの、子供はお年玉の使い道はまずここなんだよね、私もわたあめ買ったりたこ焼き買ったりしてたな」
「じゃあお詣りしたら何か買って食べようか」
「さっき雑煮いっぱい食べたじゃない、まだ入るの?」
「屋台のたこ焼きとかは別腹じゃない?」
「うっ…確かに」
「じゃあ決まりだね、それじゃお詣りしてこよう?」
「うん」
二人はお詣りを済ませた。
「ナオは何をお願いしたの?」
「秘密、言っちゃいけないんでしょ?これって」
「そうなの?じゃあ聞かない」
「うん、二人の将来の事だからちゃんと叶ってほしいし」
「それ、言っちゃってるのと同じじゃない?」
「……だ、大丈夫だよ」
「まぁ私もお願いしてるから二人分って事で大丈夫でしょ」
「それも言っちゃってるのと同じじゃない?」
二人は顔を見合わせてクスクスと笑いだした。
「それじゃ屋台に行こう」
「うん」
手を繋いで歩きだした。




