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脳筋紳士・合流する



 

 さて、公爵令嬢ちゃんの従者に半場強制的になったことで無事?ユニーククエストをクリアした俺は現在、最初の町にある酒場の個室の扉の前にいた。


 てか改めて言葉にしてみると酷いな行き当たりばったりにもほどがある。こんなんで俺の理想の紳士ライフは送れるのかと一抹の不安を覚えたが。それはひとまず置いておこう。


「はあ……帰りたい……」


 これから会う人物のことを考えるとため息が出るが、意を決してドアノブに手をかける。


『フレンドコードを確認。解錠します』


 突然ドアノブの上に表示されたテキストにビクッてなった。こういうの弱いから割とマジでやめて欲しい。

 調子を崩された気持ちを整えて一度深呼吸し扉を開けようとしたその時、()にいる人の手によって先に扉が開けられる。


「おー! 待ってたぞ()よー!」


「すでに出来上がっている……」


 出迎えたのはお酒のビン片手に()()()()()姿()の女性プレイヤーだった。


「? なんか老けてるような? ……まっ、いっか! とりあえず席につけ~! 酒はたんまりあるぞ――おぉ!?」


「ちょっと待てぃーーー!!!」


咄嗟にラリアットをかまして部屋に押し込む。


「うぇぇぇー!!!」


 この人何してんの!?!?!?




===




 俺には年の離れた姉が一人いる。名前は正道(せいどう) (ひなた)

 小柄な体躯、垂れ目がちな瞳でミディアムストレートと、動物系女子を地で行く人間で、まあ世間一般では美人の類に入る人間だろう。俺は思わんが。

 で、その姉がまんまの姿で目の前にいる。


「なんで現実(リアル)の見た目のままゲームしてるの!?」


 とりあえず席につかせた姉を問い詰める。こいつ正気か?


「んえ? めんどかったから」


「えぇ……」


 当然という風に言い放つ。えぇ……。


「さっさとゲームやりたかったしぃ? ま、髪の色変えてるし大丈夫でしょ~」


 そういうとぐっと酒瓶を仰ぐ。なぜゲームの中でまでアル中の姉を見なくてはならんのだ……。

 確かに現実世界の姉の茶髪と違い、鮮やかな紅色の髪だが。ただのイメチェンだろこれ。ネットリテラシーが泣いてるぞ。


「いや全然大丈夫じゃないでしょアウトだよ完全に」


「え~? でも実際今まで特に問題も起きてないしね?」


(このアル中ほんと……)


 そう、この正道 陽という人間はドがつくほど天然のマイペース人間であり、そして何より無類の酒好きだ。いや酒狂いの方が正しいかもしれない。せっかくの小動物系女子が酒で台無しになってる様は凄惨の一言に尽きる。


「だったら紳こそ何よそのアバターがっつりジジイじゃない? 弟の面影すらないじゃない?」


「ジジイっていうのやめろ。俺がこういうゲームスタイルなのは前々から知ってるだろ」


「ん~? ってことはやっぱステ振りはSTRに重点置いた脳筋ステって感じ?」


「え? STRにしか振ってませんけど」


「え? マジで言ってる?」


「え?」


「流石の私でもVIT(耐久力)AGI(俊敏)にステ振ったよ? 馬鹿なの?」


 姉は大げさにやれやれと首を左右に振ったあと酒を飲む。どうやらワンアクション、ワン飲酒らしい。馬鹿かな?


「馬鹿はお前だ。いい加減酒瓶から手を放せアル中」


「ぶはぁ~しょうがないでしょ。この酒瓶は私のソウルメイトなんだから……ん? 空じゃん次々~♪」


 手に持つ酒瓶の酒が尽きたのに気付いた姉はテーブルに何本も置かれた酒瓶から一つを手に取る。ソウルメイトだったはずの酒瓶はポリゴンとなって儚く散った。ソウルメイトとは?


「はぁ……まあアル中は今に始まったことじゃないしどうでも良いけど、それよりそっちから呼び出したんだからそろそろ要件を聞いていい?」


「あ~そうだった忘れてた~」


「おい」


 STRに全てを捧げた俺の紳士ビンタを喰らわせてやろうか?


「紳も運営からのメール見たでしょ? 昨日の夜に来たやつ」


「メール?」


「――GJOの第一回イベントの告知だよ」


「マ?」




===




 イベントとの内容は以下の様だ




 【GJO初イベント開催決定!】


『舞台なんと巨大な浮遊島! イベント中は時間加速で思い存分イベントを楽しめる! 浮遊島を探索したりモンスターを狩ったりしてイベントポイント集めてランキング上位を目指そう! 集めたイベントポイントは豪華報酬と交換できるよ! ……実はポイント以外にも何かあったりして……近日開催予定だよ☆乞うご期待!』

 



 という告知内容が吹き出しという形でチュートリアルナビゲータであるニナちゃんの2Dキャラから出ていた。ニナちゃん? あなた見ないと思ったら何してるの? 


「あ~その告知メッセージ凝っててさ~最初のナビゲーターちゃんの2Dキャラで告知出るんだよね~」


「何その無駄に力の入った告知……」


 まあ、姉が俺を呼んだ理由は大体予想がついた。


「……で、俺にPTメンバーになれと?」


「いぐざくとり~話が早くて助かるわ~」


「なんだそのふにゃふにゃのイグザクトリー……」


「どうせあんた、PT組む相手いないでしょ?」


「いないけど……姉さん確か稼働初期からこのゲーム(GJO)やってるはずでしょ? 組む人いないの?」


 突如姉にGJOのヘッドギアとの2ショット写真と共に「お姉ちゃんは一足早くGJOの世界に行ってるから受験がんば!」というメッセージが来た時に覚えた殺意は記憶に新しい。


「いや~私のジョブの性質上ソロが適してるというか。周りに迷惑をかけるというか……それに野良パにも入れない理由がありまして組むアテが今のところ紳しかいないんですよこれが」


(それは俺なら迷惑をかけてもいいということなのか???)


「お願い! イベント始まったら単独行動で良いから!」


 碌なことにならない気がするので本当は組みたくないのだが、確かにPT報酬は魅力的……。

 そう、このイベントはPTで参加するだけでイベント終了後にPTで参加したプレイヤー全員にポイントが配布されるPT組み得イベントなのだ。


「まあ、別に良いけど……俺もPT報酬は欲しいし」


「じゃ、とりあえず誓いの一杯やっときますか!」


「いややらんけど? 俺見た目おじいさんだけど未成年だからな?」


 いやまあ騎士くんと一緒に飲んだけどね? でもあれはほらえーと、ふ、不可抗力ってやつじゃん? 許されるよね? 大丈夫だよね? 

 紳は主人公の本名だよ! 忘れてるかもしれないから一応。

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