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脳筋紳士・空中で舞う

「さて、どうしたものか……」


 森に突っ込んで死にかけた俺は現在、回復ポーションを飲みながら倒れた木の影から俺がぶん殴ったビックベアーさんを見ている。


『グルガァアア!!!!』


 ビックベアーさんは俺にぶん殴られてご機嫌斜めらしい。剛腕を振り回し自分の周りにある木々を薙ぎ倒している。俺を探しているのだろうか。


「一撃で殺れなかったか……」


 それなりにダメージが入ったと思うがビックベアーさんは倒せなかった。しかも俺の気の所為じゃなければ体から湯気が立ち全身の体毛が逆立って棘のようになっている。怒らせたらまずい系のモンスターだったらしい。


「ここら辺のエリアボスか何かか?」


 俺はそう呟きながらポーションで回復したHPを見るついでにステ振りをする。もちろんステータスポイントは全てSTRに振った。


 それにしてもどうするべきか。さっきビックベアーさんを殴れたのは割と奇跡の一撃だ。

普段はあんなギリギリで回避なんて出来ない。あれは緊急時による一時的な集中力のお陰だ。次同じ真似は出来ないだろう。


「避けられて1回」


 あの剛腕の一撃は1回だけなら避ける自信がある。

 あの一撃自体は単純な一直線の振り下ろしなので避けること自体は難しいことではない。問題は一撃目を避けたらすぐに空いていた片腕による剛腕の一撃が襲ってくることだ。

 なので一撃目を誰かが受け、そのうちに俺が突撃。俺に向かって振り下ろされる二撃目を避けそのまま頭に一発。これが理想だ。


「問題は一撃目を受けてくれるその誰かがいないことなんだよな……」


 俺が攻めあぐねていると。ビックベアーさんの暴れているほうに歩いていくプレイヤー達が木の隙間から見えた。男子が二人、女子が二人の男女混合パーティーだ。


「男子の二人が前衛、女子は二人が後衛か」


 装備も一応整えているらしいしあのパーティーならビックベアーさんの攻撃を二、三回くらいは耐えれそうだ。


 ……いや、別にあのパーティーをビックベアーさんの生贄にしようとしてる訳じゃないよ? ただね、若干乗り気じゃない女子を引っ張るように男子がビックベアーさんのほうに向かってるのが見えてね。あっ、ビックベアーさんとエンカウントした。


 四人とも想定外のでかさのビックベアーさんに硬直している。

 そして硬直している四人にビックベアーさんが腕を振り上げて――


「ちょっ……と待ていいいいい!!!!!」


 全力でビックベアーさんに向かって跳躍ぅ! あの四人にビックベアーさんが意識を向けて腕を振り上げた今がチャンス!


 俺は右手に持っていた()()()()()を振り上げて自身のSTRを惜しみなく開放した跳躍でビックベアーさんに突っ込む。なんか俺、突っ込んでばっかだな。


「――チェストォオ!!」


 ビックベアーさんの側頭部を粗悪な棍棒で殴る。もともとゴブリンからドロップする粗悪な棍棒は耐久値が紙なので一瞬で粗悪な棍棒が砕け散る。


「グゥ……!」


 殴った衝撃で俺は跳躍の軌道から外れ、ビックベアーさんの頭上に体が投げ出される。浮遊感がヤバい。


(もう一撃!)


 宙に体が浮く中、()()に持っていた()()()()()()をスキルと同時に振り下ろす。


「『スマッシュ』ぅ!!!」


 ゴスッ


「グゴギャォッ!?」


 ゴスッというなかなかヤバめ音とともにビックベアーさんの頭頂部から大量のダメージエフェクトが溢れ出す。


「グッ……ォォオオ!!」


(死んでたまるものかぁあ!)


 無茶な加速&無茶な姿勢からの振り下ろしの反動によってまたあらぬ方向に吹っ飛びそうになる体を俺は無理やり重心を下方向に向けることによって地面に向けさせる。


(頼むぞ紳士補正!)


 空中で二回転ほどしながら地面に足から突っ込む形で着地、勢いを殺すためにかかとでブレーキを掛けるが……。


(ちょっ、木が邪魔あああああ)


「フッ……!」


 咄嗟にぶつかりそうになった木を初心者の戦鎚で破壊。その反動のおかげか粉砕した木から5メートルほどの所で止まった。


「ふぅ……」


 とりあえず体が完全に止まったことを確認した俺は服に付いた土などを払った後、ビックベアーさんに殴られそうになっていたパーティーの元に向かう。


「危ないところでしたね。お怪我はありませんか?」


 なぜか俺の問いかけに答えず四人とも絶句しながら俺のことを見ている。見方によってはドン引きしてるようにも見える。

 おかしいなぁ? 俺は老紳士の見た目で空中変態軌道しかしてないんだけどなぁ?

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