俺氏と熱血青年と円滑な仕事
「へえ〜二人ともスキル持ちなんだ」
「そういうあなたは全スキル持ってるんですよね!どういうことなんでしょう…」
「私はあまり酷使しませんけどね」
「ミオ!二人とも旅に誘っちゃいなよ!」
おっと、そう言えば今日は共に旅に出てくれる人を探すんだった。
「二人とも、俺達主に王都に向かって旅をしてるんだけど、ついてくる気、ない?」
いつになく真剣になってしまった。
パーティーメンバーはできるだけ増やしておくのがRPGの基本だ。
「う〜ん。お言葉はありがたいんすけど、僕には厳しい親がいるので、難しいですね」
少し残念そうに俯く姿から、本当はついてきたいのだろうと察する。
「私も。この村でやらなきゃいけないことがあるので」
2人共に断られてしまった。
「ちょっとちょっと!あたしこのままミオと二人だなんて耐えられないよ!」
「なんだと?この俺のどこが不服だというんだ」
いつもの小喧嘩が始まりそうになった。
すると、レアドが自分の家系について語った。
「ミオウさん。フイッシュ家は僕が継がないといけません。しかし、周りからはそれに足る器がないだ何だ言われて辛かったんです。だから、最近は鍛錬所に通って、鍛えてるんです。昔からの夢である、騎士、いや、王都直属騎士になるために!」
俺たちは喧嘩を止めて、真剣に話を聞くことにした。
「でも、やっぱり父に止められて…。僕、本当は王都への旅に行きたいんです!」
俺たちはどうしたらいいかわからなかった。
フイッシュ家というと、エフォートビレッジでは知らない人がいないほどの名家らしい。
それほどまでに大きな家柄では、俺達にどうしようもない。
「レアドさん。わたくしもお手伝いしましょうか?」
唐突に切り出したリトーに驚きを隠せないでいるとともに、その作戦を尋ねる。
「そう…題して…」
ゴクリ…
「レアドさんを王都への旅へ連れ出そう作戦よ!」
ーーー
いつもの部屋のいつもの布団の中で、フィリアと少しだけ話す。
「なあ。レアドさん、可哀想だよな」
「ね。フイッシュ家っていうのは知らなかったけど、聞くところによると、相当な名家みたいだし、リトーがいうように簡単にはいかないと思うわ」
全くの同感だった。
その後リトーから聞いた作戦は作戦と呼ぶにはあまりにも大胆、かつ捻りのないものだった。
「みんなで家に押しかける、はなぁ〜」
バカ丸出しの作戦に、思わずため息が漏れた。
ーーー
「今日も仕事、頑張るか〜」
いつもの現場につき、背伸びをして気持ちを整える。
と、今日は新人が来たようだ。
「レアド・フイッシュ!十八歳です!一生懸命みなさんの仕事を援護しますので!よろしくお願いします!」
まさかのレアドだった。
周りの人々も突然の名家の倅の参加に目を丸くした。
「おいおい、名家の坊ちゃんがどうしたんだよ」
「さあ、金持ちの気まぐれじゃねえか?」
と、様々な声が聞こえてきた。
レアドはこっちに向かって歩いてきた。
「今日からよろしくお願いしますね!ミオウ先輩!」
俺は不覚にも戦慄してしまった。
ーーー
「はぁ!体動かして働くっていいですね!」
レアドは、俺たちと同じ、大敵を倒す仕事に就いた。
レアドのスキルは『空間交換』、レベル30である。
彼のスキルは、自分が指した空間と、対象の空間を交換できるというもので、スキル体制のない昆虫型の敵は、石と臓器の空間を交換されて、あっけなくやられてしまった。
しかし、レアドも体力を消耗するので、俺の高速詠唱による口の乾きは二倍になった。
「フィリアさんまじ強いっす!感服です!」
とても好青年なのだが…
「ミオウさん!こっち頼みます!」
なのだが…
元引きこもりの俺にはウザイくらい清々しいやつだった。
ーーー
「レアドはどうしてここに?」
仕事が終わり、サン・インに戻る途中で質問攻めした。
「父に頼み込んで、なんとか肉体系の職場につかせてもらったんです。普段は学校に通っていますが、今日は休みなので、臨時です」
頼もしい限りではあったが、レアドの家のことが心配だ。
「家、平気なの?」
「はい!土下座して頼みましたけどね。どうにかして王都にいきたいなぁ」
彼の顔を見て、どうしても彼を連れていきたくなった。
王都への旅には、必要な存在となるだろう。
「頑張ろう。俺達は外壁工事が終了したら、すぐにこの村を発つ。それまでに話をつけてくれよ」
「はい!」
俺達はいいコンビになれそうだ。