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第十四話  勘違い

登場人物


乙姫羽白オトヒメハジロ

 本作の主人公。

 性格が残念で変わり者な所がある。

 本人曰く、手先が器用な事と体を鍛えている事が長所。


●麦蒔まゆり(ムギマキマユリ)

 学校一の超絶美少女にして学年一の才女。

 しかしその正体は、性格が残念すぎる唯我独尊女。

 家から近いというだけの理由でこの高校に通っている。


●白鳥えみり(シラトリエミリ)

 茶髪でミニスカな、よくいる今風女子高生。

 顔は可愛くてスタイルも良い。誰にでも明るく接する性格。

 学内のリア充カーストで上位に位置する。


●朱鷺やよい(トキヤヨイ)

 一年A組担任にして生活指導担当教師。担当科目は国語。

 三十?歳で未だに独身。

 羽白曰く、見た目もスタイルも良いらしい。


   第十四話  勘違い



 見当違いも甚だしい。とんだ無駄足を踏まされた。

 いつもならばそんな感じの罵声を浴びせてくるだろう麦蒔なのだがが、なぜか今日はおとなしい。

 わかったよ、わかったよ、わかっちゃったんだよ! とか言ってた人も、ビクビクしながら麦蒔の顔色を伺っている。

「……まゆりん。ごめんね? あたしのはやとちりのせいで……」

「……?」

 恐る恐る、といった感じで白鳥が取り繕うのだが、麦蒔は首をかしげている。

「白鳥さん。なにを謝っているの?」

「いや、まゆりんさっきから何も言わないし……。怒ってるんでしょ?」

「怒ってなんかないわよ。じゃあ、私は先に帰るわね」

「じゃあってなんだよ!」

 さりげなく帰宅の意思を伝えて駅に向かおうとした麦蒔だったが、それを白鳥が必死になって留めようとする。

「めっちゃ怒ってるじゃん! なんかお詫びに奢るからさ、お茶でもしていこうよ……」

「結構よ。本当に怒ったりしていないし。あなたたち二人で行ってきなさいよ」

 そう言って麦蒔はぼくの方に視線を送ってきた。なんなんだよ?

 ぼくには関係のないやり取りだと他人事を決め込んでいたので、その視線はとても鬱陶しかった。などと考えていると白鳥がぼくにも話を振ってきた。

「ほら、オッツーもいっしょに謝ってよ。まゆりん帰っちゃうよ!」

「へ? ぼくももう帰るけど?」

「オッツーの事なんてどうでもいいんだよ!」

 お前の事だってどうでもいいよ!

 ぼくの事なんて本当にどうでもいいようで、白鳥はすぐさま麦蒔へと向き直る。

「とにかく、まゆりんは帰っちゃ嫌! なんだか後味悪くなっちゃうし……。ね!」

「…………」

 白鳥に力強く同意を求められた麦蒔は、仕方がなさそうに表情を崩す。

「わかったわよ。じゃあ少しだけよ」

「やったー!」

 とか言って白鳥は麦蒔の腕に抱きついた。白鳥って抱きつくの好きだよな……。

 などと考えつつも、話がまとまったし帰るかなと思い「じゃあ、ぼくはこれで……」と言って動こうとしたのだが、

「オッツーも行くんだよ!」

「何でだよ!」

 ってな感じで、ぼくも腕を掴まれて連れて行かれた。

 オッツーの事なんてどうでもいいんじゃなかったの?

 もう用事も済んだしさっさと帰ろうよ……。リア充ってこーゆー所が不思議だよね。

 そんなこんなで白鳥に引きずられて来たのは、先ほど来たゲームセンターだった。

「って、お茶じゃねーのかよ」

「いいじゃん! 折角だし三人であれやろうよ!」

 と言って、ぼくらは男子禁制とか書かれたエリアの中に入っていった。いわゆるプリクラコーナーってやつでして……。

「何? これは」

 プリクラコーナーに足を踏み入れた途端に、麦蒔が顔をしかめた。

 いやいや、プリクラくらい知っててくれよ……。これは撮った写真をその場でシールにしてくれるゲームなんだよ。

「そうなの。私、ゲームセンターってはじめてだから、知らないのよ」

 意外と言うことでもないが、ゲームセンターに来たことがないとは思わなかった。そんな人もいるんだねえ。などと考えていたら、白鳥がぐいっと麦蒔を引き寄せる。

「へぇー、そうなんだ。まゆりんはプリクラはじめてなのかー。これはね、友達同士とか恋人同士とかで記念に撮るんだよ! だから三人で一緒に撮ろうよ!」

「…………そう」

 ん?

 白鳥の説明を聞いて少し考え込んだ麦蒔だったが、何に納得したのか、つぶやいた。

 そして麦蒔が、

「それなら、あなたたち二人で撮りなさい」

「ええっ!?」

 白鳥から目をそらす様にしてそう言った。

 まさか拒否されるとは考えてもいなかったのであろう白鳥は、麦蒔の前側へ回り、少し上目遣いに麦蒔を見つめる。

「なんで? あたしはまゆりんと一緒に撮りたいよ……。オッツーと写るの嫌だった? だったら二人で撮ろ?」

 おいこら。なんじゃそりゃ。ぼくだって別にこんなの撮りたいと思ってないぞ? 腕を引っぱって連れて来たのはそっちだろうが……。

「いえ、そうじゃなくて……」

 そんなぼくの嘆きを無視して、麦蒔は白鳥とぼくの事を交互に見る。そして、気まずそうな雰囲気をかもし出しつつ応える。

「これは、恋人同士で撮るものなのでしょ? だったら、私がいたら、あなたたち二人の邪魔になってしまうじゃないの」

「え?」

 え?

 ぼくと白鳥の声は重なった。

「何を言ってるんだ、お前は? ぼくと白鳥がなんだって?」

「だから、あなたたち恋人同士なんでしょ?」

 …………。

 えーっと、これはどうリアクションすればいいんだろうか?

 ギャグって雰囲気じゃないし、麦蒔は大真面目に言ってるっぽいのだが……。

「ちょっ、まゆりん。ありえないって!」

 ぼくがあっけにとられていると、白鳥が慌てて否定した。

「なんであたしがオッツーみたいな残念な人と恋人にならなきゃいけないの……」

「アホか。それはこっちのセリフだっつーの。まだ出会って四日目の人間とそんなんあるわけねーだろうが」

「四日じゃないよ! 出会って一ヶ月以上経ってるよ!」

「だから知らねえって言ってるだろ!」

 そんなぼくらのやり取りを見て、麦蒔は不思議そうに首をかしげた。

「お昼休みに、乙姫くんが言ってたじゃないの」

「はあ?」

 そう麦蒔が言うと、白鳥がぼくにつめよってきた。

「オッツー何言ってるの? あたしのこと恋人とか言ってるの?」

「言ってねーよ、なんの話だよ!?」

「いえ、そう言う事ではなくて……」

 ぼくの激しい否定に対して、麦蒔がすぐさま説明を補足した。

「乙姫くんが、今朝、白鳥さんに告白したって言ってたから……」

「……………………。ああ、あれか」

 そう言えばそんなこと言ったかもしれないな。うん。覚えてないけど覚えてる。

「え? オッツー何言ってるの? まゆりんに変なこと言わないでよ!」

 一人で「うんうん」言って納得しているぼくを白鳥が横目で睨んだ。

「でも、そうだったんだぁ……」

 白鳥は今日の麦蒔の態度を思い返して、それについて聞いた。

「じゃあ、今日一緒に来るの断ったり、ずと無言だったのって、あたしとオッツーに気を使ってただけなの?」

「ええ、そうよ。私がいたらお邪魔だと思っていたのよ」

 と言うことでした。チャンチャン。

 なにはともあれ、麦蒔が機嫌をそこねていたわけじゃないのならば一安心だ。一件落着のようだね。

 では、ぼくはこの辺で帰らせてもら――

「オッツーなに帰ろうとしてるの?」

 右腕が白鳥に掴まれた。

「まだプリクラもお茶もしてないじゃん」

「そうよ、乙姫くん。まだ帰さないわよ」

 そして左手が麦蒔に掴まれた。

 二人が仲直りしていい雰囲気をかもし出していたので、空気を読んで、もとい、空気になってしれーっと消えようとした。

 つもりだったのだが、白鳥はやや怒って、麦蒔はニヤリと笑みを浮かべて、ぼくの事を引きとめた。

「いやいや。誤解もとけたのなら後は女の子同士で仲良く遊べばいいじゃないのさ」

「何言ってるの? 誤解を招いたのはオッツーじゃん!」

「そうよ。あなたがお詫びに奢るまで帰さないって言ってるのよ?」

「いやいやいやいや。勝手に誤解したの麦蒔じゃんか! なんでぼくがお詫びとかしなきゃいけないんだよ!」

「オッツーが変なこと言うのが悪いんじゃん」

「いやいやいやいやいや。今日の無駄足は白鳥のせいだろ? そのお詫びだろ?」

「乙姫くん。無駄足って何の話かしら? 私たち今日は、ただ遊びに来ただけよ?」

「そうだよ。オッツーがお詫びに奢ってくれるって言うから、来てあげたんじゃん!」

 おい、こら、ちょっとまてそこの美少女二人。ニヤニヤしながら戯言を喚くな。話が変わってるだろうが!

 お前らは二人とも鬼なのですか!?




読んでいただきまして、ありがとうございました。


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