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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第四章『ソロクエストの次は王様のパシリです』
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第四十五話『王都は別れと出会いの場です』

 二、三時間かけて暗い道をひたすら歩いた俺たち。ついに、ほの明るい街灯の光が見えてきやした。やっぱり光のエルツ――魔鉱石。一応二回目の言及。この物語では活躍の場があまりない可哀想なコンテンツ――がたんまり集まってくる王都、レウコンは違うなぁ。


「や、やっと一息つける…………!」


「ほんとですよ、もう疲れちゃいました……溶けてしまいそうです」


 溶けろイグナ。冗談だけど。


「なぁ、アズ。もう少しでレウコンだけど、置いていかれること、納得してるのか?」


 俺は気になって小声で訊いてみる。さっきまでずっと考え事をするような顔つきでいたアズは、俺の囁き声に少し驚いた様子でこちらを見る。


「それは……納得は、してないけど……」


「そうか。じゃあ俺、一応イグナに相談してみる」


 アズは、そりゃイグナやリオンからしたら足でまといにはなるかもしれないけど、俺なんかよりずっと強いし、しっかりしてるし、何よりここまで俺を支えてくれたんだ。()()()()()()()()()()()()を気にしなくていいのはアズを置いていく利点だけど、たったそれだけのメリットのために大事な仲間を捨てたくない。


「本当?! ありがとう!」


 アズの純粋な笑顔って久しぶりに見たなぁ。美少女の笑顔は俺には効かないって言ったけど、今回ばかりは心に火がついた。


「なぁ、イグナ」


 前を進むイグナに駆け寄る。


「はい、なんですか?」


「あのさ、アズのことなんだけど」


 イグナの柔らかな表情が、ほんの少しだけ強ばる。


「あぁ……それですか。アズさんはどうしても連れて行けません。危険ですから」


()()()()()、なんなんだよ? アズのことを足でまといだって言うのか?」


 イグナは頑なに表情を強ばらせ、口を開きかける。肯定をするときの、口の動き方だ。


「はい。失礼ですがそれは事実で――」


「それだったら、俺だって足でまといだよ! そもそもリオンやイグナは攻撃ができる! でも俺は……枕投げでも見たろ? あんなザコ攻撃しか出来ないんだよ……それだったらまだ、アズを連れて行った方が……!」


「でもニーヴェさん。あなたにはその欠点を埋めつくしても余るくらいのアドバンテージがあります。白魔法ですよ。いいですか、現状をよく見てください。この四人の中で、()()()使()()()()()()()()()()?」


「それは…………」


 アズ、だけだ。魔法を使えないなら、肉弾戦に持ち込むしかない。ただ、レウシスが求めている戦力はそんなものじゃない。現に、魔法を使えて肉弾戦も強い騎士だって、歯が立たないのだから。


「……あの、お二人とも落ち着いてくださいよ……!」


 リオンがなだめるが、俺もイグナも考えを曲げたくない。俺はアズを連れて行く、イグナはアズを置いていくことでその身を守る、という目的をそれぞれ達成したい。


「もうわかったでしょう。ニーヴェさん、私は何も理不尽なことを言っているわけではないんですよ。この戦いに勝てば、アズさんとはいくらでも時間を過ごせます」


「もし、負ければ……? 負けたら、もう会えない……だろ?」


 敗北は、すなわち俺たちの死だ。それなら、ここで別れるのは嫌だ。もう少しだけ、時間を。共に楽しく過ごす時間を。


「…………よ」


 アズの震える声が聞こえる。


「もういいよ。私は、レウコンで待つ。ニーヴェたちなら、勝って戻ってきてくれるって、信じてるから」


 アズは笑う。やめてくれ。その笑顔は、偽装つくったものだろ。


「おい、アズ――」


「決まりですね。ニーヴェさんも、冷静に考えればこれが正しいと判断できるはずです。私たちは、勝つんですから」


 俺はただただ、奥歯を噛み締めるしかなかった。必ず勝つ。アズの元に帰るために。

 そうだ、今回の魔獣は、父親()()()()トゥローネ・シュッツァーでも倒せないはずだ。倒せているなら、今頃俺たちに仕事は回ってこない。なら、トゥローネに俺を認めさせるいいチャンスでもある。


「……アズ、待っててくれ。必ず勝って戻ってくるから」




 そうやって色々話しているうちに、俺たちはレウコンに着いていた。


「では、目的地に着いたことですし、今日は寝ましょう。私のおすすめの宿を紹介します!」


 イグナについて訪れた宿は、お手頃価格の綺麗なところだった。セコンの宿よりも部屋は少し狭いものの、純白の柔らかなベッドとホコリひとつ見つからない清潔なカーペット床に、こんな気分じゃなければはしゃいでいただろう。


「……あまり気にしないほうがいいと思います……イグナさんは厳しいことを言っていましたけれど……彼女もアズさんを守りたい気持ちは変わらないでしょうし……」


「わかってるんだ。切り替えなきゃいけない」


「……切り替えるには、睡眠が一番ですよ……?」


「だな。リオン、ありがとう。もう寝るよ」


「……い、いえ、礼には及びませんよ……! ……おやすみなさい」


 それから少し寝付けなかったけど、長旅の疲れもあってか寝ることはできた。



*****



「あの、アズさん……ああいうことを言ってしまってすみませんでした……」


「ううん、いいんだよ。私だって、自分が足でまといだって気づいてたし、ここで待つ覚悟はできてたし」


 アズリスはイグナに笑いかける。


「それに、イグナちゃんだって私のこと思って言ってくれてたんでしょ? それなら全然、私は待つよ!」


「アズさん……! 絶対、ニーヴェさんを死なせません。必ずあなたに再会させてみせます!」


「うん! もちろんイグナちゃんも、元気で再会しようね!」


 イグナは眦に涙を溜める。


「はい! 約束します!」


 そしてその涙は、笑顔によって零れた。



*****



「ニーヴェさん、大変です!」


 早朝にイグナの声で起こされた。勝手に部屋入ってきちゃダメよ。


「ん……朝っぱらから何?」


「アズさんがいないんです! 『新しい家を探すからもう行くね』という置き手紙だけ残して、部屋からいなくなっていました!」


「は?! マジかよ?!」


 眠気が一気に吹っ飛ぶ。


「ニーヴェさん! 王都中を捜しましたが、アズさんらしき人物はどこにも……!」


 一時の別れの言葉くらい言わせろよ。


「くそっ! 俺も捜す!」


 宿から勢いよく飛び出し、街道を走る。まだ人通りも少ないし、見回しながら走っても大丈――


「どわっ!」

「うわっ?!」


 低確率にもかかわらず、俺がぶつかってしまったのは、大きな黒い帽子を目深まぶかに被り、濃紺の長い髪を後ろでまとめた、銀色のローブの少女。


「すみませんでしたぁ! ちょっと人捜ししてて視界がアホになってました!」


 こういうときはスーパーニーヴェ平謝り。しかし、少女はそれには応じず、静かに言う。


「お前は……ニーヴェルング・ヴァイスではないか?」


「そうだけど……君は? 俺、たぶん君のこと知らないけど」


「いや、お前は私を知っているはず。


……私はモニカ。この世の神だ」

こんにちは、氷華青です!

ついに第四十五話を投稿できることになりました!


幾度となく申し上げておりますが、ここまで来れたのは、このハイテンション意味不明ストーリーにこんな所までついてきてくださった皆様のおかげです!

本当にありがとうございます!


さて、この第四十五話をもちまして、第四章が終わりになります。次は第五章、ニーヴェの崇拝する(?)神様のモニカとの物語が開幕します!


どうかあと少し、お付き合い願います。

長々と失礼致しました!

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