第四十六話『全知全能は恐るべしです』
第五章に突入です!
このまま完結に向かって突っ走ります!
でも受験勉強もあるので五十メートル走を二十秒台で走るくらいの勢いでいきます!(遅い)
俺は開いた口が塞がらず、モニカが俺の口を閉めるのがあと五秒遅れてたら顎が外れるところだった。
神様、ファインプレー。
「え待って、ほんとに神様? モニカ? ほんとに?!」
言われてみれば外見は俺が読み込んだ神話の本に出てくるモニカにそっくりだ。でもとりあえずもう一回確認。懐から本を取り出す。
挿絵に描かれたモニカの姿は……大きな黒い帽子を被り、濃紺の長い髪を尻尾のようにまとめた銀色のローブの少女。
前を見ると、大きな黒い帽子を被り、濃紺の長い髪を後ろでまとめて銀色のローブを纏う少女がいる。
「まんまやん」
「そうだろう? だから私はモニカだと言っている」
でも神様ですよ? そんな簡単に俺が出会えるものなの?
「神様、今日はどうして下界に?」
もしかして、俺を救うため……?
「少し王都の観光をな」
「なんじゃそれ! めちゃくちゃ期待したのにただのレジャー目的かよ!」
ふふっ、とモニカは笑う。
「何? 神様の助けに縋ろうとする俺が滑稽?」
「いいや、お前はやはりツッコミだけは一流だなと思っただけだ。ツッコミだけは」
「強調すんな! 天界からその評価なら下界ではどんだけ俺の活躍が見えてないのか想像するだけで寒気するわ!」
天にまで届くツッコミって、俺結構下界から見たら大袈裟にツッコんでるのね。
「あのぉ……ちなみに白魔導士としての活躍は……?」
「全く見えていない」
「やっぱりぃ……」
「いや、戦っている時は随分と長い独り言を言っているものだなと」
それを詠唱って言うんですよあなた。
「あと数々のクズムーブが見受けられるのだが」
それは見たまんまですねはい。
「くそう、何が足りねぇんだよぉぉぉ」
「あ、でも」
「でも」って逆接の助詞なんだけど、ちゃんと逆接して俺のこと褒めてくれるんだろうか。
「エリュトロン倒した時はかっこよかったぞ」
「ありがとうエリュトロン! 俺とキャッチソードしてくれて助かった! あの思い出は一生忘れない!」
「お前はあいつのことを友のように扱うのか……」
なんか引かれてる? 俺ってドラゴンとも友達になれる人なんだけど。逆に人間の友達少ないんだけど。何故だろう、悲しくなってきたな。
「ま、まあそんなところかな」
「ちょっと気持ち悪」
「あーエリュトロンって誰だっけ?! 全く知らない人だわそれ!」
危ねぇ神様に「気持ち悪い」って言われるところだった。もう意味伝わるくらいまで口に出てたけどギリセーフ。
「そんでエリュトロンって人じゃなかったな!」
「……焦りすぎてそんなことも気づかなかったのか」
結局ヤバいやつだとは思われてんな、これ。
ん、待てよ。なんか忘れてる気がするんですけど。
「…………ああああああああぁぁぁ! アズ捜さねぇとっ!!」
「……人捜しか。待て、ニーヴェルング」
急に名前を呼ばれたけどアズ捜さないといけないから。
神様に名前呼ばれたのすごく光栄だけどアズ捜さないといけないから。
ものすごーく未練あるからまだここにいたいけどアズ捜さないといけないから。
さ、捜しに行くぞー。
「長いからニーヴェでいいよ。じゃあ!」
俺は颯爽と走り出す。天界から見ててね、俺の活躍。さようなら、またどこかで。
って思った瞬間に手首掴まれた。
「待てって言ってるだろうが鼓膜破れてんのかお前は!」
「いやあああ! 天罰が下る! 僕何もしてません神様!!」
「天罰下らないし何もしてないわけでもないだろうが。まあ少し待て。お前が捜している者の名は?」
モニカはそう訊きながら目を閉じる。
「えぇっと、アズリス……苗字わからないけどとりあえず名前だけ」
「アズリス、アズリス…………ふむ、彼女は新たな家を探し終えて、落ち着いているところだな。今から彼女に会いに行くと、その落ち着いた心を乱してしまう可能性が大いにある」
すっげー、マジで神様じゃん。
「でもさ、とりあえずしばらく会えないから、別れの言葉だけでも」
「それを私に言え」
えっと、神様アホなの? アズに言わなきゃ意味ねぇじゃん。モニカ様ポンコツ疑惑出ちゃって残念。
「お前私のことをポンコツだとか思ったな? 私にその言葉を言えば、彼女の記憶にそれが留められる。お前の声、今の光景、全てだ。神なのだからそれくらい当然できる」
「全知全能モニカ様、ありがとうございます」
ポンコツとかただの一瞬も思ってないです。
「ってことでモニカ、頼む」
「もう準備はできている」
モニカはこちらに目を向ける。初めて見た彼女の瞳は、群青色だった。本の挿絵には緑色で描かれていたけれど、アズに伝えるのなら一時的にその瞳の色になってもおかしくない。
さあ、なんて言おうか。あんまりカッコつけたくないしな。
俺は一つ咳払いをして、群青色の瞳に向き直る。
「絶対生きて戻ってくるから、また一緒に楽しく過ごそうな!」
伝える人じゃない人に見られてるのめっちゃくちゃ恥ずかしいけど、とりあえずこの方法しかないなら。
映像として記憶に残るみたいなので笑顔で。って、そんなの意識しなくても笑顔になってしまう。少しでも、アズに安心してもらえるように。
「う、目に埃が」
「このタイミングで?! おい、それちゃんと伝えられてるんだろうな?!」
神様、目に入る埃くらい避けられる能力ないのかよ。
モニカは俺に背を向けるも、答える。
「大丈夫だ、彼女にはしっかり伝えた。ということで、向かう場所があるのだろう?」
「え、そうだけど……神様もついてきてくれるの?」
西の街まで来てくれるんなら、俺とイグナとリオンが出る幕もなく神様の全知全能の力でコテンパンにしてもらおう。めちゃくちゃ楽じゃん。絶対死なないし。やったー。
「面白そうだからついて行くとしようか。ただし、ニーヴェルング。お前が倒せ」
「は?! 全知全能の力使ってよ! 全知全能さんが悲しむよ?!」
「……何でもかんでも擬人化するのやめろ。
私が思うに、これはお前が超えねばならない試練だ。私に任せるべきではない」
「いーやーだぁー! 全知全能さん見ーたーいぃー!」
「ゴネるな十七歳! 朝っぱらから騒がれているレウコンの皆さんの身にもなってみろ!」
本当に申し訳ございませんでした。
「さあ、行くぞ。イグナ・マギアスとリオン・シュヴァルツには先に行けとさっき伝えた」
「しゃーないな。次の街は?」
「お前たちの予定では、鉱山村のアンテルスのはずだろう?」
「んじゃあそれで行きますか」
イグナ辺りの記憶まさぐったのかな、全知全能だし。俺の見られたくない記憶も全部知られてんのかな? そんなら恥ずかしすぎて横歩けないんだけど。
「では盟約をしよう」
「めい、やく……?」
急に難しい言葉はボクちゃんには通じません。
「盟約だ。神と旅をするのだぞ、必須のコンテンツだろうが。いいか。一つ、互いに深く干渉しない。一つ、互いの危機は救い合う。これらが守れるのなら、私はお前について行こう」
「俺が危ない時守ってくれるのはわかるけど……モニカは危ない時とかないんじゃないの? 自己防衛できるでしょ?」
「全知全能にももしものことはある。お前の実力を見込んでのことだ」
さっき俺の活躍なんて全く見てないみたいなこと言ってたよね?
「それと『全知全能』ってお前が言い出したことだからな! 私は別に曝け出すつもりなかったからな!」
「言われてみれば」
てへっ。
「で、どうする? 盟約を結ぶのか?」
こんなの一択だろ。だって身の安全保証されるんでしょ? 旅のお供もいるんでしょ? 俺の大好きな神様と二人でいられるんでしょ?
「結ぶに決まってるだろこんなもん。よろしく、モニカ」
「ああ、ニーヴェルング」
ってことで、俺たちは握手を交わした。その瞬間になんか突然魔法陣出てきてビビった。
そして俺たちは、快晴の下、少し急ぎ足でアンテルスに向かって歩き出した。
第五章開始記念のダイアローグです!
「ニーヴェルング、さっきから頭を掻いてどうしたんだ?」
「なんか知らないけどかゆいんだよね、ニャン」
「それ大人の事情的にちょっと危ないからな?!」
「そんなの知らないニャン、とりあえずこのままいくニャン」
「待ってくれ、大人の事情を無視すると完結までいかなくなる! ここまで来て全削除は話にならないぞ?!」
「大丈夫ニャン、きっと許してくれるはずニャン」
「わかった、わかったから語尾だけは何とかしてくれ!」
「そういえば語尾変わってたニャン?!」




