炎の宝珠-3
地面からはいでて来たのは巨大な芋虫。キシュの背丈2杯分ってとこだろう。そのブニョブニョしたミルク色の体の先端には小さな顔がひょっこり。口らしきものをあけ、唾液をダラダラ流すその先には鋭い牙が見える。虫には疎い2人でもわかる。この虫…自分たちを餌と勘違いしてる…
「ちょっ!相手なんかしてらんないわよ!」
「くそ!囲まれてる!」
辺りを見ると三体の芋虫が2人を囲んでいる。
ズルズルと体を動かし迫ってくる。
どろりと足元に落ちた唾液
臭い。鼻がもげそうだ。
「サマーティーあんたいける?」
「若干キツイけど大丈夫だ!」
「オッケー!一匹ずつやるわよ!」
「オーケ!!」
キシュは目の前の芋虫を勢いよく斬りつける。
動きが鈍い。全然余裕だ。
2人で一体殺した。サマーティーはやはり頼りになる。巨大な剣はナイフなんか比べ物にならないほどのダメージを与えてくれる。この調子でサッサと終わらせたいところ…そんな時だ…
他の二体が息を吹きかけてくる。咄嗟にキシュは腕で鼻を塞ぎ、後ろへ引いた。サマーティーも鼻を防いでいるが間に合っていない。もろに臭いをかいでしまったようだ。
ひどい臭い足が崩れ、咳き込むサマーティーに虫が襲いかかってくる。
「サマーティー!」
キシュは虫を切りつけ、両足で思いっきり蹴り飛ばした。大きな巨大はびくともしない。
サマーティーが咳き込みながらも剣を振るう。先ほどはかなりのダメージを与えることが出来たのに、虫は死なない。
キシュは、芋虫の吐く臭いが神経系、特に筋力系を犯す毒をもっていることに気がついた。自分には効いていないことから、毒はそんなに強くないことがわかる。
「くっそ!…力が入らねー…」
「サマーティーあんた援護に回って、毒が引くのを待って!無駄な体力消耗は意味ないわ!」
「わかった…援護は任せろ。」
キシュはとにかく向こうの攻撃を交わし、ナイフを振りかざし続けた。サマーティーはもう一方の虫からの攻撃を防いだり、残りわずかな傷薬でキシュの傷を治癒す。息が切れそうだ。限界に近づいている。指を開いたり閉じたりし、サマーティーは自身の感覚が戻っていることを確認する。
「キシュ!交代だ!」
サマーティーの一振りで虫一体が死ぬ。
サマーティーは同時に残りの虫も切りつけた。
虫がまた息を吐き出してきた。今度はサマーティーも後ろに引いて毒を吸うことはなかった。
勢いをつけ剣を振るう。虫はまだ死なない。キシュがとどめを刺し、やっと終わった。
へなへなと体がくずれるキシュ
「もうだめ…死ぬ…」
「なんだったんだ今の?」
犬が遠くでほえている。
2人はギクリとした。
逃げなければ、辺りを見回す隠れるところ…
あまり周りを見れていなかったが、あるわあるわ辺りはどうやら森。茂みがたくさんある。力を振り絞って茂みに向かう。途中旗らしきものが見えた。
「サマーティー!あれ。」
サマーティーは目を細め、キシュの指差す方をみる。焦った。
レルエナ帝国の旗。帝国直轄領の印。
「キシュ全力で走るぞ!やばい!レルエナ直轄領だ!さっきの虫も帝国の所有っぽい。」
「そうらしいわね!!なんなのこれ!!最悪!!!」
2人はとにかく前へ前へ走る。
日がすでに落ちかけている。
茂みに潜った後も走り続けた。どうやら追っての気配はない。キシュは大きな岩に腰掛け、うなだれる。
2人とも息を切らしている。限界の先をみた。
「っしかし…さっきの場所がレルエナ直轄領ということは…考えれるのは2つだな。かなり東にきた…」
遮るキシュの声
「静寂なる森に居たのよ?それはないと思う…。たしか、レルエナは西に何個か直轄領を持ってる。」
「そうだな。」
ポケットからコンパスを取り出し、位置を確認しようとした。おかしい…針が回り続けている。
「もう……いいかげんにしてよ…」
「どうした?」
サマーティーがキシュのコンパスを覗き込む。グルグル回っている。サマーティーは笑ってキシュをみた。
「どこまで運がないの?私達…
ここ確実に<彷徨い森>じゃない…」