旅路-2
「キシュそっちにまわってくれ!」
「あんたとこから一匹飛び出してるわよ!」
広がる草原。ここら周辺にこの頃住み着き旅人に襲いかかるゲスラブという狼のようなモンスター。
たった五匹の群れだが、なかなか手ごわい。
キシュとサマーティーの攻撃を素早くかわしている。今2人はその群れを一箇所によせようとしている。
「いっくよー!」
マリーの揚々とした声が聞こえる。サマーティーもキシュも群れから外れた一匹は諦め、後方に下がった。炎の火の玉は2人をかすって群へと放たれる。
灼熱の炎はゲスラブたちに大きなダメージを与え、動きを鈍らす。あたりはゲスラブ達の叫び声でみたされている。逃れた一匹のゲスラブは、そのまま逃げた。
残りの四匹はキシュとサマーティーが息の根をすぐに止めた。
「…。村でも思ったけど、本当に魔法ってえげつないわね。」
「耐性さえあればそんなダメージは受けないんだけどな。」
へなへなと腰を下ろしたキシュとサマーティの元に後方にいたマリーとコロッツィオがやってきた。
「あれ?結構疲れた?」
「まぁ…こう連戦だとね。溜まっちゃうわ。」
「俺も。」
「オッケー。今回復魔法かけるわ。」
コロッツィオは回復魔法を演唱すると、すぐさま緑の光が2人を包んだ。
「こっちはこっちで不思議だよな。ダルイのなくなんだもんなぁ…」
「これが白魔法ってもんよ。それにあたしこれでもなかなか筋がいほうなんだから。」
「コロッツィオは父さんの次にすごいもんね~。」
「へー。やるんだな。」
「まぁね。…って言っても、まだ回復魔法しか使えないんだけどね。父さんみたいに補助魔法とか、解除魔法が使えるようになりたいわ。ところで、さっき一匹逃げたけど討伐って完了したの?」
サマーティーがサーチャーを取り出し、見ている。
「大丈夫。ちゃんと完了になってる。」
これで、三件の討伐が完了した。
入ったお金は1000ディーラ。
なかなかいい感じにたまってる。
太陽は既に傾き辺りは夕焼けに包まれている。
昼はモドガノフから受けとったサンドイッチで腹を膨らましたが、夜の分はない。丁度村が近くにある。一行は小さな村ケフへと向かった。
村は広い。でも小さい。広い宿舎。広い農家がポツリポツリあるだけ。人もほとんどいない。こう小さな村だとエレクトラマネーが使えない。所持金をやりくりするしかないが、仕方がない。
宿舎では食事と風呂を済ませてすぐに眠った。キシュが目を覚ました時、横にいるはずのマリーがいない。まだ日は登っていない。廊下に出て、窓から外を見下ろすと、マリーが見えた。マリーはぼんやりとベンチに座っている。キシュはマリーの元へ向かう。どうしたのか気になる。
「マリー」
呼びかけると、マリーは驚いて声を出した。声の主がキシュだとわかると、笑って席を詰める。空いたスペースにキシュが座る。
静かな夜。誰もいない。空に光る数多の星がきれいだ。
「こんな時間にどうしたの?」
「ん~。目が覚めちゃった。キシュは?」
「私も目が覚めちゃった。何か考えごとしてたの?」
「ん~。あたしの本当のお母さんとお父さんってどういう人なのかな~?って。なんであたしをコロッツィオの村に捨てたのかな~って…」
気まずい。
キシュは何て答えればいいのかわからなかった。マリーから「捨てられた」という言葉が出てくるとは思っていなかった。楽観的で能天気な性格だと思っていた。
「…わからないことを考えても、何にもならないよ。あたしの父さんはいつもそう言ってる。」
「…そうだよね。うん!やめた!ごめんね…いきなり重いこと言っちゃって。」
「何も答えれなくてごめんなさい…。」
「キシュが謝ることじゃないよ〜!」
「…マリーは怖くないの?」
「え?」
突然の質問に驚くマリー。
「理由を知るの…怖くない?」
「怖くないよ!」
即答だった。マリーはにっこり笑っている
「だってあたし、物心ついた頃からずーーっと考えてたの。その答えがわかるんだもの。それは全然怖くないよ。」
「でも!その理由が自分にとって辛い理由だったら!…どうするの?」
「それは…もちろん辛いよ。でもね…あたしにはコロッツィオがいる…それに父さまも。だからきっと耐えれると思うんだ〜。1人じゃないもん!」
「そっか…」
「うん!それに…」
にっこりするマリーの顔が近づく。
「今はキシュにサマーティーだっているもん!」
呆気にとられるキシュ。
昨日会ったばかりなのに…呆れて笑ってしまう。
「ありがとう。マリー…」
「なんで〜ありがとう〜?あたしがありがとうだよっ!」
風が少し冷たい。2人は部屋に戻ってベッドへ潜り込んだ。真っ暗な天井を見つめるキシュ。
楽観的でニコニコ笑っているのがマリーだと思っていた。でも違う。マリーはどれだけ考え、考え抜いて旅に出ようと決意したんだろう。それに比べて自分にはそういうものがない。自分の意思…。マリーにあって自分にないもの…。
「強いな…」
ボソリと呟き眠りについた。




