魔法使い姉妹-5
最後の力を降り絞り、くちばしに火の玉を作る怪鳥。
「させるかよ!!!」
サマーティーの剣が振り下ろされ、怪鳥の首がとんだ。土に血が染み渡る。
息を切らしながらも、怪鳥の体を調べる。
サマーティーは腰を落とし、落ちた首を手にとる。
「…ん?これ…」
鳥の首元にチャームのついた輪。よくみると何やら模様が書かれている。
サマーティーはじっくり見るために首輪を外そうとした。
「うわ!!」
怪鳥の体から一気に炎が吹き出る。いそいでサマーティーは立ち上がった。あっという間に怪鳥は焼け消えてしまった。輪も炎で溶け消えていた。
-あの模様…よく見えなかったけども…確か…
見覚えのある模様。けれどもほんの一瞬すぎて確信が持てない。サマーティーは予想を胸にしまった。
「鳥が消えた…それとも消されたの?」
キシュは考え込む。
しかしどれだけ考えても答えは見つからない。
「あ。」
怯えたマリーの声が聞こえる。無理もない。村の人たちがこっちを見ている。秘密がばれたことは一目瞭然だ。
「姉さん…大丈夫だよ。」
コロッツィオはマリーを励ますように言った。マリーは頷く。
「あ…あたし。」
村の皆はマリーの声を静かに聴く
「…悪気があったとかじゃなくて。何だろう。えっと…。えっと…」
マリーの頭は言いたいことがたくさんありすぎてグチャグチャになり始めた。涙がでてくる。
どうしたらいいんだろ?だって…だって…
「マリー!」
モドガノフの声が聞こえる。モドガノフの方をみるとしっかりしなさいと笑って頷いてくれている。
勇気をもらった気がする。
「皆に嫌われるのが怖かった。仲間外れにされるのが…除け者にされるのが!!だから嘘ついてたの……ごめんなさい!!!」
涙が溢れて来て、自分でも何を言ってるのかわからなくなっている。静かな空気を切るように少女の声が響いた。
「マリー様は!!悪くないです!!悪いのは…悪いのは!!!」
少女も涙が溢れて来て言葉を発することができない。周りの村人達もつられて涙がでている。
「…みんな…」
モドガノフは少女の頭を撫で、優しく村の者達を見渡す。
「皆…今から!今からゆっくり変わればいい…」
優しく、力強い言葉は心の束縛を溶かす。
そしてゆっくりとモドが乗るの足はマリーの元へと歩み寄る。
「?!」
「今まで自分を偽らせて、すまなかったね。」
父の大きな背中がみえる。マリーは深々と頭を下げる父を見て、今まで抱えていた孤独と罪悪感から解放された気持ちになれた。
「と…とうさ〜ん!!」
マリーは崩れ落ちて泣いた。
鼻水が出ていることなんてどうでもいい。声が出る限りワンワン泣いた。コロッツィオは泣きながら、マリーを起こして抱き合った。
「なんかいい方向に転がった見たいね。」
「そうだな。」
本当の自分を受け入れられているマリーを羨ましく思っている。なぜだかわからないけどキシュは思った。
木陰からその様子を見る影がひとつ。誰もそちらには気がついていない。
「これは驚いた。確かに血は受け継がれている…。」
影は呪文を演唱し、魔法を唱えるとその場から消えてしまった。
太陽が空の高い所を目指して進んでいる。キシュ達はモドガノフが用意してくれたバケットを頬張る。戦いの後の食事は格別だ。
「キシュさん。サマーティーさん。」
モドガノフがマリーを連れて深妙な表情でやってきた。
「どうしたんですか?」
「お二方に頼みたいことがあるんです。」
「??」
「父さん。あたしから言うね。」
「…わかりました。」
「あたしね、本当のお父さんとお母さんを探そうと思うの!途方もないのわかってるんだけどね!どうにかなると思うんだ〜!それでね、2人の旅に便乗しちゃいたいな~って思って。」
「えぇ?!」
突然の申し出にキシュとサマーティーが同時に叫ぶ。キシュはめんどくさそうな表情で。サマーティーは笑って。
「ねっ!ねっ!いいでしょ??邪魔しないから~お願〜い!!」
「マリー!あなたねぇ…」
「いいんじゃない?心強いし」
「ちょっと!あんた勝手に!!」
ギッとサマーティーを睨みつける。サマーティーは少し笑う。その顔が気に食わない。
「当てもなく旅するなんて…」
「当てならなくもないんです。」
モドガノフがキシュの言葉を遮り、一枚の大きなレースの布を差し出す。
「きっとこの子は、血統のいい魔導の家の子のはずです。私が言うのもあれですが、魔法のセンスがいいですし、この子を包んでいた布もとても高価そうでした。」
「それじゃ、まず始めはザルアの貴族辺りを探せばいいってことだな!」
「…ちょっ。それって、ザルアの国に行くってことじゃない。あそこは私達の目的地よりも北東にあるし!何より領地に入ることすら難しいのよ!!私達だって暇じゃないんだから、そこまではついていけないわよ。」
「わかってるよ〜。あたし、外の世界にすらでたことないからはじめっから一人旅はやなの~。」
「それじゃマリーは途中で1人で旅する覚悟できてるのか?」
「もちろん!!」
キシュはモドガノフに救いを求めるが、申し訳なさそうな表情がかえってくる。
「危険なことはわかってるんです。しかし、この子の決意なんですよ。ご迷惑おかけしますが…どうかお願いします。」
この調子だときっと話しは平行線だ。キシュの味方はここにはだれもいないようだし。ため息がこぼれる。
「わかった…わかったよ!」
こうして、キシュとサマーティー。そして、マリーの旅がはじまった。
コロッツィオの姿が見えない。モドガノフに尋ねると、旅に同行することを反対されて、部屋ですねているとのことだ。
旅の支度をし、森の抜け道から3人は歩き出した。マリーは少し立ち止まっている。名残惜しいんだろう。少しだけそっとしておこうとサマーティーがいった。
「お〜い!お〜〜い!!」
キシュとサマーティーはギョっとした。マリーが手を降っている先には、こっちに向かって走るコロッツィオが。
「ちょっと!コロッツィオあなた!なんで?!」
「いいじゃない。ねーさん1人で行かせるわけには行かないの!ねーさんにはあたしがついてないとダメなの~!ね~!」
「ね~!」
「ね~!じゃない!!そんな楽観的なことじゃないんだぞ!危険すぎる!ザルアのソリティアに対する態度がどうなってるのかもわからないのに!」
「わかってる!死ぬことも覚悟してる。あたしは次期長になるものとして、外の世界を知る必要があるのよ。」
「けど…モドガノフさんは…。」
「父さんも納得したわ。だから文句ないでしょ?」
嘘だ!2人の脳裏には同じ言葉。
「それに…あたしを連れて行った方が特よ?」
ニヤリと微笑むコロッツィオ。
そりゃそうだ。なんといっても傷を治癒してくれる。どれだけお金が浮くことか…。
キシュの心が揺らめく。サマーティーはダメだ!と強く反対。
「ね。あたしを連れてきなさいよ。」
「ね~ね~。あたしからもお願い!ザルアの国までだからさぁ。ねっ。」
マリーの言葉のおかげでコロッツィオも一緒に旅をすることになった。




