流れる風に乗って−3
「私からの話はこれで終わりだ。」
チェズはそういうと少し寂しげな表情。
「君たちと少し話をしたいところだけど、この後も別件があるのでこれで失礼するよ。…申し訳ないね。」
フウゼツとゆっくり話ができないことは残念だが、仕方がなかった。
チェズ、イザナ、グビドは部屋を後にした。
旅してきた仲間達が残り、張り詰めた空気は少し和らぐ。
「ところで、ジョージ大丈夫??」
「ん?」
「ん?って…ビッツのこともだけどなんか傷だらけだよ?」
「あぁ…これか。処置してもらってるし問題ない。ビッツの件はかなりキツイが安心してる。」
「安心??」
「あぁ。ビッツが今レルエナに居ることもわかったし、動き回ってるらしい…それに…」
「それに?」
ジョージの真っ直ぐな瞳がキシュを捕らえ、優しく微笑む。普段見ることのない表情に動揺は隠せない。
「悪いことだけじゃなかった…お前がこうやって元気になった知らせが何より救いだ。」
「迷惑ばっかりかけちゃったよね…ごめん」
飾り気のない言葉。誰もがジョージの気持ちに気付くのに、当の本人とキシュはそんなつもりはないようで笑い合っている。
側から見ているサマーティーとコロッツィオは2人に聞こえないほどの声で互いに目を合わさず語り合う。
「あれって…告白だと思ったんだけど…」
「だよな…。」
「いいの?サマーティー??キシュとられちゃうよ?」
すぐに帰ってきそうな返答がないので、不思議に思って見上げてみると、寂しげな表情で2人を見つめるサマーティーがいた。コロッツィオはこんな大人しくしているサマーティーを出会ってから初めて見たような気がした。
「…誰を選ぶかはキシュの自由だから…」
予想外な答え。
「大人だねー。」
「俺コロッツィオよりもお兄さんだし。」
「私より年下かと思ってた。」
「なんでやねん。」
いつも通りのサマーティーにコロッツィオも安心して笑みが溢れる。
「みんなありがとう…」
キシュの声が響く。
「みんなに迷惑かけるのに…その反面…すごく嬉しいんだ。」
そう。嬉しくてたまらない。
弱い自分を受け入れてくれるのが…弱さは嫌われると思ってた…。
けどすべての弱さが悪いんじゃないんだって今は思う。完璧なんて無理だということを。
「ここにいてない姉さんも同じ気持ちだよ。」
「そうだな。それにミンキュもな。」
「ミンキュも?」
マリーは長く旅をしてきたからわかるけども、まさか敵だったミンキュの名前が出てくるとは思わなかった。
「あぁ。絶対に戻ってくるって言っていた。」
「けど本当に大丈夫なのか?ミンキュとミリョウさんだけで。」
サマーティーの言葉はキシュの頭にも浮かんでいた。たった2人で敵陣真っ只中なんて危険すぎる。
「多勢で動がない方がいい時もあるからな…。今はミンキュとドクターを信じるしかない。」
「あたしたちができるのはそれくらいだから…。」
コロッツィオの悲しげな表情。
「そうだね…。2人を信じよう!!」
きっとミンキュなら…大丈夫。
いつもなら、助けなければいけない気持ちで不安になるけれども今は違った。
彼女ならなんとかできると信じていた。
今自分たちができることを。
目の前の壁を越えていくことこそが、皆のためであることを理解していた。
明日からはキシュを除いて特訓が開始する。
今の自分を超えるため。
皆の力になるため。
強くならなければいけなかった。
「それじゃ俺らは部屋に戻っとくな。」
「キシュはとにかく安静よ!」
みんなが部屋を後にして、また1人となった。
慌ただしい時間は終わりまた、部屋は静かになった。
コロッツィオの言う通り、今は静かに過ごすことにしなければ…。




