炎の宝珠-5
得体のしれない者を復活させた恐れをシュアトルは抱いている。横にいる女は一体何者なんだ?これは同じ生き物なんだろうか?ただただ微笑み焦点の定まらない眼差し。一緒にいるだけで悪寒が走る。廊下を歩き、礼拝堂の近くにさしかかろうとした時、扉が開きシュアトルの兄ティアトルが出てきた。シュアトルとは正反対の容姿。ミルクティー色の髪にゆるい天然パーマ。その美しい緑の垂れた眼差しはどの女性も虜にしてしまうだろう。美しく華麗な父上ご自慢のレルエナ帝国皇太子。
「兄上…。」
「シュアトルそれにシャザンヌじゃないか。ちょうどいいシャザンヌこっちへ来い。城内を案内しよう」
シャザンヌは差し出された手に応える。
「シャザンヌはこれから入隊手続きがありま…」
「そんなものお前1人でできるだろう。」
確かにできはするが…あまり兄と2人きりにはしたくない…けれどそんなこと言えるはずもない。
「わかりました…」
シュアトルの返事はティアトルを微笑ませる。
「行こう。」
シャザンヌはティアトルと共に長い廊下を歩いて行く。兄が心配で仕方がない。どうか…どうか何も起こらないでくれ。心から願う。
自分の部屋へ戻る。高い天井に開放的な窓。柔らかな夕日。上着を脱ぎ簡素な格好になる。これが一番おちつく。窓の外を見ると、城下街が小さいながらも見える。点々と灯りが灯り始めている。シュアトルは心からこの風景をこの国を愛している。
扉を叩く音が響く。
「失礼します。」
「はいれ。」
入って来たのは水無月だ。
シュアトルの前で立ち止まり、一礼しサンバナでの仕事の報告を端的にする。
「そうか…。まぁ今となっては不要かもしれないが、念の為誰かは調べよう。その手の調査はククナが得意だ。ルルとフウはこの件から外すがいいか?」
「シュアトル様がそういうなら、特に私は…。」
「わかった。ではさがっていいぞ。」
「あ…あの。」
「どうした?」
普段は無駄なことは言わない水無月にしては珍しい。
「サンバナので感知された魔力なんですが…あの…似ていました…」
「似ていた?何にだ??」
「あの…シャザンヌに…」
「…シャザンヌ…と?」
「はい…」
どういうことだ?似た魔力とは…他国…いや。あの厄介な狂信者共がもしその力を手に入れたらどうする?対処はとれるのか?…厄介だ。得体のしれない女に聞いて見るか?あの女のことは何もわからない。
シュアトルは水無月に報告してくれたことを感謝し下げた。
溜息をつき、また窮屈な服を着込み、部屋を後にする。
ティアトルとシャザンヌを捜す。
きっと兄上の事だ中庭におられる。
父である国王と兄と自分の部屋の中間地点にある温室はティアトルにとって大切な場所であることは自分がよく知っていた。シュアトルの読み通り、2人は美しい花々が咲き乱れる庭にいた。
「どうした?」
「シャザンヌに尋ねたいことがあるのです。少しお借りしてもよろしいですか?」
「私は邪魔なのか?」
「どうでも良いような話です。兄上を退屈させてしまう。」
「私に構うな。」
「…わかりました。」
ティアトルが少し不機嫌になっているのはすぐわかる。シュアトルは兄の心境をよく理解しているので、キツく対応することができない。シュアトルはシャザンヌの方に目をやる。微笑む瞳の奥は生気を感じられない。死んだ魚の目だ。
「貴方を見つけた場所から少し離れた場所で、貴方には及びませんが強い魔力を感知したのです。先程部下きらその力が貴方と…」
シュアトルは喋るのを戸惑った。さっきまで死んだような目をしていたシャザンヌの目は大きく見開かれ、ギラギラとしている。
「それで!その石は手に入れれたのですか?!」
「石?貴方は何か知ってるのですか?」
シャザンヌが声を出して笑う。
横にいるティアトルすら呆気にとられている。
「あれは私の力を分けたもの。あの石が手に入って始めて私の力は発揮できるのですよ。」
最悪だ。
何がなんでもその石を手に入れなくてはいけないではないか…。
シャザンヌの瞳 はシュアトルに大きな期待をおくっている。それは今までにない重さだ。




