森と水とヘドロボス
森を探索していると、再び汚れた川を見つける。
「あれは…ワニか?」
汚れた川の近くに、ワニが二匹いた…黒くヘドロのような物を纏っていて、見るからに危険そうだ。
「ワニ退治が先ね、ここは私に任せて」
リオアさんが前に出る、両手には投げナイフが握られている。
「ブレードピアシングスロー!」
リオアは跳躍して、投げナイフを投げる、魔力を纏った2本の投げナイフは、無防備な1体のワニの頭と胴体に突き刺さる。
「マジックボム!」
投げナイフが爆発して、投げナイフが刺さったワニの全てを赤いエフェクトにして、吹き飛ばす!
「クリティカルレイ!」
空中で細い剣を取り出し、まだ無傷のワニ向かって空を蹴るように…いや、空を蹴り、凄い勢いで落下してワニの脳天を貫き、一撃で仕留めた!
「早いです!」
「よくひらひらがついた水着で動けるな…」
リオアさんの戦い方はスマートで華やかだ、多分アイドルとして、人に見せる事を前提とした戦い方なのだろう。
「どう、見惚れた?」
「まあ、なんとか目で追えた…というか臭い…」
「アイドルになに言ってるの!?おに、て…ヘドロがドロップしてる!?捨てなきゃ!」
泣きそうな顔をしながら、ヘドロを捨てるリオアさん、誰だって悪臭は纏いたくないわな…アイドルだとなおさらだな…。
「あ、川が綺麗になりました!」
「え?泥掃除でしなくても綺麗になるのか?」
フェルの言葉で、川が綺麗になってるのに気付く…明らかに川を綺麗にしていく事に、何かしらありそうだ…。
「うう、このヘドロアイテム、レンナの言葉が正しいなら、使い方次第じゃ絶対強アイテムなんだろうけども、悪臭が全てをマイナスに持っていくアイテムね…私には絶対扱えないよ」
ヘドロを捨てて、一息つくリオアさん。
「しかしこれ霊薬を貰うためにウィンディーネと交渉する感じじゃなくて、ウィンディーネを助けて、霊薬をもらうクエストなのかな?もう少し森を探してみましょう」
「ああ、ヘドロに気をつけていこう」
リオアさんの言葉に頷き、再び水辺を探して歩き始める、道中小さな狼やコウモリみたいなモンスターが襲いかかってきたが、なんだか動きが鈍かったので、フルスイングの一撃で楽に倒せることが出来た。
「レンナさん、狼から微かにヘドロの匂いがしました…」
「そうなのか、フェル?なら狼が来た方向に、水辺があるかもしれない…弱かったのはヘドロを口にして、病気になってたのか?」
「これ場合によっては、ウィンディーネが病気になってる可能性があるわね…事によっては泥を纏った敵のボス戦になるかも…?気をつけて行きましょう」
フェルとリオアさんと会話しつつ、自分達は先に進むと茶色い泉のような所にたどり着いた。
「レンナさん…泉の底に何かが居ます、反応は2つです!」
「…ウィンディーネではなさそうだな?」
「範囲指定…バーチャルタフネス!ラックアップ!アナライズ!」
フェルの探知によって身を構える自分とリオアさん…リオアさんが補助魔法で支援してくれてる。
自分達の声に反応するかのように、泉から茶色い腕が現れる…。
指が3つという異質な腕だ、辺りには悪臭が満ちてきた、腕はズルズルと泉から這い出てきた。
「ボスの名前はヘドロアーム!弱点は氷!耐性は火!防御が高いから、魔法が使えるなら魔法で攻めて!先手貰うわよ!マジックショット!」
リオアさんがヘドロアームの情報を口にしてから、魔法で攻撃し始める、魔力の塊がヘドロアームの体を削るが、ヘドロアームは全く怯む気配はない。
「フェル!氷のイメージを!」
「わかりました!パワーアップ、スピードアップ!エレメントブースト!」
「「氷の力を!!」」
フィルと一緒に氷の力をイメージして叫ぶと、アースキー全体に氷が纏わり付く。
「喰らえ!」
ドス!とアースキーの先端がヘドロアームに刺さり、ヘドロアームの一部を凍らせる…が、ヘドロアームが暴れるように体を動かして、アースキーを突き立ててる自分を吹き飛ばし、近くの木に叩きつける!
「ぐぅ…手応えが感じない敵だな!まさにドロだ…いや、ヘドロを鎧のように纏ってるのか?」
「シャドウダンス!」
「リジェネレート!」
リオアさんが召喚した、剣を持った黒い影が気を引いてくれてる間に、フェルが回復してくれる、HPはそんなに減ってない…リオアさんの支援魔法の影響か、ヘドロアームの攻撃力が低いのか…。
「エアロバースト!マジックショット!フェルちゃん、さっき反応が2つあると言ってたけど、泉の方にまだ反応ある!?」
「いえ、腕の方に反応が2つあります!」
「反応が2つ?分裂でもするのか?」
フェルが気になる事を言ってるが、リオアさんが召喚した黒い影がヘドロアームの攻撃で消滅したので、引き継ぐように氷を纏ったアースキーを振るい、再びヘドロアームに刺突攻撃を繰り出す!
さらに凍ったヘドロを掘り出すように振るい、ヘドロアームからヘドロを剥がそうと試みる。
「わかりません!でも少なくとも2つの反応が別物なのは確かです!あ!」
「え」
フェルの言葉と同時に茶色と黒いヘドロアームの中に綺麗な水色を確認した。