海辺の歌を避けて森の中へ
「なあ、また歌が聞こえるんだが…」
「またですか、レンナさん?」
探索を始めて20分、島の外周と思われる場所を探索し始めて、自分は定期的に歌声を聞いていた…。
厄介なのは、リオアさんとフェルには聞こえてないことだ、フェルが必死に聞き耳を立てているが、聞こえません…と言葉を漏らした。
因みに歌声を辿ったらまた魚人に襲われたので、今は無視している、海にいる歌ってる存在の姿を確認したかったが、槍をもった魚人との戦闘で海に潜るどころじゃなかったし、槍の魚人を全滅させたら逃げられてしまうのだ…。
リオアさんが投げナイフで牽制は出来ても倒せず、リオアさんとあった戦闘でも投げナイフに驚いて、逃げたらしい。
「うーん、なにが条件なんだろう?性別?それともなにか別の条件があるのかな?多分敵はセイレーンだと思うんだけど…」
考え込むリオアさん、自分はリオアさんと会う前から歌声が聞こえているので、クエストとは関係なさそうだし、少なくとも水が清らかな所に繋がることはないのかな?
「あ、他のパーティーがいる、ちょっと情報収集してくるね」
「え、あ、はい…え、大丈夫なの!?」
他のパーティーを組んだプレイヤー達を見つけたリオアさんが素早く他のプレイヤーに話しかけていく。
ファンタジーフリーダムを宣伝している人に話しかけられたらびっくりするんじゃ!?
だが他のプレイヤーは最初話しかけられて、多少驚いた感じはしていたが、その後は特に騒ぐ事なく、リオアさんと会話をしてからリオアさんと離れていった。
「おーい、歌声が聞こえる条件は海辺にいる男性だけでいいぽい!」
「その条件がわかったのはいいけど、良く騒がれなかったね?」
「うん?ああ、私はフレンドとパーティーメンバー以外には別の姿に見えるようにする変装スキルがあるから、声を変えればリオアであることを隠すのは簡単なのよ」
なにそれスパイみたいだ…。
「うーん、この確認したくなるような歌声をなんとかしたいけど、聞かなくなるようにするには歌ってるやつを直接叩くか、海辺以外の所に行くかだよな…?」
「レンナさん大丈夫ですか?」
「ああ、ダメージはないが、ただ少し探索に集中しにくくなるだけだ」
フェルの心配する声に答えつつ、辺りを見渡す、この周辺だと、海辺の他に森みたいな所に行けそうではあるが…森て虫が出る確率高いから行きたくないんだよな…。
「一度森に行きましょう、この歌声は男性全員に効果出て大掛かりだし、大人数でやるレイド系のボスかもしれない、それならイベントクエストのウィンディーネと関係ない可能性が高い、それなら未知数の森に行ったほうがいいかもね」
「…そうだな、そうするか…」
「また大きな虫が出ませんように…」
虫が嫌だが、森にウィンディーネがいる最も水が清らかな所があるかもしれない。
そんな考えをもって、自分達は海辺から森の中に入っていった…。
「お?歌声がぶつんと聞こえなくなった」
「海辺にいると男性だけに聞こえる誘う歌声…アイドルとして一度聞いて見たかったわ、デバフを振りまく声は聞こえるけど、あれはアイドルとしてなにも役に立たないわ…」
「少なくとも昨日のライブと比べたら、数段劣るから安心してくれ」
「へーアイドルとして嬉しいこと言ってくれるね!ああ、なんなら私が全力で歌って海辺の歌声を打ち消せばよかったかな?」
ウキウキとした感情を出しながら前に進むリオアさん、それやったら良くも悪くも人を集めそうだから勘弁してほしいものだ。
「レンナさん、そこに川があります!」
「え、ああ…川か…水質調査とか出来ればウィンディーネへの手掛かりになるんだけどな、明らかに汚れてるな…」
フェルの指差す方向に川があり、それは茶色や黒く濁っていた。
「うげ、これじゃあウィンディーネはいる訳ないわね、別の所を探しましょ…」
「まって、なんかある」
別の所に行こうとするリオアさんを止めて、アースキーを取り出す、川の中にキラキラと光る地面…採掘ポイントを見つけたのだ。
汚い川には入りたくはないが、なにがあるか気になった自分は川の中に入る、深さは膝くらいなのでこけない限りは溺れないだろう。
「うぇー…ヌルヌルして足にぬるぬるまとわりついて気持ち悪い…フェル、万が一転けそうになったら胸ポケットから脱出してくれ…」
「だ、大丈夫です、私がサポートします!スピードアップ!」
ヌルヌルに足を取られていると、フェルがスピードアップの魔法を使ってくれるが、敏捷が上がってもヌルヌルの気持ち悪さでスピードが上がった実感がわかなかった。
「ここだ!」
なんとか光る地面にたどり着き、地面にアースキーを突き刺して掘り返す。
『レンナは不純なヘドロの塊を手に入れた』
……うん、臭いけど、取り敢えずまだ掘れるから掘ってみよう。
『レンナは不純なヘドロの塊を手に入れた』
『レンナは不純なヘドロの塊を手に入れた』
掘れるだけ掘ったがヘドロしか出ねぇ!?しかも…
「くさい!」
「あ、レンナ!川が少し綺麗になったよ!」
ヘドロの臭いに苦しんでたら、リオアの言葉で川が多少綺麗になっているのを確認できた。
取り敢えず、川の中からリオアさんの所に戻る。
入手したヘドロを鑑定眼で調べる。
「うげ、このヘドロ持ってるだけで悪臭放つようになるの!?敵に投げて当てると様々な状態異常を非常に高い確率で引き起こせるかもしれない…こんなもん捨てるわ!」
どんなに強力なアイテムでも、悪臭に悩まされるなんてゴメンだよ!
持ち物のシステム画面でヘドロを捨てる…ヘドロは地面に落ちることなく消滅する、ないと思うがヘドロの隣にあった、回復薬×64個に臭いが移ってないことを祈る。
「もしかして、森にある川を探して、綺麗にしていけばウィンディーネに会える?」
「え、そうか?むしろ泥掃除で体や水着が汚れてるからウィンディーネに家に来るな!!と殺意向けられそうなんだが…」
リオアの仮説を否定したくなる、最初は興味で汚い川に入ったが、出来れば何度もやりたくはない…汚れるのはいいんだけど、あの汚れた水のぬるぬるが苦手だ。
「あの、レンナさん、私が知ってるウィンディーネは水の親和性が高く、遠くの水の状態まで把握出来る力を持っています…もしかしたら今の状態も把握してるかもしれません、沢山綺麗にしたら、ウィンディーネにあった時に川掃除のお礼でウィンディーネの霊薬がもらえるかもしれません」
「そうなのかフェル…?うーん、なら汚れを見つけ次第除去していくか…」
少なくとも今はウィンディーネの居所は分からない…なら後々影響があるかもしれない川を綺麗にしよう、そう方針が決まり、再び探索が始まった。