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第三十七話:彼の名はハンサム

今回は話が全くと言っていいほど進みません。主にハンサムのせい。

扉の外に立つ彼は、まるで絵本の中から出てきた王子様のような美しさを放っていた。心なしか、彼の後ろにバラが舞っているようにも見える。

「・・なあ、あのイケメンさんの後ろ、バラ舞っとらん?」

なんと、舞も私と同じようにバラが見えていたのか!・・などと驚いていたが、よくよく見てみると本当にバラが舞っていた。なんと小鳥たちが彼の後ろでバラの花びらを舞い踊らせていたのだ。そんな舞い散るバラの花びらを咥え、ふっ・・とカッコよく息を吐くそのイケメン。

あ・・この人多分アリスさんと同じで見た目で判断しちゃいけないタイプの変人だ。

その認識を裏付けるかのごとく、“ご隠居”は客に対するとは思えないほど淡白な対応で彼を迎えた。

「バラの花びらは散らかるからもう止めぬか。お主の頭は常夏のバカンスか?」

しかし、そんな“ご隠居”の冷めた視線ももろともせず、彼は斜め立ちで美しいポーズを決めつつこう返した。

「もちろんさ!ハンサムにとっては毎日がスペシャルDAY!金曜日はフライDAYだからね☆」

「なんで金曜日だけピックアップするねん!そこは月曜日とかにしとけや!」

私の隣で思わず突っ込んでしまう舞。彼はそんな舞を目ざとく見つけ、バチン☆とウインクを送ってこう言ってきた。

「おやおや?随分とやんちゃなお姫様だね。月曜日はイエスタDAY!に決まってるじゃないか!だって、今日は火曜日だからね!」

「・・なあ、カナウちゃん、うちちょっとアイツの顔面思いっきり殴ってきてもええか?」

余りにもウザいハンサム男の返しに、一瞬で怒りの沸点に達したらしい舞。私はもちろんゴーサインを出して彼女を送り出した。だが、そんな私たちを、“ご隠居”がため息をつきながら止めた。

「止めておくのじゃ。こやつにいちいち腹を立てておってはキリがない。怒るだけ時間の無駄じゃ。」

私達を止めたとはいえ、“ご隠居”の言いぐさもなかなか酷いものである。恐らく、“ご隠居”も何度も彼にイライラさせられてきたのであろう。

「あれあれ~?何皆して怖い顔してるのさ?ほら、大きく息を吸って~、深呼吸深呼吸☆」

「・・『百火繚乱』。」

先ほどの私たちの忠告は何だったのか、“ご隠居”は一言そう呟くとハンサム男を炎で覆った。

「よっしゃー!流石“ご隠居”ちゃんや!痺れるで!」

全力のガッツポーズを披露する舞。私も、流石にガッツポーズまではしないが一言だけ言わせてもらえば、ざまぁwwといったところか。しかし、そのハンサム男は全身を炎に包まれているにも関わらず、相変わらずムカつく決めポーズをとり続けていた。

「火だるまになってもそれすら様になってしまう・・これがハンサムな男の宿命。」

仕舞いにはそんなふざけたことまで言ってのける始末。一体どういうことかと目を丸くする私たちの疑問に、先ほどよりも大きなため息と共に答えてくれたのは、彼に術をかけた張本人である“ご隠居”であった。

「はあ・・実は、こいつには儂の幻術は効かぬのじゃ。どうも、極度のプラス思考のせいで幻術さえ自分のハンサムオーラが生み出したモノだと勘違いしてしまうらしい。それに、こいつもこう見えて妖怪の端くれじゃから耐久性だけは無駄に高い故、軽く殴る程度じゃあまり効かぬのも厄介じゃな。」

・・なんじゃそら!?まさか“ご隠居”の天敵とも呼べる存在がこんな馬鹿っぽいハンサム野郎だったとは・・。だが、その後“ご隠居”がぼそっと「・・今度一編本気で殺してみるかの。」と囁いたのは聞かなかったことにしよう。

「あ、そういえば後ろの姫たちには自己紹介がまだだったかな?俺の名前はハンサム。通称ハンサム。自他ともに認めるハンサム。豆腐小僧の中で随一のハンサム。この店には食材を届けに半年に一回やってくる流離いのハンサム。覚えてくれたかな☆」

「ああ!そんだけ飽きるほどハンサムハンサム言われたら赤ん坊だって覚えるわこのナルシスト野郎!」

「ちなみに、こやつの本名は次郎吉じゃ。」

あんだけハンサム連呼しといて本名違うのかよ!てか、豆腐小僧で次郎吉って結構だせえじゃねえか!

しかし、ハンサム・・もとい、次郎吉は全く動じる様子を見せずに笑顔でこう言った。

「確かに、俺の本名は次郎吉だ・・。でも、俺にはハンサムって名前がふさわしいだろ?だってハンサムだもの。」

『だって人間だもの。』みたいに言うんじゃねえよ!どんな理屈だよそれ!

「じゃあ、食材は届けたんでハンサムはそろそろ風と共に去るぜ☆アディオス・アディダス・ニューバランス☆」

「おい!最後の方靴メーカーになっとるやないか!って、ツッコんどるうちに帰ってしもうた・・、なんやったんやアイツ・・。」

「儂にも分からぬ。考えるだけ人生の無駄じゃ。」

私も、“ご隠居”の意見に激しく同意したい。

こうして、嵐のようにやってきたハンサムは、私たちに食材と無駄なストレスを置いて来た時と同じように嵐の如く去っていったのだった。

次回、新キャラと共に新たな依頼シリーズに突入します!

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