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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第二部  作者: マスター


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第四十八話「採掘が、また動いた。そして、第二部が終わる」

四十八話目です。第二部、最終話です。


問題が再び動き始めます。でも、今回は、一人で向かうのではありません。つながりが、力になる話です。


そして、第二部を通じて積み重ねてきたものが、ここで少し形になります。


では、どうぞ。

ベルクから手紙が来てから、三日後だった。


朝、ガルが来た。


「凪様、ゴルさんから、ラグル族が来ています」


手紙ではなかった。


ラグル族が直接来ていた。


「急ぎの知らせですね」


「そのようです」


集落の外に出た。


連絡役の若い個体が、待っていた。


耳の先に傷がある、いつもの子だった。


「どうしましたか」


ラグル族は言葉を話さなかったが、南の方向を向いて、低く鳴いた。


「南で、何かありましたか」


また低く鳴いた。


急ぎの意味だと思った。


「ゴルさんのところに、行く必要がありますか」


ラグル族が、その場で動いた。


ついてこい、という動きだった。


「分かりました」



集落に戻って、支度をした。


ルナが来た。


「どこに行くの」


「山に行きます」


「今日?」


「今日か、明日かは、ゴルさんのところで話を聞いてから決めます。ラグル族が直接来たということは、急いでいます」


ルナが、少し固まった。


「また行くんだね」と言った。


「そうです」


「言ってから行く、って約束してたから、言ってくれた」


「そうです」


ルナが、石を取り出した。


池の底の石だった。


「これ、持っていって」


「帰ってくる証拠の石ですね」


「持ってて。帰ってきたら返して」


受け取った。


「帰ってきます」


「ちゃんと言えた」とルナは言った。「ゴルの山、今度は私も一緒に行ってもいい?」


「今回は、急ぎの話があります。落ち着いたら、一緒に行きましょう」


「約束」


「します」


ルナが頷いた。


「早く帰ってきて」


「帰ります」


ガルが見送りに来た。


「気をつけてください」


「気をつけます。集落のことを、お願いします」


「任せてください」


シロが、先頭に立った。


ラグル族の若い個体が、横についた。


「行きましょう」



山への道を、急いだ。


ラグル族のペースに合わせると、普段より速かった。


でも、ついていけた。


「速いですね」とシロに言った。


シロが、まだ余裕のある顔をしていた。


「私の方が、少し息が上がっています」


シロが振り返った。


気にするな、という顔だった。


「分かりました、続きます」



山の入口に差し掛かると、ゴルが待っていた。


珍しかった。


いつもは集落で待っていたが、今日は入口まで来ていた。


「来たか」とゴルは言った。


「来ました。何がありましたか」


「南から、作業員が来た。十人以上いる。道具を持っている。採掘の道具だ」


「新しいルートで、採掘を始めようとしているんですね」


「そうだ。ダロの名前を出したが、認可が出たと言っている」


「認可が出た」


「正式な書類を持っていた。アルドの鉱山局の印が押されていた」


「ダロさんが、抑えきれなかったんですね」


「そうらしい。別のルートなら問題ない、という判断らしい。ただ、私が見た限り、その場所は泉の水脈に近い」


「近い」


「水脈を傷つける可能性がある」とゴルは言った。静かに、でも重く言った。


「泉に水が戻り始めているのに」


「そうだ。せっかく戻り始めたのに、また止まるかもしれない」


私は、少し考えた。


「その場所を、見てもいいですか」


「来い」



南の斜面に向かった。


ゴルと、護衛二人と、シロと私。


斜面に着くと、作業員たちがいた。


十二人だった。


道具を持ってはいたが、まだ作業は始めていなかった。


責任者らしい男が、私たちを見た。


「お前たちは、何者だ」


「凪といいます。転生者で、この山の水脈を調べた者です」


「転生者か。それが、何の用だ」


「この場所で採掘を始める前に、話させてください」


「話すことはない。認可を持っている」


「認可の書類を、見せてもらえますか」


男が、少し考えた。


書類を出した。


受け取って、読んだ。


確かに、アルドの鉱山局の印があった。


でも、農務局の印がなかった。


「農務局の確認が、ありません」


「鉱山局の認可で十分だ」


「以前、この山の採掘が問題になったとき、農務局と鉱山局が合同で調査しました。その取り決めで、この区域での採掘は農務局の確認も必要なはずです」


「そんな取り決めは、知らない」


「書類にある日付を見てください。その取り決めより、この認可の方が、発行日が早いです。古い認可で動こうとしているかもしれないです」


男が、書類を見た。


日付を見た。


少し、表情が変わった。


「確認する」と男は言った。「作業は、今日は止める」


「ありがとうございます」


「ただし、確認が取れたら、作業を始める」


「それは、構いません」


男が、部下に向かって何か言った。


作業員たちが、道具を下ろした。



ゴルが、私を見た。


「書類の話が、うまく使えたな」


「ベルクさんが教えてくれていたことが、役に立ちました。農務局と鉱山局の取り決めは、セルドの話を動かしたときに、似たようなことがあったので」


「一つの経験が、別の場所で使えた」


「そうです」


「魔王の力を使わなかった」


「今回は、必要なかったです。書類と言葉で、動きました」


ゴルが、少し黙った。


「お前、変わってきたな」


「そうですか」


「最初に会ったとき、何かあれば力で直そうとしていた気がする。今は、力を使う前に、他の方法を考えている」


「力を使いすぎると、疲れます。それだけじゃなくて、力では直せないことがあると、分かってきました」


「何が直せない」


「人間の組織が動くかどうか、は、力では直せないです。書類と言葉と、つながりで動かす必要があります」


「書類と言葉とつながり」


「ベルクさんが書類を動かして、ダロさんが内側から抑えて、エイラさんが農務局を動かして。私一人の力ではなく、それぞれの人が、それぞれの場所で動いていた」


「だから、今日、書類の話ができた」


「そうです。私がセルドで学んで、ベルクさんから教わって、ダロさんが動いてくれていたから、今日の言葉が出てきました」


ゴルが、また静かに聞いていた。


「レナたちに、見せてやりたかった」とゴルは言った。


「レナさんたちは、東側の作業を続けているんですか」


「続けている。今日も、朝から出ていた。お前が来ると、伝えたが、作業が終わってから来ると言っていた」


「そうですか」


「あいつは、来い、と言っても来ない。やることがあると言ったら、先にやる」


「それは、レナさんらしいですね」


「ただ、今日は早く終わるようにする、とも言っていた」


「来てくれるかもしれないですね」


「来る。あいつは来ると言ったことは、やる」



夕方、レナが来た。


汗をかいていた。


急いで来たらしかった。


「ナギ、来たじゃないか」


「来ました」


「連絡を受けてから、急いで作業を終わらせた」


「ありがとうございます」


「南の件、どうなったの」


「今日は、作業を止めさせました。書類の問題を指摘したら、確認が必要になりました」


「また始まるかもしれないの」


「始まるかもしれないです。でも、正式な取り決めがある限り、農務局の確認が必要です。エイラさんが、それを守ってくれると思います」


「エイラって」


「アルドの農務局の長です。前に話した方です」


「会ったことはないけど、名前は聞いてる」


「強い人です。農地の水のことに、本気です。泉の水脈を傷つけるような採掘は、許可しないと思います」


「信用できる人なの」


「信用できます。動くと決めたら、動く人です」


レナが、少し安心した顔をした。


「東側、また少し変わったよ」


「どのくらいですか」


「ナギが最初に苔を生やした場所から、広がってる。今は、あの岩から五倍くらいの範囲に広がってる」


「五倍」


「うん。最初は点だったのが、今はつながってる感じ」


「それは、大きい変化ですね」


「毎日来てると、分からないけど、写した図と比べたら、全然違った」


「記録と比べて、変化が分かったんですね」


「そう。記録があって、良かった」


「ミアさんが言っていたことですね。記録は後で読む人のためにある」


「ナギが、ミアという人から聞いたこと、ゴルに伝えてたんだ。ゴルから私に伝わった。記録もつながるんだね」


「つながりますね」


「全部つながってる」とレナは言った。


「そうですね」


ゴルが、二人の話を聞いていた。


「夕食にしよう」とゴルは言った。


「ありがとうございます」


「今日は、少し豪華にした」


「なぜですか」


「来たから」とゴルは言った。それだけだった。



夕食の席で、ゴルが言った。


「一つ、聞いていいか」


「なんですか」


「お前は、この先どこに行く」


「まだ決まっていないです。でも、いくつか気になることが出てきています」


「どんなことだ」


「一つは、山の採掘の問題が続く可能性があること。もう一つは、ベルクさんの手紙で、別の国から問い合わせが来ていると書いてありました」


「別の国から」


「セルドのように、水や土の問題を抱えた国が、他にもあるようです」


「そういう国に、行くのか」


「必要があれば、行きます」


「セルドの竜の話が、広まったか」


「広まったのかもしれないです。竜と話した転生者がいると、どこかで聞いたのかもしれない」


ゴルが、少し考えた。


「お前の名前が、広まっている」


「そうかもしれないです。でも、私が行くより、それぞれの場所にいる人が動く方が、続きます」


「でも、最初のきっかけは必要だ」


「そうですね。きっかけを作るのは、私が得意です」


「きっかけを作っただけ、と言うんだろう」


「そうです。でも、ルナに教わりました。きっかけだけじゃない、全部が必要だと」


ゴルが、少し眉を動かした。


「ルナという子か。手紙を送ってきた」


「はい」


「いつか来い、と返事を書いた」


「ルナが喜んでいました」


「どんな子だ」


「精霊と友達になった子です。毎日池に来ていたら、精霊が毎日来るようになった」


「毎日来た結果、友達になった」


「そうです」


「継続が、つながりを作った」


「そうです」


ゴルが、少し笑った。


岩みたいな顔が、少し動いた。


「会ってみたい」


「会えると思います。今度、一緒に来ると約束しました」


「楽しみだ」とゴルは言った。短く言った。



翌朝、帰る前に、泉に寄った。


ゴルと一緒に行った。


泉の底を見た。


水が、少し出ていた。


岩肌が、湿っていた。


前に来たときは、完全に乾いていた。


「変わっていますね」


「変わった」とゴルは言った。


「まだ少ないですが、出ています」


「採掘が止まってから、少しずつ出てきた。最初に水が滲んできたとき、レナが知らせに来た。走ってきた」


「そうでしたか」


「あいつが走ってきたのを、見たのは初めてだった」


「嬉しかったんですね」


「嬉しかった。あいつも、嬉しそうだった。珍しく」


「レナさんは、表情が出にくい方ですが」


「出にくい。でも、泉の水が出たときは、出ていた」


私は、泉の底に手を当てた。


水の流れを感じた。


「ゆっくりですが、戻っています。採掘の動きが再び出てきているのが、心配ですが」


「抑えてくれるか、都の人間が」


「エイラさんとダロさんが、動いていると思います。それと、ベルクさんが記録しています」


「記録があれば、証拠になる」


「そうです。記録されていれば、誰かが判断するときの材料になります」


ゴルが、泉を見た。


「父が、祖父が、もっと前の者たちが、ここに水があった時代を知っていた。私は、水がない時代に生まれた。泉の水が出るのを、初めて見た」


「そうでしたね」


「始めて見た。小さな水でも、始めて見た」


「これから増えます」


「増えるといい」とゴルは言った。「増えれば、集落の若い者たちが、水のある泉を見られる」


「見られます」


「私は、レナや若い者たちに、水のある泉を見せてやりたい」


「見せられます。時間はかかりますが、続けていれば」


ゴルが、また泉を見た。


「採掘を、止め続けなければならないな」


「そうですね。止め続けるために、都でダロさんが動いて、エイラさんが確認して、ベルクさんが記録する」


「それが続く限り、泉は戻る」


「そうです」


「続かなくなったとき、また問題になる」


「そうなったとき、また考えます」


ゴルが、私を見た。


「全部が解決することは、ないな」


「ないかもしれないです。でも、続けていれば、ましな状態が続きます」


「ましな状態が続くことが、大事だ」


「そうです」


ゴルが、短く息を吐いた。


「分かった。続ける」


「ありがとうございます」


「礼はいい。また来い」


「来ます」



山を下りながら、第二部を通じて起きたことを思い返していた。


セルドの竜に会ったこと。


卵が埋まっていたこと。


水脈を一緒に押したこと。


川が戻り始めたこと。


アルドの地下に、水路があったこと。


マリアが八十年間待っていたこと。


岩を七人で動かしたこと。


ダンが怒りながら動いたこと。


トウがマリアの話を聞き始めたこと。


そして今、泉に水が戻り始めたこと。


採掘が再び動こうとしていること。


全部が、つながっていた。


一か所を直すと、別の場所が動く。


別の場所が動くと、また次のことが起きる。


終わりは、なかった。


「終わりは、ないですね」とシロに言った。


シロが耳を動かした。


「でも、方向は変えられる」


シロが尻尾を振った。


「竜が泣いていた理由が分かった。岩が動かせた。マリアに会えた。泉に水が戻った。全部、方向が変わったことです」


また振った。


「全部が解決しなくていい。方向が変われば、続けていける」


シロが、前を向いた。


「第三部、どこに行くか、まだ分からないですが」


シロが耳を動かした。


「気になることが、また出てくると思います」


また動いた。


「一緒に行きますか」


シロが尻尾を大きく振った。


当たり前だ、という顔だった。


「ありがとうございます」


森の入口が、見えてきた。


ルナが、待っているかもしれなかった。


石を、握った。


池の底の石だった。


帰ってくる証拠の石だった。


「帰ります」


森が、静かに聞いていた。


シロが、速くなった。


また、森の匂いがしたのかもしれなかった。


「そんなに急がなくていいですよ」


シロが振り返らなかった。


「分かりました、急ぎましょう」


二人で、走った。


春の森を、走った。


第二部が、ここで終わった。

四十八話目、書きました。第二部、完結です。


採掘が再び動き出した問題に、今回は力ではなく、書類と言葉とつながりで対処した場面を書きました。セルドで学んだこと、ベルクから教わったこと、ダロさんが動いてくれていたことが、一つの場面で合わさりました。凪が経験を積み、力の使い方が変わってきた第二部の総括となる場面でした。


「きっかけだけじゃない、全部が必要だった」というルナの言葉が、第二部を通じて凪の中に残り、ゴルとの会話でそれが出てきました。誰かに言われた言葉が、別の場所で使える。これも、つながりの形です。


泉に水が戻り始めた場面。レナが走ってきた、というゴルの言葉。表情が出にくいレナが、嬉しそうだった。小さな変化が、人の顔に出る。それが、続けることの報酬だと思います。


「全部が解決することは、ないかもしれない。でも、方向は変えられる。方向が変われば、続けていける」というのが、第二部全体のテーマでした。


第三部では、より広い世界へ。気になることが、また出てきます。


読んでくださっている方、第二部もありがとうございました。また第三部で、お会いしましょう。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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