表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第二部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/24

第三十九話「アルドの農地に、隠れた問題があった」

三十九話目です。アルド編が始まります。


今回から、新しいアークに入ります。起承転結のある展開を意識しています。今回は「起」です。農地の問題が、表面的な問題ではなく、もっと深いところに原因がある、ということが見えてきます。


では、どうぞ。

アルドの都に着いたのは、出発から四日後だった。


春の道は、冬の道より歩きやすかった。


鳥の声が多かった。


草が伸びてきていた。


道の脇の花が、咲き始めていた。


シロが、鼻を動かしながら歩いた。


匂いが多い季節だった。


都の門をくぐったとき、門番が私とシロを見た。


「ラグル族を連れた転生者か」と門番が言った。


「そうです」


「ベルク調査部門から、話が来ていた。中に入っていい」


「ありがとうございます」


前回より、入りやすかった。


話が通っていた。


ベルクが、準備してくれていたらしかった。



宿に荷物を置いてから、ベルクのところに行った。


調査部門の建物は、都の中心部にあった。


ベルクが、部屋で書類を見ていた。


私が入ると、少し顔を上げた。


「来たな」


「来ました」


「早かった」


「春になったら来ると言いましたから」


ベルクが書類を置いた。


「カナも来ている。少し待て」


しばらくして、カナが来た。


ミアも一緒だった。


「久しぶりです」とカナが言った。


「久しぶりです。ミアさんも」


「セルドから帰ってきました。記録が、大分溜まりました」


「見せてもらえますか」


「後で。今は、農地の話を先にしましょう」



四人で、農地の問題を整理した。


ベルクが、地図を広げた。


「問題が出ている農地は、ここだ」


都の東側の区域を指さした。


「去年の秋から、土の硬さにムラが出てきた。作物の育ち方が、場所によって違う」


「硬い場所と、柔らかい場所が混在している」


「そうだ。カナが調べたが、原因が分からなかった」


カナが続けた。


「水の量は、変わっていません。肥料も、同じように入れています。でも、場所によって、土の状態が全然違う。何かが、地下にある可能性を考えていました」


「地下に何かある」


「そう思っていますが、特定できていません」


「明日、現地を見てもいいですか」


「もちろんです」


ミアが、記録帳を出した。


「私も、明日同行します」


「ありがとうございます」



その夜、宿でトウが来た。


ベルクが、知らせてくれたらしかった。


扉を開けたら、眼鏡をかけたトウが立っていた。


「来てくれたんですか」


「ベルクさんから、凪が来たと聞いた」


「元気そうですね」


「元気だよ。眼鏡、ずっとかけてる」


「合っていますか」


「合ってる。前に作ってもらったやつは、少し大きくなった。だから、職人さんに頼んで、新しいのを作ってもらった」


「自分で頼んだんですか」


「うん。作り方が分かってきたから、細かいことを自分で言えるようになった。凪が来てくれなかったら、眼鏡があることすら知らなかった」


「職人さんが作ってくれたんです」


「凪が、最初に言ってくれたから始まった」


「きっかけを作っただけです」


トウが、少し笑った。


「それ、ベルクさんも言ってた。凪がいつもそう言うって」


「本当のことなので」


「じゃあ、俺が言う。凪が来てくれたから、俺の目が変わった。それは本当のことだ」


「ありがとうございます」


「それと、言いたいことがある」


「なんですか」


「前に、見えるようになったものを教えてって言ったよね」


「言いました。星を教えてくれましたね」


「うん。それから、また見えるようになったものが増えた」


「どんなものですか」


「果物の模様と、顔の表情」


「顔の表情が、見えるようになりましたか」


「前は、ぼやけてた。眼鏡をかけてから、ちゃんと見える。前より、人の表情が分かるようになった」


「それは、大きい変化ですね」


「怒ってるか、笑ってるか、前は近づかないと分からなかった。今は、少し遠くても分かる。だから、人と話しやすくなった」


「良かったです」


トウが、また少し笑った。


「あと一つ」


「まだありますか」


「うん。花の形が分かるようになった」


「花の形」


「前は、花があるのは分かってた。でも、花びらの形とか、中がどうなってるかとか、近づかないと見えなかった。今は、遠くから見ても形が分かる」


「それで、何かが変わりましたか」


「花が好きになった」とトウは言った。「前は、きれいかどうか、あまり分からなかった。今は、きれいだと思えるようになった」


少し考えた。


「見えることで、好きになれるものが増える」


「そう。だから、ありがとう」


「職人さんに言ってください」


「職人さんにも言った。でも、凪にも言いたかった」


「ありがとうございます」


トウが、果物を一つ置いていった。


「持ってきた。今年の春に出た、最初の果物」


「ありがとうございます」


トウが帰った後、果物を見た。


赤くて、丸かった。


「今年の最初の果物か」


シロが、匂いを嗅いだ。


食べたそうな顔をした。


「一緒に食べよう」



翌朝、カナとミアと一緒に、農地に向かった。


オルトほど大きくはなかったが、広かった。


色々な作物が、植えられていた。


麦、野菜、豆の類。


歩きながら、感じ取った。


「何か分かりますか」とカナが聞いた。


「少し、感じます」


「何を」


「土の中に、ムラがあります。硬い部分と、柔らかい部分が、交互に現れている」


「場所によって、どのくらい違いますか」


「かなり違います。隣り合った場所でも、大きく違う部分があります」


ミアが、記録帳に書いた。


「地下に何かある、というのは、正しそうですか」


「正しいと思います。地下に、何か硬いものがあって、その影響で上の土がムラになっている」


「硬いもの、というのは」


「岩か、それとも別の何かか。感じてみます」


膝をついて、地面に両手を当てた。


深く、感じた。


地下に、何かがあった。


岩ではなかった。


それより、定期的だった。


「規則的なものが、地下にあります」


「規則的」


「等間隔に、何かが埋まっています。自然にできたものではないです」


カナが、少し前のめりになった。


「人工的なものですか」


「そうだと思います」


「何が埋まっているんですか」


「触っただけでは、分かりません。掘ってみれば分かります」


「どこを掘ればいいですか」


立ち上がって、歩いた。


感じながら歩いた。


止まった。


「ここです。ここの真下に、何かあります」


カナが、その場所を確認した。


「掘ってみます」


カナが道具を取り出した。


鋤で、土を掘り始めた。


一尺ほど掘ったとき、何かに当たった。


硬い音がした。


「当たった」とカナが言った。


土を払った。


石だった。


でも、ただの石ではなかった。


形が、整いすぎていた。


四角い形をしていた。


「これ」とカナが言った。


「人が作ったものですね」


「加工された石です。でも、なぜここに」


「他の場所も、掘ってみてください。規則的にあるなら、一定間隔で出てくるはずです」


カナが、別の場所を掘った。


また出てきた。


同じような、四角い石が。


ミアが、興奮した様子で書いていた。


「これは、何ですか」とミアが聞いた。


「分かりません。でも、かなり昔のものだと思います」


「なぜですか」


「石の表面が、かなり長い時間地下にいた感じがします。風化していないですが、土が染みています。百年以上前のものかもしれないです」


「百年以上前に、誰かがここに何かを作った」


「そうだと思います」


カナが、石を触った。


「何のために、こんなところに」


「分かりません。でも、これが農地の土のムラの原因だと思います。石が地下にあると、水の通り方が変わります。石の上と横では、水が違う動き方をする。それが、土のムラになっている」


「石を取り除けば、解決しますか」


「解決するかもしれないですが、石がたくさんあるなら、全部取り除くのは大変な作業になります」


カナが、周りを見た。


「どのくらいの範囲に、あると思いますか」


感じてみた。


「広いです。この農地全体に、網の目のように広がっているかもしれない」


「網の目のように」


「等間隔に、規則的に並んでいます。誰かが、計画的に並べたものだと思います」


「なぜ、そんなことを」とミアが言った。


「分かりません。でも、知りたいです」


「知りたいのですか」


「誰かが、計画的にここに石を並べた。それが、百年以上前のことだとすれば、何か理由があったはずです」


「理由を知ることが、解決につながりますか」


「つながるかもしれないです。理由が分かれば、石をどう扱えばいいか、分かるかもしれない」


ミアが、記録帳を閉じた。


「また、誰かが記憶を持っているかもしれないですね」


「そうですね。デルさんみたいな人が、ここにもいるかもしれない」


「探してみます」


「ありがとうございます」



夕方、ベルクに報告した。


地下に石があること、規則的に並んでいること、百年以上前のものらしいことを話した。


ベルクが、静かに聞いていた。


「都の記録に、そういうものが残っているか、調べてみる」とベルクは言った。


「ありがとうございます」


「時間がかかるかもしれない。都の記録は、整理が行き届いていない部分がある」


「分かりました。その間、農地を歩き続けます」


「頼む」


ベルクが、少し間を置いた。


「一つ聞いていいか」


「なんですか」


「森の集落は、どうだった」


「良くなっていました。二十になっていました」


「二十、というのは」


「私の感覚の数字です。自分で回れる状態になっていました」


「それで、こっちに来た」


「そうです」


「良かったな」とベルクは言った。「あの集落が、良くなったのは」


「ルナとガルさんが続けてくれたからです」


「お前が、始めたからだろう」


「きっかけを作っただけです」


ベルクが、また口の端を上げた。


「お前は、本当にいつもそう言うな」


「本当のことなので」


「分かった」とベルクは言った。「都の記録、急いで調べる。こういう謎が、私は好きだ」


「そうですか」


「記録を掘るのは、土を掘るのと同じだと思っている。何が出てくるか、掘ってみないと分からない」


「面白い言い方ですね」


「お前が、土を掘ったら面白いものが出てきたと言うから、私も掘ってみたくなった」


「記録を掘ってみてください」


「掘る」とベルクは言った。



その夜、石のことを考えながら眠れなかった。


誰かが、百年以上前に、農地の地下に石を並べた。


等間隔に、規則的に。


計画的に。


何のために。


セルドのデルが、おじいさんから聞いた話を持っていたように、ここにも誰かがいるかもしれなかった。


でも、百年以上前のことを覚えている人間は、限られていた。


記録の中にあるかもしれなかった。


あるいは、石そのものが、何かを語っているかもしれなかった。


「明日も、農地を歩こう」


シロが、隣で眠っていた。


耳だけ、少し動かした。


「明日、もう少し広い範囲を感じてみます。石の並び方のパターンが分かれば、何かが見えるかもしれない」


シロが、また耳を動かした。


「気になります」


シロが、尻尾を少し振った。


「明日、一緒に歩いてくれますか」


シロが、完全に顔を上げた。


当たり前だ、という顔だった。


「ありがとうございます」


シロが、また寝た。


今度こそ、ちゃんと眠る気らしかった。


「そうですね、私も寝ます」


目を閉じた。


石の並びが、頭の中にあった。


等間隔、規則的、百年以上前、計画的。


その理由が、明日、少し分かるといいと思いながら、眠った。

三十九話目、書きました。アルド編の始まりです。


トウの「見えるようになったものが増えた」という場面を入れました。果物の模様、顔の表情、花の形。眼鏡をかけてから、見えるようになったものが増えた結果、好きになれるものが増えた。見えることで、世界が広がる。凪が農地の地下を感じ取ることと、トウが花の形を見えるようになったことは、どちらも「見えることで世界が変わる」という同じ構造です。


地下に百年以上前の石が、規則的に並んでいるという発見。これが今回の起です。農地のムラという表面的な問題の下に、もっと深い謎が埋まっていた。誰かが計画的に並べた石。その理由が、次話以降で明らかになっていきます。


「記録を掘るのは、土を掘るのと同じだ」というベルクの言葉。ベルクというキャラクターが、この言葉で少し変わって見えてきます。物静かで、数字と書類の人に見えていたベルクが、実は謎を掘ることが好きな人だった。


次話では、石の謎を追います。起承転結の「承」に入ります。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ