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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第二部  作者: マスター


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第二十五話「第二部、始まり。そして、見知らぬ使いが来た」

第二部、始まります。


第一部では、凪が転生して、森と山と都を歩き、小さな変化を積み重ねてきました。第二部からは、その積み重ねが、少し大きな流れにぶつかります。


今回は、遠くから使いが来ます。ベルクが言っていた、他国からの話が、実際に動き始めます。ただし、最初から順調ではありません。


では、どうぞ。

朝、霧が出ていた。


秋になっていた。


凪がこの世界に来てから、三か月が経っていた。


森の木が、少し色づき始めていた。赤と黄色が、緑の中に混じっていた。来たときは夏だったから、初めて見る秋の森だった。


「きれいだな」


シロが、落ち葉を踏んで歩いた。


サクサクという音がした。


シロが少し立ち止まって、その音を確かめるように、また踏んだ。


「気に入ったのか」


シロが尻尾を振った。



集落の朝は、いつも通りだった。


ガルが、朝食を作っていた。


ルナが、木に触る朝の巡回を終えて戻ってきた。


「今日は、北の木が少し元気なかった」とルナは言った。


「どの木ですか」


「あの、幹が二又に分かれてるやつ」


「見てきます」


「一緒に行く」


食事の後、二人で見に行った。


ルナが指さした木を触った。


「水が足りない感じがします。根の先まで届いていない」


「どうする」


「根の周りを、少し掘り起こして、水が届きやすくします」


「私もやる」


「ルナにもできます。土を少し掘り起こすだけなので」


ルナが、木の根元にしゃがんだ。


手で土を掘り起こし始めた。


私も手伝った。


「これって、毎年やることになる?」とルナが聞いた。


「秋になると、木は根から水を吸う量が変わります。夏の吸い方をしていた根が、秋の変化に追いつかないことがある。毎年ではないですが、こういう木は注意が必要です」


「季節で、やることが変わるんだね」


「変わります。春夏秋冬、それぞれ違う」


「春は何をする」


「芽が出るのを助けること。冬は、根を守ること」


「冬は寒いのに、根を守れる?」


「方法があります。根の周りに、落ち葉を積む。保温になります」


「落ち葉が役に立つんだ」とルナは言った。「捨てるものじゃなかったんだね」


「捨てるものは、自然の中にあまりないです」


ルナが、掘り起こした土を見た。


「ミミズいた」


「いましたか」


「三匹」


「良いですね。ミミズがいる土は、良い土です」


「ミミズが土を良くするんだよね、前に言ってた」


「そうです。小さい生き物が、土を耕してくれている」


「ミミズ、かわいくはないけど、大事だね」


「大事です」


ルナが、ミミズを優しく土に戻した。



昼前に、ラグル族が知らせに来た。


東の端に、人間が来ている、と。


今回は、シロが反応する前に、ラグル族が先に来た。


「ベルクさんか」


「違う様子です」とガルが言った。「ラグル族の話では、見たことのない服を着た人間だそうです」


「見たことのない服」


「アルドの国の服ではないかもしれない」


ベルクが言っていた話を思い出した。


他国から、使いが来るかもしれない、という話。


「一人ですか」


「二人だそうです」


「行ってきます」


「気をつけてください」とガルが言った。


「一緒に行く」とルナが言った。


「今回は、一人で行きます」


「なんで」


「相手が何者か、まだ分からないので。安全が確認できたら、また話しますから」


ルナが、少し不満そうな顔をした。でも、頷いた。



森の端に出ると、二人が立っていた。


見たことのない服だった。


暗い青色の、厚い布でできた服。腰に剣を下げていたが、抜こうとする気配はなかった。


一人は、四十代くらいの男。背が高くて、白髪が混じっていた。


もう一人は、二十代くらいの女性。記録帳を持っていた。カナに似ていたが、カナではなかった。


二人が私を見た。


男が、少し目を細めた。


「転生者の凪、か」


「そうです。あなたたちは」


「セルドという国から来た。私はオルトという。こちらは、記録係のミア」


ミアが、少し頭を下げた。


「セルドは、どのあたりですか。アルドとは別の国ですか」


「アルドの東、山を越えた先にある。アルドからの報告で、お前のことを知った」


「どんな報告でしたか」


「農地の問題を指摘した転生者がいると。水の問題も、土の問題も、正確に当てたと」


「感じ取っただけです」


「セルドにも、同じ問題がある」とオルトは言った。「いや、アルドより深刻かもしれない」


「どういう問題ですか」


「川が、五年前から急に水量が減った。農地の収量が、三割落ちた。何が原因か、分からないままだ」


「川が急に減った」


「急に、だ。前触れがなかった。気候が変わったのか、上流で何かあったのか、調査しても原因が分からない」


「上流には、何がありますか」


「山だ。大きな山が、国の北にある」


「山で、何か起きているかもしれない」


「その可能性を考えている。しかし、山には入れない」


「入れない理由は」


オルトが、少し間を置いた。


「山に、竜がいる」



しばらく、沈黙があった。


「竜」と私は言った。


「そうだ。百年以上前から、その山に竜がいると言われている。普段は姿を見せないが、人間が入ると、嵐が来る。何人か、試みた者がいたが、全員が引き返してきた」


「嵐が来るのは、竜が起こしているんですか」


「そうだと思っている。竜の縄張りだから、入るなということだろう」


「竜は、悪竜ですか」


オルトが、少し驚いた顔をした。


「悪竜、という言葉を知っているのか」


「少し聞きました。理から外れた竜のことだと」


「そうだ。ただ、その竜が悪竜かどうかは、分からない。誰も近づけないから」


「川が減ったのは、五年前から」


「そうだ」


「その五年前に、山で何か起きた可能性があります。竜が嵐を起こすなら、嵐で山の地形が変わったかもしれない。地形が変わると、川の流れが変わる」


「それを、確認できるか」


「山に入らないと、分からないです」


「入れないんだ。嵐が来る」


「私が入ったら、嵐が来るかどうか分かりません」


オルトが私を見た。


「試してみるつもりか」


「気になるので」


「危険だぞ」


「竜が、話の通じる存在なら、何とかなるかもしれない」


「話が通じる竜だと思うか」


少し考えた。


「話が通じないと決まったわけじゃないです。試してみないと分からない」


オルトが、ミアを見た。


ミアが、記録帳に何かを書いていた。


「お前のことを、リドルから聞いたとき、変な転生者だと思った」とオルトは言った。


「よく言われます」


「来てくれるか。セルドに」


「今すぐは無理です。この集落が、もう少し自分で動ける状態になってから、なら行けます」


「どのくらいかかる」


「二か月くらいかな、と思っています」


「二か月後に、また使いを出す」


「それで十分です」


オルトが、短く頷いた。


「一つ聞いていいか」


「なんですか」


「お前は、竜を怖いと思わないのか」


少し考えた。


「怖いかどうかは、会ってみないと分からないです。でも、川が減って困っている人たちがいると聞いたら、気になります」


「気になるから、行く、か」


「そうです」


オルトが、また少し目を細めた。


「変な転生者だ」


「よく言われます」


「だが、変な方が、こういうことは動けるかもしれない」とオルトは言った。「普通の人間は、竜がいると聞いた時点で、引き返す」


「引き返すかどうかは、会ってから決めます」


オルトが頷いた。


「二か月後に、使いを出す」


「待っています」



集落に戻って、ガルに話した。


「竜がいる山に、行くつもりですか」とガルが言った。


「行くかどうかは、二か月後に考えます。まず、ここが安定してから」


「竜は、危険です」


「竜が全部危険とは限らないです。理から外れていなければ、話が通じるかもしれない」


「話が通じる竜に会ったことが、あるんですか」


「ないですが」


ガルが、深いため息をついた。


「凪様は、いつもそういう言い方をしますね」


「試してみないと、分からないので」


「試して、嵐が来たらどうするんですか」


「そのときに考えます」


ガルがまた息を吐いた。


ルナが、横から飛び込んできた。


「竜って、本物の竜?」


「たぶん、本物です」


「大きいの」


「たぶん」


「会えるの」


「会いに行くつもりです」


「私も行く」


「今回は、難しいです」


「なんで」


「竜がいる山に、ルナを連れていくのは、危険すぎます」


「ナギだって危ないじゃん」


「私は、まあ何とかなるかもしれないので」


「その根拠は」とルナが言った。


「根拠はないですが」


「じゃあ、なんで大丈夫なの」


「気になるから行くだけで、大丈夫とは言っていないです」


ルナが、少し口を尖らせた。


「じゃあ、帰ってこれなかったら、どうするの」


「帰ってこない場合は、また誰かが気になって直しに来ると思います」


「そういう問題じゃない」とルナは言った。「私が、寂しいじゃん」


私は何も言えなかった。


「帰ってきます」と言った。


「ちゃんと言えた」とルナは言った。「でも、帰ってこないと、許さない」


「許さない、か」


「絶対に許さない」


「分かりました」


「約束」


「します」


ルナが、少し満足した顔をした。


でも、目が少し赤かった。


泣きそうなのを、堪えていたのかもしれなかった。


「帰ってきます。本当に」


「知ってる」とルナは言った。「でも、言わないと気が済まない」


「言っていいです」


「じゃあ、もう一回言う。帰ってきて」


「帰ります」


ルナが、頷いた。



夜、シロと外に出た。


秋の夜空だった。


星が、夏より少し低い位置に見えた。


季節が変わると、星の位置も変わる。


「竜、か」


シロが空を見た。


「会ったことある種族じゃないな。精霊より大きくて、古い存在らしい」


シロが耳を動かした。


「怖いかどうかは、分からない。でも、気になる」


シロが尻尾を振った。


「川が減って困っている人たちがいる。山で何かが起きている。竜がいる。全部つながっているかもしれない」


シロが私を見た。


「行くよ、二か月後に」


シロが、また尻尾を振った。


一緒に行く、という顔だった。


「ありがとう」


秋の風が吹いた。


落ち葉が、舞い上がった。


第二部が始まった。


竜のいる山が、どこかにある。


川が減って、農地が干上がりかけている国がある。


何が起きているのか、まだ分からない。


でも、気になった。


気になれば、行く。


それが、凪のやり方だった。

二十五話目、第二部の始まりです。


今回から、エピソードアークを意識して構成します。竜のいる山と、川が減った国セルドの話が、第二部の最初のアークになります。起承転結でいうと、今回は「起」です。問題が提示されて、凪が関わることを決めた。


ルナとのやりとりで「帰ってこなかったら、絶対に許さない」という言葉が出ました。第一部では、ルナはいつも「やだ」や「寂しい」という感情を素直に出していました。第二部では、もう少し感情に複雑さが出てきます。泣きそうなのを堪えながら「絶対に許さない」と言う、というのは、その始まりです。


竜というキャラクターは、第一部で少しだけ触れた世界観、精霊の上位種、理から外れると悪竜になる、という設定に基づいています。凪が会いに行って、何が起きるか。次話以降で、少しずつ動きます。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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