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【第3話:イーリスの決意】

その日の内に祠から戻ったユアとアミュア。

玄関の右側に地下に降りる階段がある。

ユアは無言でカーニャの元へ下りて行く。

アミュアは階段で止まり見送ることしか出来ないのだった。

両手で顔を覆うアミュア。

ずっとこらえていた涙がぽろぽろと落ちだす。

アミュアの嗚咽にラウマやノア達みなが集まり支えてくれる。

わかっているのだ皆‥‥この階段の先はユアとカーニャ、二人の世界なのだと。


「カーニャ‥‥ごめんねただいまぁ」

ベッドに一人でコロンと寝ていたカーニャはユアの声を聞いてぱっと起き上がる。

「ユアぁ‥‥さみしかったよぉぉ‥えーん」

そのまま女の子座りで泣き出す、グラマラスな大人のカーニャ。

階段を降りたユアはそっとベッドに上がり寄り添う。

「ごめんねカーニャ‥‥どうしてもの用事だったのおいで」

泣きながらユアに抱きつくカーニャ。

ユアはもっとも近くでカーニャを見てきたので、変化にいつも敏感だった。

一日で随分バラの香りが増している。

ユアはもう大分慣れたが、この香りは危険な香りなのだった。

カーニャ以外を狂わす香りなのだった。

「カーニャお風呂はいろうね‥‥ユアと一緒にはいろう?」

「うん‥‥髪を洗ってくれるユア?」

もうすっかり泣き止み笑顔のカーニャ。

本当に幼女のような感情を見せる。

「もちろんいいよユアが洗ってあげるよ、乾かすのはできないからアミュアにお願いしようね」

「‥‥うん」

カーニャは自分とユア以外が一緒にいるのがとても不満そうにする。

これがアミュアを傷つけるとユアは思うので、むしろアミュアを遠ざけてしまう。

今日の祠往復は本当に久しぶりのアミュアと二人きりだった。

帰りは交代してアミュアが抱きついて戻ったが、ずっと会話もなく微笑んで抱きつくアミュアに苦労をかけてるなとユアは辛かった。

せめてカーニャがアミュアも受け入れてくれたらとユアは思う。

この地下には一通り生活できる設備が揃っていて、お風呂はないがシャワー室がある。

小さな物だが二人でもなんとか使えた。

ミーナとレティシアも4ヶ月ほどここで暮らしたのだ。

(そうだよ‥‥ミーナ達も頑張って立ち直っている‥‥カーニャの心も必ず見つけ出す‥‥)

カーニャの頭を洗いながらユアはそんな事を思っていた。

嬉しそうにユアに抱きついてくるカーニャを見ながら。




マルタスのところにはアミュア達が説明に行って、情報をもらってきた。

今マルタスが救い出した3姉妹イーリス、エーリスとエーシスはマルタスの家に住んでいるのだ。

三人は戦闘能力が高い魔法戦士なので、三人でパーティ登録し、マルタスの指導のもと着々と新しい人生を始めていた。

アミュアの説明を聞いて、前から一番カーニャを見舞ってくれているイーリスがお世話をしたいと申し出てくれた。

「カーニャ姉様にはあの研究所でも可愛がってもらっていました。発作の時もお役に立てると思います」

そう言ってアミュア達が巫女に会いに行く間を任せて欲しいと申し出てくれたのだ。

マルタスは、少しさみしそうだが、一緒に行くとは言わなかった。

「せっかくお別れできたのに、辛いだけだよ」

そう淋しそうに言った。

自分の事は聞かれなければ伝えないでほしいとも。

マルタスの中では決着が付いた過去の出来事なのだと、アミュアにもわかった。

巫女の能力についてもマルタスの分かる範囲で教えてもらった。

エーリスとエーシスはサイドポニーとおさげ茶髪を揺らしイーリスと全く同じ顔で送り出す。

「イーリス‥‥こっちは気にしないで好きなだけお世話してきて」

「おとうさんの事もまかせて。ハンターも二人でがんばるね」

そういってイーリスを送り出す。

「うん‥‥二人よりも私がいちばんカーニャ姉様にお世話になったもの‥‥恩返しちゃんとする」

そういって後ろでくくった茶髪をゆらし、ひまわりハウスに向かった。

マルタスの家はユア達の家からはすぐ近くだ。

三つ子と三つ子が別れて、アミュア達の隣をイーリスも進む。

「エイセル姉様はお元気でしょうか?ちょっと久しぶりです」

にっこりわらうイーリスは2つ上の姉エイセルも大好きで、遊びに来ると離れないでそばにいる。

カーニャが来てからは初めての訪問となる。

「わたしが教えてお料理が上達しましたよぉ、もうアミュアより頼りになります」

ラウマが答えアミュアはふくれる。

「わたしも練習しています」

「よしよし」

ふくれるアミュアをノアが撫でる。

「ノアも一緒に練習しましょうね?」

「え、しないよ?」

あははと明るい笑い声があがり、沈みがちだった4人をふんわり温めた。

(ノア‥‥ありがとう)

ノアにその気はなくても、アミュアは確かにノアに救われたと心のなかで礼を言う。

表面上は仲が悪そうなアミュアとノアはとても仲がいいのだった。

イーリスにもそれが解り、自分たち姉妹もそうなりたいなと、ちちょっと憧れるのだった。




「カーニャねえさま‥‥イーリスです」

「??イーリス」

こてんと首を曲げるカーニャだが、アミュアや他の子よりも反応がいい。

「以前おそばでお世話しておりましたよ‥‥お忘れかも知れませんが」

ふむ?といった雰囲気のカーニャ。

イーリスはだいぶショックのようだが、くじけず務めると決めていた。

「わたしはマルタスさんに救ってもらいました‥‥今度はわたしが誰かを救いたいと思っています。ご不満かも知れませんがおそばに置いてくださいねカーニャねえさま」

「うん‥‥ユアは?」

「ユアさんはご用事でお出かけなのです、お帰りになるまではイーリスに甘えて良いんですよ?」

「うん‥‥わかった‥‥イーリス‥‥」

そういって正面からイーリスに抱きついて大人しくなったカーニャだった。

カーニャがユア以外に抱きついたのは初めての事だった。

手応えを感じたイーリスは根気強く行こうと新たに決意した。

あの地獄の様な場所でもらった、やさしい気持ちを返さなければと。


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