プロゴルファー猿のミスターXの正体は猿谷兄弟たちの父親…というのは限りなく真実に近い
ネットでは「正体不明」とされているけれど、実は全くの正体不明ではないのだ、あの男。
1989年…怪しい男達が集まり…
今回は珍しいパターン。
プロゴルファー猿において、一体何故そんな組織を立ち上げたのか、変人ゴルファーを集めた影のゴルフ界に君臨し執拗に主人公「猿丸」を自身の組織に入れ影のゴルファーにしようとする常時覆面の謎の男ミスターX。
正体不明ではあるが、こんなうわさを聞いた事がある人は多いだろう。「ミスターXはサルの父親」と。
主人公サルには姉と弟、そして母親はいるが父親はおらず全く語られない。
その一方で、ミスターXはサルの宿敵的存在であり、影のゴルフ界などという怪しげな世界に君臨している、顔も隠している、何というか怪しい宗教の教祖というか悪人感がものすごい。ところが、このミスターXという男、実は意外なまでに「まとも」なのだ。サルに負けた配下のゴルファーを厳しく接する事はない、健康の心配も普通にする。
良い上司とまでは言わないけれど、社員に理解ある社長レベルにはある。
そんな人が何度も何度も「勝てば賞金、負ければ影ゴルファー」という条件でサルに挑んでくる。主人公の「サル」はプロゴルファーを名乗っている。アニメ版ではオープニングで毎度毎度「ワイはサルや、プロゴルファー猿や」と言っているぐらいにプロゴルファーを名乗っているけれど、自称プロゴルファーであって何の資格も無い。原作漫画においてもアニメにおいても最終エピソードは「プロテスト」だ(その後、何事も無かったかのようにアニメは新プロゴルファー猿になるので最終エピソードには見えないだろうし、アニメと同時期に連載していたのも、新猿で、そちらが有名なので最終エピソードがプロテスト?と思う人も多そうだが)
猿谷一家は姉が働いてはいるものの、それでもあの家庭を支えているのはサルがミスターXから勝ち取った収入によるところが大きい。
こういった事情もあり、「X=サルの父」説が出るのは自然な事。ただ、それにしてはあまりにも有名な説なのだ。ミスターXは結局最後まで正体不明。ただ、原作者である藤子A先生はミスターXの正体を考えていなかったわけではない。
石ノ森先生執筆の「超漫画進化論」で複数の漫画家による対談があって、そこで父親の話が出て藤子A先生はそこでこんな事を言っている。
『「プロゴルファー猿」のミスターXの存在なんかは「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーみたいなもんで、敵対関係にあるんだけど、最後は彼の親父にしよう、という設定。だから、猿を鍛えるためにいろんな試練を与える──敵だけど、実はそうではない』
はっきりと「サルの父という設定」だと語っている。藤子A先生は結構色々な本を出版していて、漫画の描き方やら昔の思い出やらいろいろと語っている。それらのどの本でも語っていないのに石ノ森先生の本でしれっととんでもない発言をしているのだ。
新猿のアニメ、漫画が終わったのが1988年、超漫画進化論は1989年の本。つまりアニメ終了後辺りからミスターXの正体はサルの父親という説が流れ始めたのは、原作者の発言が発祥だと思われる。ネットなど無い当時ではその説だけが広まり、都市伝説化し「ただのウワサ」となってしまったが、実のところ「真実」だった。
そしてこの対談時点で、藤子A先生はサルの続きを書く構想があったという事だろう。ただ、実際に描かれた続編「サル」は対談から10年経った1999年の事。ミスターXの正体など語られはしなかった。
これが「真実」ではなく「限りなく真実に近い」とした理由。作中で語られておらず、作品に絡めた公式設定として語られた事もない。あくまでも「こういう設定だ」と対談で語ったのみだ。ただ、これを否定する発言を後にしたわけでもなく、少なくとも原作者の脳内においてはミスターXは「金をチラつかせて息子を鍛えていただけのバカ親父…頑固おやじ」なのである。ダースベイダーではないな。
猿谷兄弟の母はミスターXの正体は知らない、気づいていない。
問題は末っ子「猿谷小丸」の年齢だろうか。サルは14歳で検索してみると6歳からゴルフを始めたとある。父親の影響思われるが、つまり8年前。
小丸は4歳か5歳ぐらいに見える、少なくとも小学生ではないだろう。4歳とすると誕生時にサルは10歳。余裕で父親の姿を知っていそうだ。
家でもあの覆面をしていたのであれば、ミスターXを見た時点で父、もしくは関係者と思うだろう。つまり、家では素顔だった。そして、その時点でもう影のゴルフ組織を立ち上げていたと思われる。
声でも気づかれないという事はあの覆面は変声器の役割も!?そこまでして正体隠す理由もわからないが、もしかしたら裏のゴルフ界だとか闇のゴルフ界だとかそんな対抗勢力があり、命を狙われている!…のかもしれない。まあ、描かれなかった事は結局何もわからないのだ
超漫画進化論は2019年に文庫本が発売されているので興味あれば買って読むといいぞ。




