#2 限界サバイバル生活の救世主
サバイバル生活が一週間を過ぎた。
オアシスのほとりに生えているヤシの木は、持っている長剣で何度か斬りつけて倒し、上手く加工してキリモミ式の火起こし器を作った。
火を起こすのには少々時間がかかったが、それでもここまで器用なのには驚きを隠せなかった。
焚き火を拠点にして、住居もヤシの葉と木材で簡素ではあるが作成した。
水はほぼ無限だ。しかもポーション一つ消費するだけでオアシス全体が飲み水に早変わり。
だが、問題は食である。
オアシスとはいえ、ヤシ以外のまともな植物は生えておらず、取れるヤシの実にも限りがあった。
魚もいないし、蠍や小動物もいない。
あと数日もつかどうかというところであった。
焚き火は常に焚いており、狼煙の役割を果たしているはずだが、いつ人が気づいて、しかも助けを呼んでくれるか...。
考えても仕方がない。助けが来るのを待つだけなのだから。
そうしてサバイバル生活が三週間を過ぎた。食料もとうに尽きてしまっている。
こうなれば水で腹を膨らますしかない。しかし、もう限界である。
次第に体が思うように動かせなくなり、立っていることさえままならなくなった。
おそらく熱中症といったところだろう。
流石に死を覚悟した。
どれくらい経っただろうか。
意識が朦朧とする中で、私は、不思議な夢を見た。
デジャブだろうか?
それとも私の過去の体験だろうか?
ある男と私は何やら話をしているようだが、なぜか何も聞き取れない。
だが、
「ーーーに行って調査してきてほしい。報告書も頼むぞ。」
そう私に命令したことは聞き取れた。
そして、書状を渡して、男は去っていった。
そこでその夢は途切れた。
「...い、..........。...い、.......ぶか?」
何か聞こえる。
「おい!しっかりしろ!!」
屈強な男が必死に声をかけながら、私の顔を心配そうに覗いている。
返事をしようとした。
だが、
「...っ.........」
声が出ない。喉が極限まで乾燥し、何も伝えられない。
「こいつは重症だ、早く気付けを!」
別の男が、液体の入った瓶を持ってきた。
必死に声をかけていた男が、その瓶の栓を抜き、中身を飲ませてきた。
「...!ゲホッ、ゲフッ」
気管に入ったらしく、激しくむせた。
のどが焼けるように痛む。
が、その刹那、その痛みが少し引いたように感じた。
どうやら、ポーションを飲ませたようだ。
しばらくして、重苦しかった体は随分と楽になった。
声も上手く出せるようになった。
「もう、大丈夫だ、後は水分と栄養になりそうなものを十分に取れば回復するだろう」
そう男は言う。
西日が顔を照らした。
「よーし、今日はここでキャンプを張るぞ!」
威勢のいい声が辺りにこだまする。
窮地を救ってくれた恩人たちは、どうやら町や村を転々としながら、東方の商品を売り歩く隊商らしい。
隊商の人々のご厚意で食料を分けてもらい、オアシスで夜を過ごした。
「いやー、まさかこんなところでサバイバル生活をしていたとは、驚きですな。しかも、ほとんど記憶を無くしているときた。」
この屈強な彼はサイードというらしい。
真っ先に私を手当てしてくれたのも彼だ。
サイードによれば、ここは比較的魔物と言われる異形の生物が出やすいとのことで、隊商がほとんど通らないらしい。しかし、本来通るルートがひどい干ばつを起こしていたり、魔物災害があったりしたため、仕方なくルート変更を余儀なくされたのだと。
本当に運が良かった。
また、サイードは、お金の価値といった、世の中の常識を細かく教えてくれた。
金貨や銀貨を取り出したとき、彼に驚かれた。
どうやら、私の持つお金は銅貨100枚が1銀貨、100銀貨が1金貨となっているらしい。
パン一個が銅貨10枚ほどらしいので、手持ちのお金はかなりの大金だったようだ。
その性質上、金貨や銀貨はなるべく持ち歩かないのだと。
急にこんな大金を、不用心にも巾着袋なんかに無造作に突っ込んでいた自分に恐ろしくなった。
そして、私はなぜこんな大金を持ち歩いていたのかますます気になった。
本当に私は何者だ?
さて、こうしてオアシスの夜は更けていき、寝床についた。




