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第一話
王都は、白く静まり返っていた。
市場も、噴水広場も、大通りも。
人々は皆その場に立ち尽くし、幸せそうな顔で眠っている。
誰も争わない。
誰も泣かない。
誰も動かない。
ただ、彼らの耳や口元から、柔らかな白い綿毛が咲いているだけだ。
それはまるで、この街全体が一つの巨大な花になったかのようだった。
その中心を、私はゆっくりと歩いていく。
「みんな、やっと静かになったのね」
指先から、ふわりと胞子が舞った。
吸い込んだ兵士が一人、剣を落とす。
次の瞬間、彼の頬から小さな白い茸が芽吹いた。
彼は微笑んだまま動かなくなる。
「大丈夫。怖がらなくていいの」
私はそっと彼の頬を撫でた。
「私が、みんなを救ってあげるから」
そう。
すべては、あの日から始まった。
雨の降る王城の庭園で、
私は「偽聖女」として追放されたあの日から。




