女神の泉 ~ハイリンダの青春録~
2019.12
なんか違う気がしてボツ。
その泉は清らかな水を湛えていた。
「……これがどんな病でも忽ちに治す奇跡の泉?」
ハイリンダは現地の人間の案内で山の奥にある小さな泉へと来ていた。岩の隙間から湧き出た水が下へと溜まり、泉には並々と水が満ちているが溢れる気配は無い。恐らくは溜まる速度と同じ速度で何処かへと流れているのだろう。
「我々は信じている。だから貴女をこの泉へと導いた。貴女にも神の御加護がありますように……」
案内人はそのまま何処かへと去って行った。知れたことである。ハイリンダは行きのお金しか払って無かったのだ。例え時間が掛かろうと、彼女には悠久の時がある。彼女はお金より時間を取る人間なのだ。
「さて……」
泉の水を両手に掬い取り、口元に近付けたハイリンダ。水は臭う事無く澄んでいる。試しに一舐めしてみると…………
「……何も無いじゃない」
ハイリンダは変化の無い体に拍子抜けし、手を拭いて踵を返した。
そこへ老婆が現れた。老婆は小さな桶を持ちヨチヨチと亀の歩みで泉へと進む。
「おやぁ? 見慣れない顔だねぇ? アンタも何処か悪いのかい? 若いのに大変だねぇ……」
「い、いえ……」
「あたしゃあ膝が痛くて歩けなかったんだけどね、この泉の水を飲むようになってから痛みが無くなってね! ハハハ……」
老婆は桶を泉に浸し、桶の中を泉の水で満たした。
「……だけどね。半信半疑で飲んだ奴等は皆コロッと死んじまったよ。アンタも気を付けなされ」
奇妙な笑いを浮かべ、老婆は去って行く。ハイリンダはその後ろをついていき下山する事にした。
道中老婆は亀の歩みでヨチヨチと歩くが膝が悪そうには見えなかった。




