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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第十二章 たがう二人の王子

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第六十二話

 ヒースは、ベットに横たわるハミッシュをジッと見つめていた。

 銀に少し青を混ぜた髪は、レオナールと違い肩より短い。健康的な肌は今は青白く、生気がない。

 手術は成功したもののまだ眠ったままだった。

 ランフレッドが確保した馬車で王宮に運び、グスターファスとミュアンで手術をした。

 ここは、レオナールが使っていた部屋だ。

 ソファーには、ダグとランフレッドが座っている。一応彼らを見張っていた。

 ダグがヒースから目線をランフレッドに移す。

 「一体何が……」

 「俺からは何も言えない」

 ダグの質問にランフレッドがそう返すと、そうですねとダグはまた彼らに視線を移した。

 トントントンとドアがノックされ、グスターファスが入って来た。ソファーに座っていた二人は立ち上がる。

 「どうだ? 変わりはないか?」

 「はい」

 グスターファスの質問にランフレッドが答える。

 「ヒース、国に連絡は?」

 「連絡は届いているはずです」

 グスターファスの問いにチラッとだけ目線を移しヒースは答えた。

 「そうか……。できれば、話を聞かせてほしいのだが……。宜しいか?」

 「私から申し上げる事はございません。ですが、ハミッシュ様を助けて頂いた事には感謝します。ありがとうございます」

 ヒースは振り向き、深々と頭を下げる。

 「そうか。では、私は一度部屋に戻る」

 「はい」

 出て行くグスターファスにランフレッドとダグは軽く頭を下げた。

 「あの二人はまだ、ここに滞在しているのですか?」

 ボソッとヒースが聞いた。

 「あぁ。狙われたと言うのに、ハミッシュ王子を助けた後休んでいる。気持ちはわかるが、話してみたらどうだ? 陛下なら相談に乗って下さると思うが?」

 「……そうですね。しかし、その前にルーファス王子とお話がしたいのですが。今はどちらでしょうか?」

 「呼んできてやるよ」

 ランフレッドとヒースはジッと見つめ合う。

 「では、お願いします」

 「タグここを少しだけお願いする。油断するなよ」

 「油断って……」

 ランフレッドは部屋を出て行った。

 ヒースには、マジックアイテムで魔術を封印してある。まず、魔術は使えないだろうと思うもダグは警戒する。

 暫くするとランフレッドが戻って来た。ルーファスだけではなく、ティモシーとミュアンも一緒だ。ティモシー達と一緒に居たので話を聞いた二人もついてきたのである。

 「私に話とは?」

 ルーファスがそう問いかけると、ヒースはチラッとティモシー達を見た。

 突然ヒースは、束ねていた髪をほどく。そして、何かを呟いた。何だと皆が注目する中彼は、ほどいたリボンをティモシーに投げつけた!

 何をしたのかわからないルーファス達は成り行きを見守るが、そのリボンはミュアンの魔術により燃やされた!

 「助けて差し上げたのに、恩を仇で返すのですね」

 ミュアンの言葉にヒースは床に膝を付き両手をついた。

 「ヒース! あなたは今、何をしようと!」

 ミュアンの言葉でルーファスはマジックアイテムだったのだと気づき問う。

 「ハミッシュ様も帰る場所を失った……」

 ヒースはボソッと呟く。

 「それはどういう事だ? 国で何が起きている?」

 「ギデオン様は変わられた! 息子であるハミッシュ様に二人を殺すように命じられました。コーデリア様がハミッシュ様の身を案じて、私に失敗をしたらこれでと奥の手として渡して下さったのです……」

 俯き弱弱しくヒースは語った。

 「コーデリア様ってたしか、ハミッシュ王子の母親だよな?」

 ランフレッドがルーファスに問うと彼は頷く。

 「直接お会いした事はないが、たしかそのハズだ」

 「戻ればきっと、レオナール様と同じような目に……」

 ヒースは呟く。

 「失敗したから殺されるって事かよ……」

 ランフレッドは、あり得ないという顔で漏らす。

 「母さん!」

 ティモシーは突然、ミュアンの両肩を掴む!

 「これでもまだ何も話してくれないの?! もう母さん一人ではどうにも出来ないよ! ううん。俺達が死んで済む問題じゃなくなってる!」

 ミュアンは、ティモシーの言葉に驚く。

 「あなた、もしかして死ぬつもりだったの?」

 ティモシーは、首を横に振る。

 「レオナール王子が俺達のせいで殺される! 俺が母さんの子だと知れたからエクランド国とハルフォード国の仲も壊れた! 母さんは俺にさえ何も話してくれない。どうすれって言うんだよ……」

 ティモシーは、ミュアンの肩を掴んだまま俯いた。

 「あなたを追い詰めちゃったみたいね……。わかったわ。話すわ。でも、きっと聞いても何も解決出来ないわよ……」

 「それでも何も知らないよりは対策が立てられます。父上を呼んでまいります」

 ルーファスは、ミュアンにそう返し部屋を出て行った。




 レオナールの部屋は緊張に包まれていた。

 「では、話してくれますかな?」

 グスターファスが言うと、ミュアンは軽く頷いた。

 「私の国は隣国サラスチニ国に、十八年前襲われました。両方とも小さなく国でしたから、知らない方も多いかもしれません。父上は私に文献を持たせ逃がしたのです。何とか逃げ切った私は、ここエクランド国に逃げて来ました」

 「もしかして、あなたは王女だったのですか?」

 驚いて問うグスターファスにミュアンは頷く。

 「そうです。王女でした。亡命してきたのです。生きていくために薬師になり、恋に落ちた……。彼は私の我が儘を聞いてくれて、村でひっそりと暮らす事を許してくれました」

 「……亡命」

 ミュアンの言葉にティモシーはポツリと呟く。やっと戦争の意味がわかった。

 「魔術師の組織の狙いはたぶん邪なるモノの封印を解く事だと思われます。封印を解くためには、三カ国に伝わるそれぞれの呪文が必要です。それが解けると魔術師はタダの人間になるのです。ですが……」

 「何です?」

 グスターファスが訪ねる。

 「ハルフォード国の動きがわかりません。二人の息子がいなくなれば、後継ぎがいなくなる。それに自分自身が呪文を教えなければ最終的には防げます。なので、実は本当に襲って来るとは思っていませんでした」

 「確かに。策略的な事が伺えますな」

 「誰かが裏で糸を引いていると?」

 ルーファスが言うと、ミュアンとグスターファスは頷く。

 「ヒース。心当たりはないか?」

 「……ありません」

 ヒースは申し訳なさそうに答えた。

 「協定も無に帰された。お変わりになられたのは確かなようだな」

 「それもそうですが。ミュアン殿が言われた話だけだと、つじつまが合わないところが多々あるような気もするのですが……」

 ルーファスは、チラッとミュアンを見た。

 「これが私が知っている事です。他の国でどのように語り継がれていたかは私は知りません。その部分は目を覚ましたら彼に聞くと宜しいでしょう。話してくれればですが……」

 ミュアンの言葉に、皆ベットに横たわるハミッシュを見た。

 ハミッシュがティモシー達を襲った時、彼は嫌々従っている様子はなかった。だとしたら何も話してはくれないかもしれない。

 そして、レオナールの安否も気になるとろこでもあった――。

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