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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第十一章 彼らの選択

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第五十八話

 「ティモシー」

 優しい声で呼ばれ目を開けた。そこにはミュアンが居た。

 「母さん……?」

 ティモシーは瞬きを数回する。

 「え! 母さん! まさかここに来るなんて! あ、えっと……」

 ティモシーは、何から聞いていいかわからなく、しどろもどろになった。

 「ティモシー、明日の早朝会いに行きます。起きたら直ぐに前に外で話した場所に来て下さい。勿論誰にも内緒です。あの王子にもですよ」

 「でも……。あの人は味方だよ!」

 「それでもです。もし、連れて来た場合は親子の縁を切ります。いいですね!」

 「え!」

 ティモシーは、ミュアンの言葉に茫然とする。

 ここで何も話さず、王宮から出て来いと言う事は、自分を連れ出す気だと言うのは、ティモシーでもわかった。だが、一方的過ぎる。

 (会った時に説得するしかない……)

 「わかったよ。目を覚ましたら直ぐに行くけど……」

 それを聞いたミュアンはほほ笑んだ。

 「では、待ってます」

 そう言い残しミュアンは消えた――。




     ☆~~~~~☆~~~~~☆~~~~~☆




 ティモシーは、パチッと目を覚ました。夢を見て目を覚ました中で一番憂鬱な目覚めだった。

 チラッとランフレッドを見ると、寝ている様に見える。

 (本当に寝ているのかな?)

 前回は起きていてつけられた。今回も寝たふりをしているかもしれない。そう思いながら身支度をする。

 ――夢でエイブやトンマーゾが接触してきたらまずは私に言いなさい。

 昨日レオナールに言われた言葉をティモシーは思い出す。接触してきたのは、ミュアンだが知らせなくてはいけないだろう。だが、縁を切るとまで言われれば、レオナールに伝える気にはなれなかった。

 (ごめんなさい。レオナール王子)

 ティモシーは心の中で謝り、部屋を後にした。

 今回は普通に正門から外に出た。勿論それは、戻って来るつもりだからである。

 約束の場所に着くと、ミュアンはもう待っていた。彼女は、ガシッとティモシーを抱きしめる。

 「ティモシー……」

 「母さん……」

 「一緒に逃げましょう」

 「待って!」

 ティモシーは、ミュアンをグッと押して離し、彼女を見つめた。

 「その前にちゃんと聞かせてよ。それに、一年勤めないと薬師の資格がなくなるっていったよね?」

 ミュアンは頷く。

 「話は後でちゃんとします。前にも言ったけど命あってのものよ。ここに居てはだめ!」

 ティモシーは、首を横に振る。

 「俺が母さんを守るから! それに……逃げても無駄なんだ。俺、ヘマやって刻印をつけられたから……」

 ミュアンは、驚いてティモシーを見つめる。

 「逃げきれないんだよ、ごめん」

 ミュアンはそれでも、首を横に振った。

 「だったらなおさらここには居れません!」

 「どうして? そんなにレオナール王子の事を信用できない?」

 「えぇ。出来ません」

 「え……なんで?」

 「俺もそれは知りたいな。一旦預けた相手を信用出来ない?」

 二人の会話に入って来た人物に驚いて振り向いた。そこにはランフレッドが立っていた。

 「立ち聞きなどして申し訳ありません。ですが俺もティモシーの後見人なので薬師をやめさせるというのなら、きちんと説明を聞かせてほしいのですが」

 ジッとランフレッドはミュアンを見て言った。

 「息子の身の安全の為です」

 「あなたといれば安全なのですか? 追われていると聞きましたが?」

 「あの王子……」

 ランフレッドの言葉にミュアンはボソッと呟いた。

 「違うから! 話したのは俺だから! 魔術師なのも追われているのも俺が話した……」

 「え?」

 信じられないとミュアンは、ティモシーの顔を見た。

 「母さん、レオナール王子もランフレッドも味方だよ。だから……」

 「そんな単純な話ではないのです!」

 ティモシーの言葉を遮るように、ミュアンは叫ぶ。

 「わかりました。では、お願いがあります。精神を切り離す術があるんですよね? それでヴィルターヌ帝国の皇帝が拉致されました。それをエイブが助け出したのですが、それを阻止する対策がありません。知っていたら教えて頂けないでしょうか? また同じ方法で捕らえられる恐れがあるが、対処法が無い状況なのです」

 「あなたに話してわかるのですか?」

 ランフレッドの話にミュアンはそう返す。

 「勿論俺じゃわからないです。知っての通り俺はルーの護衛兵です。本来なら彼を尾行などという役割は俺じゃない。ティモシーの後見人で事情も知っているからあてがわれているだけです。そして、俺が魔術師相手に歯が立つかというと、勝てないというのが本音です」

 「では、辞退すればよろしかったのでは?」

 「母さん!」

 ランフレッドに返した言葉にティモシーは、何故そんな事を言うのだとミュアンを見た。

 「俺が言いたいのは、エクランド国もこの騒動の渦中の中だという事なんですが。俺だけでは、残念だがルーを守れない。あの王子もお手上げの様子だ。せめてヒントぐらい置いて行ってほしい。それが出来ないのなら、ティモシーは渡せません!」

 ミュアンは小さくため息をついた。

 「あなたはこの国の為にティモシーを渡さないと言うのですか?」

 「はい。俺が守るのはあくまでもエクランド国なので……」

 「……わかりました。あの王子に話しましょう」

 ミュアンの返事に二人は安堵する。

 「ありがとうございます」

 ランフレッドは頭を下げた。



 三人はレオナールの部屋の前に居た。その三人を部屋の前に立つカミーユがジッと見つめていた。

 ランフレッドはドアをノックする。

 「ランフレッドです」

 「お入りなさい」

 レオナールの返事が聞こえ、ランフレッドはドアを開けた。ティモシーは迎えに来てドアの前に立つレオナールの姿に驚いた。

 初めて会った時の純白の裝束だったからだ。彼の正装なのだろう。

 「このたびは、我が儘を聞いて下さりありがとうございます。中へどうぞ」

 軽く会釈しレオナールは、ミュアンを中に促す。

 「様になってますね」

 「ありがとうございます」

 ミュアンの嫌みにレオナールはニッコリと返した。

 ソファーには、ルーファスが座っていた。彼は立ち上がりミュアンに軽く会釈する。

 「どうぞ、彼の前にお座りください」

 レオナールに言われミュアンは、ルーファスの向かい側の三人掛けのソファーの中央に座る。そしてティモシーもミュアンの横に座った。

 「ミュアンさん。イリステーナ皇女もお呼びしても宜しいでしょうか?」

 「皇女?」

 「はい。ヴィルターヌ帝国の皇女です」

 「なんですって!」

 レオナールからそう聞くと、ミュアンは立ち上がった。

 「ヴィルターヌ帝国の者もここにいるのですか?!」

 「えぇ」

 レオナールは、ジッとミュアンを見つめて答えた。それをミュアンは睨み返す。

 「あなたまさか……」

 「彼女は、我が国に助けを求めに来ただけです。レオ殿が招いた訳ではありません」

 ルーファスが立ち上がっているミュアンを見上げ言った。

 「そうですか……。宜しいですよ。ですが、話が終わりましたら私達はここを出て行きます」

 「ありがとうございます」

 レオナールは、ミュアンに礼を言うと、通路に居るカミーユに声を掛ける。

 「イリステーナ皇女を呼んできてください」

 「はい。かしこまりました」

 カミーユはその場を離れ、彼女を呼びに行った。

 ティモシーは、いつもと態度が違うミュアンに戸惑っていた。

 「何かお飲みになりますか?」

 「いえ、結構です」

 そんなやり取りをしているとドアがノックされる。

 「カミーユです。お連れしました」

 「ご苦労様」

 ドアを開けて入って来たのは、イリステーナではなく、グスターファスだった。

 「申し訳ありません。この国にも関わる事ですので、皇女を呼ぶように言った時に、一緒にお呼びするように言ってあったのです」

 レオナールはそう説明した。

 グスターファスの後に、イリステーナとフレアが入って来た。

 「別に宜しいですよ」

 一つため息をつくとミュアンはそう言った。

 グスターファスは、ルーファスの横に座り、その更に隣にイリステーナが座った。そして、彼女の後ろにフレアが立った。

 「あなたはお座りにならないの? 私の隣が空いていますが……」

 ルーファスの横に立つレオナールに、ミュアンが言う。

 「私はあなたの顔を見てお話をお聞きしたいので、ここでお聞きします」

 「そうですか。では、お話ししましょう。ですが、話せる部分だけになります」

 「構いません」

 レオナールがそう答えると、向かい側に座った三人は頷いた。

 「その昔、邪なるモノが発生し、それを鎮める為にハルフォード国とヴィルターヌ帝国は密かに手を組んだ。だが二カ国だけではどうしようも出来なかった。そこで、私の祖国、チミキナスナ国に手助けを求めた。私の国は、魔法陣などに長けていたので目を付けたのでしょう。私の祖国は今は、違う名に変わっておりますがね……」

 「では、あの組織の名はあなたの国の名前だったのですか?」

 ミュアンの話に驚いて、グスターファスは質問をする。

 「私の祖国というよりは、その時代の国名です。そして、私が追われているのは、その事を記した文献を持って国を出たからです。悪事に利用されると思い持ち出した。勿論、もうそんな文献は処分しておりますが、相手は知らずに追いかけている訳です」

 「そんな単純な話ではないだろう?」

 ミュアンの話に今度はルーファスが意見するとイリステーナが大きく頷いた。

 「私の国の文献を処分しようとしたのよ? あなたが持っている文献がほしいなら別の文献があると知れば、取りあえず手に入れようとするでしょう?」

 「そんな事は私の知るところではありません」

 イリステーナに平然とミュアンは返した。

 「ちょっと、母さん……」

 ティモシーは慌てた。目の前にいるのは、王族たちだ。

 ルーファスとイリステーナは、レオナールを見上げた。何か言わないのかという事である。彼らと目が合ったレオナールは困り顔だ。

 「本当の話はして頂けないのでしょうか?」

 「本当の話? 嘘などついていません。全て事実です。いえ、文献に書かれていた内容です」

 「その内容は、私の国にあった文献と変わらないではないですか!」

 イリステーナがそう抗議するとミュアンはほほ笑んだ。

 「では、私が嘘を言っていないという事になりますね」

 「………」

 その返答にイリステーナは、何も返せない。ミュアンの言う通りだからだ。

 「さて、話は終わりました。行きましょうティモシー」

 「え? ちょ、母さん」

 ミュアンは立ち上がると、ティモシーも立たせようと手を引っ張った。

 「ミュアンさん。私達にはこの説明で構いません。ですが、ティモシーには、全て話してあげてほしいのですが……。彼には知る権利があると思います」

 レオナールは、ミュアンをジッと見つめて言った。

 「今、話した事が事実です」

 「申し訳ありませんが、あなたの事を少し調べさせて頂きました。勿論、脅すつもりで言っているのではありません。彼には、真実を話してあげてほしいのです」

 レオナールとミュアンは、真剣なまなざしで見つめ合う。

 「真実を知ってどうします? どうにか出来るのですか?」

 「そ、それは……」

 「それと、あなたは自分の力量をわかっていて行動していますか? 出来もしないのに首を突っ込まないで頂きたいのですが!」

 それを聞いたレオナールは、一瞬驚いた顔を見せ、顔を伏せる。

 「……申し訳ありません」

 ボソッとレオナールは返した。

 「母さん!」

 あまりの言いようにティモシーは抗議するようにミュアンを見るが、彼女は険しい顔つきでティモシーを見た。

 「行きますよ」

 「………」

 「ミュアンさん。少し私と二人でお話しして行きませんか?」

 ゆっくりと立ち上がったグスターファスがミュアンにそう語り掛ける。

 「申し訳ありませんが、私にはもう話す事はありません」

 「では、私の話を聞いて下さるだけで結構です。魔術師としてではなく、薬師として私はあなたと会話をしたのですが。いかがでしょうか?」

 今度は、グスターファスとミュアンが見つめ合う。

 ミュアンは、小さくため息をつく。

 「お節介の方が多いですね。わかりました。二人っきりならお話をお聞きます」

 「ありがとう。では、場所を移しましょう。私の部屋でゆっくりと」

 ルーファスがどけると、グスターファスがドアに向かう。その彼の後をミュアンが歩き部屋を出て行った。他の者は、茫然としてその二人を見つめていた。

 「う……」

 うめき声が聞こえふと目をやると、レオナールがうずくまっていた。

 「レオ殿!」

 「……ずっと、発作は起きていなかったのに……。はぁ……はぁ……」

 「薬! 薬は?」

 ルーファスの言葉に弱弱しく、レオナールは首を横に振った。

 「ランフ!」

 「はい!」

 ランフレッドは、慌てて部屋を飛び出して行った。ブラッドリーを呼びに行ったのだ。

 (え? どういう事? レオナール王子って病気持ちだったの? 全然そんな素振りなかったのに!)

 「ダメだ。ちょっと見ててくれ」

 ルーファスは、イリステーナな達にそう言うと、奥の部屋に入って行った。

 イリステーナもティモシーも何が起きたのかわからなかった。

 バン!

 勢いよくブラッドリーが入って来ると、倒れ込んだレオナール―を抱き上げベットに横に寝かせた。

 「レオナール様。どうして薬を常備しておかないのですか……」

 そうレオナールに話しかけ、ブラッドリーは部屋を見渡す。

 「ルーファス王子はどちらに?」

 「あ、奥の部屋に……」

 指差しながらティモシーはそう答えた。そうするとブラッドリーは、その部屋に入って行った。

 「あの部屋って?」

 「調合室」

 ティモシーの質問にぼぞっとランフレッドは答えた。

 ブラッドリーは奥の部屋から出てくると、レオナールを少し起こし口の中に薬を流し込む。

 「口に含んで下さい。直ぐに楽になりますので……」

 「げっほ。はぁはぁ……はぁ……」

 次第に発作は治まって行く。

 「すみません。……ご迷惑を……お掛けました……」

 「少し横になりましょう」

 ブラッドリーは、レオナールをそのまま横に寝かせた。

 「一体何があって発作が……」

 ブラッドリーは振り返り問いかける。

 ルーファスは、チラッとティモシーを見て答える。

 「ティモシーの母親の一言が引き金だろうな」

 「え! ご、ごめんなさい! なんか、今日の母さんはいつもと違って別人で。あんな母さん、俺は初めて見た……」

 ティモシーは、謝ると俯いた。

 「虚勢を張っていたのかもな」

 ルーファスがぼそっと言う。

 「きっと……私達を遠ざけたかったのでしょう。彼女はもしかしたら……一人で全部背負う気なのかもしれま……せん」

 そうレオナールも言った。

 「え? それって、何をする気でいる……って……」

 顔を上げレオナールを見て話していたティモシーは途中で話をやめた。彼はすやすやと眠ったようだからだ。

 「ね、寝たのか? 先ほど混ぜた物って……」

 ルーファスが言うと、ブラッドリーは頷く。

 「この頃、あまり眠れないようでしたので……」

 「眠り薬混ぜたのかよ」

 ボソッとランフレッドは言う。

 「あなたって調合出来るのね」

 イリステーナの言葉にルーファスは片眉をピクッとさせる。

 「私は、薬師の国の王子なのですが?」

 「あ、あらごめんなさい」

 「まだ、医者の資格は持ってないけどな……」

 ボソッと言うランフレッドをチラッとルーファスは見ると

 「君は一言多いんだ!」

 と、言った。

 「俺、どうしたらいいんでしょうか? 母さんについて行った方がいいんでしょうか? それともこの国に残って一年間勤め上げた方がいいんでしょうか? ……でも、俺、ここに居ても一年間勤め上げれる気がしないんだけど……」

 ティモシーのこぼした言葉に誰も返事を返せなかった。

 結局の所、何もわからないままだったのだから。

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