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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第八章 惑わす声

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第四十二話

火曜日ではありませんが更新です

 翌日、目が覚めたティモシーは、心臓のバクバクが止まらなかった。

 覚えていたのだ。エイブが殺されるかもしれないと言った事も。途中からミュアンが乱入した事も。

 (夢だ大丈夫……)

 夢のはずなのに、現実に会っていたような感覚。牢にまで確認しに行きたいとまでティモシーは思った。

 隣のベットを見ると、ランフレッドが寝ている。戻って来ていた。

 (言った方がいいのだろうか?)

 夢の内容を話した方がいいだろうかとティモシーは悩む。

 (そうだ、母さんが……)

 会いに来ると言っていた。夢でなければ会いに来る。ティモシーはそう思い、そわそわしていた。

 トントントン。

 ドアをノックする音にティモシーは、ドアに駆け寄り開けるとブラッドリーが立っている。

 「おはよう。悪いがランフレッドを起こしてくれないか」

 「……おはようございます。今、起こします」

 違った。呼ばれたのはランフレッドだった。ティモシーは、彼を揺り起こす。

 「ブラッドリーさんが呼んでるけど」

 「うん? ブラッドリーさん?」

 ランフレッドは飛び起きた。

 「ルーに何かありましたか!」

 大慌てでブラッドリーの元に駆け寄った。

 「いや、そうではない。ある客人が来た。……その寝癖を直してからこい」

 そう伝えると、ブラッドリーは去って行く。ランフレッドは、手を頭にやると髪が立っていた。

 「あ、ティモシーおはよう。俺、身支度したら行くから。……何か困った事あったら、遠慮せずに俺に言えよ」

 「あ、うん……」

 前は、ブラッドリーに言えと言っていたのにと思うも頷く。

 しばらくして、ランフレッドは部屋を出て行った。

 「はぁ。別に夢の方がいいじゃん。エイブさん、死なないんだし……」

 気が抜けてティモシーは、ベットの上にポスンと座った。

 「はぁ。調合室に行こう」

 ティモシーが部屋を出ると、ダグもちょうど部屋から出て来た。

 「おはよう」

 「おはようございます」

 二人は、調合室へ向かう。

 「そう言えば、昨日どうだった?」

 「うん。ごはん美味しかった」

 「あははは。そりゃよかったな」

 他愛もない話をして歩くと調合室の前に着いた。

 ダグが調合室のドアに手を掛けた時、後ろから声が掛かる。

 「あの、ティモシーさんですか?」

 二人が振り向くと兵士が立っていた。

 「あ、はい……」

 「お母さんが訪ねて来ています」

 兵士の言葉に、ティモシーはハッとする。

 (母さんが来た!)

 ティモシーは、礼を言ってダッシュでミュアンのも元へ向かう。

 「よほど、母親に会うの嬉しいのですね。しかし、美人の親子ですね……」

 「へえ、母親似か……。見てみたいな。こっそり……」

 「何言ってるのよ!」

 いつの間にか、ドアを開けてベネットが立っていた。

 「あ、では……」

 兵士は慌てて、持ち場に戻って行く。

 ダグも挨拶をして、残念そうに調合室に入って行った。



 「母さん!」

 入り口にいるミュアンに、ティモシーは駆け寄った。

 「あの、夢じゃ……」

 「ちょっと、こっちへ来なさい」

 ミュアンは、ティモシーの手を引いて、入り口から離れた場所へ移動する。辺りに人影がない事を確認して口を開く。

 「あなた、今朝の夢の事を覚えている? たしか、エイブという男の……」

 ティモシーは、うんと頷いた。

 「夢じゃなかったんだ!」

 「いつから? 彼と夢で会っているのはいつから?」

 ティモシーは首を傾げる。覚えてはいない。だが、今朝だけではないのは確か。前日も少し覚えている。

 「わからないけど、前の日も見たような気がする。今回だけなんだ。全部覚えているの。ねえ、あれって夢じゃなくて現実なの?」

 ミュアンは、険しい顔つきで頷く。

 「いい、彼は魔術師よ」

 「うん……」

 ミュアンは、驚いた顔で、ティモシーの肩をガシッと掴んだ。

 「うんって……」

 「いた……」

 ミュアンは、ティモシーが痛みで歪めた顔をしているのを見て、怪我をしていると気が付く。

 「肩、怪我をしているの?」

 「うん。ちょっとぶつけて……」

 ティモシーは、そう言って俯く。首も包帯をとって大きな絆創膏を貼っている。

 「それ、首もそうだけど、仕事で出来たものじゃないわよね?」

 「………」

 「ティモシー、このまま村に戻りましょう」

 「え!」

 ミュアンの言葉に、ティモシーは驚いて顔を上げた。

 「いや、一年勤めないと、薬師の資格が取り消しになるから……。一年たったら村に戻るから!」

 「命の方が大事よ! 彼、言っていたわ。王宮に魔術師がいるって!」

 確かにそうだ。ブラッドリーの事は信用出来なくなていたが、ダグの事は今は信用している。だが、二人もいると言えば、本当に連れて帰られそうだ。

 「大丈夫。ペンダントもあるし……」

 「いいよく聞いて。絶対に知られてはダメなの!」

 ティモシーは俯く。もうすでに一人にバレてしまっている。

 「ねえ、まさかあのエイブって男にバレていないわよね?」

 「え? 多分気づいてないと思うけど……」

 ティモシーの記憶には、バレた記憶は残っていなかった。

 「そう……。私は、明後日の朝まで滞在を伸ばすからよく考えて!」

 考えてと言ってはいるが、一緒に帰ってほしいという目でミュアンは見つめていた。ティモシーには、うんと頷く事しか出来なかった。多分、今回は帰らない。いや、帰れない。勝手に辞めて王宮を出たら、レオナールは追いかけてくるだろう。

 ティモシーは、母親を見送ると王宮に戻った。



 その日の午後、調合室で調合をしていると、そこにブラッドリーが訪ねて来た。

 「悪いが、ダグとティモシーを借りる」

 何故その二人と思うもベネットは頷く。

 ティモシーは、ドキリとした。もしかしたらエイブさんは……。不安を胸にブラッドリーの後をダグと一緒について行った。

 連れて行かれたのは、レオナールの部屋だった。結界がある部屋。何かあったのには違いない。

 「失礼します。二人を連れてきました」

 中に入ると、レオナールの姿はない。やはり何かがあって、この部屋に集まっている。部屋には、グスターファスとルーファス、そしてランフレッドが居た。

 「何かあったんですか?」

 レオナール本人がいないのに、彼の部屋に連れて来られたのでダグも何かあったのだろうと気がついた。

 「二人が逃げた……」

 ため息交じりにグスターファスが言った。

 「え! どうやって?」

 ダグは、心底驚いていた。逃げられないと思ったから、レオナールは二人を置いて行ったのだろうと思っていた。なのに脱走したのである。しかも怪我で動けないエイブまで。

 「たぶん、ザイダが手引きしたのだろう。彼女の姿も消えた……」

 参ったとグスターファスは言う。

 ザイダは、二人が魔術師だと知らずに助け出したのに違いない。どうやって仲間と連絡を取ったかはわからないが、彼女一人では無理な話だ。

 「じゃ、エイブさんは生きている?」

 「面白い聞き方をするな? 王宮内にはいない。生きているかは不明だが、ザイダが手引きをしたとなるとエイブは生きているだろうな」

 ティモシーの質問にルーファスはそう答えるも目つきは鋭い。

 勿論ティモシーの質問に違和感があるからだ。昨日もそうだったが、様子が変だと言うのは、全員一致の意見だった。

 「お前、何か知っているのか?」

 ランフレッドが聞くも、ティモシーは慌てて首を横に振る。ここで夢の事を言う気にはなれなかった。

 「あの、ブラッドリーさんは、気づかなかったんですか?」

 ダグが聞くが、すまなそうに首を横に振った。

 「実は今朝、ヴィルターヌ帝国の使者が来ていて色々慌ただしかったのだ。その隙に逃げられた」

 ルーファスがそういうと、ティモシーは思い当たる。今朝、ブラッドリーがランフレッドを呼びに来た事を。

 「あの……。その人達は関係ないんですよね?」

 「わからん」

 ダグの質問にルーファスは、即答で返した。この場合は、可能性があると取るべきなのか。ダグは悩む。

 「実はヴィルターヌ帝国の使者の者は魔術師でな。だからここで話し合っているわけなのだ」

 グスターファスは、はぁっと大きなため息をついた。

 使者と二人の逃亡。偶然なのかそれとも策略なのか。

 「明日には、レオナール様がこちらにつくはずです。それにヴィルターヌ帝国の者は二人が捕らわれている事は知らないはずです。まあ、組織の者だった場合は、話は違いますが……」

 「使者が組織の人間なら、その国が組織の中枢って事になるけどな」

 ランフレッドがそう言うと皆頷く。

 「そうなると、宣戦布告な様なモノですよね」

 ダグがが発言すると皆、顔が険しくなる。

 「……ティモシー、あなたは今回の事について何も知らないのだな?」

 「え!」

 (俺、疑われているのか? 何で!)

 ティモシーは、グスターファスの質問に驚いて皆の様子を伺うと、全員ジッとティモシーの返事を待っていた。ティモシー自身は気づいていないが、いつもと態度が違うと周りは思っている。それで、この逃亡事件が起きた。疑うなというのは無理な話だ。

 「……関係ない」

 ボソッとティモシーは答えた。知らないとは言わない。逃げると知ってはいたが、夢の中の話だ。

 「そうか。わかった。信じよう。あなた達は、二人に関わっている。気を付けて過ごして欲しい」

 グスターファスの言葉に、二人は頷いた。

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