第四十話
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暫くするとランフレッド達は、トンマーゾを連れて戻って来た。彼は、ブラッドリーとダグの間に座らされる。ティモシーは、ダグとザイダの間に移った。
「さて、約束通り呼んだ。話してくれるな。ザイダ」
ザイダは、グスターファスの問いに頷いて答えた。
「私は、ティモシーに追われて、隠し扉の向こう側に身を隠したわ。扉の存在は前に発見していたの。使ったのは初めてだったけど」
やっぱり存在を知っていたとティモシーは一人頷く。
「その時、下に続いていたので下りたのよ。一階に続いていると思ったら地下牢に続いていたわ。壁にのぞき穴があって覗いたらトンマーゾさんが居て、隣にエイブさんもいるみたいだって言うから覗いたの……」
ザイダは辛そうな顔をする。
「ベットに寝かされ、大怪我をしたエイブさんが居たわ。驚いた私に、トンマーゾさんは、そうしたのはブラッドリーだって教えてくれたのよ!」
ザイダは、最後の方をブラッドリーを睨んで叫ぶように言った。
「トンマーゾよ。あなたは、経緯を知らないのに彼女にそのような事を言って惑わせたのか?」
「惑わせるねぇ。確かにエイブがどういう状況かは見ていない。だが、彼女に状況を聞いた。後は簡単だろう? あの魔術師の王子の仕業ではないのであれば、彼しかいまい。それとも外れていたか?」
トンマーゾも最後は、ブラッドリーに問いかけるように言った。彼は、ザイダにエイブの状況を聞いて、そんな怪我を負わせられるのは魔術師しかいないと思った。そう言ったのである。
「で、今日はあの王子が仕切っているんじゃないんだな? 王子も暇ではないか」
「王子……?」
誰の事だとザイダは呟く。
「なるほど。推測を聞かせた訳だな」
グスターファスがそういうと、トンマーゾは首を横に振る。
「推測ではなく結論ですよ。陛下。まあ、それが合っているかは、ティモシーに聞けばわかるでしょう。なあ、ティモシー」
ティモシーは、トンマーゾの問いに俯く。あの場面を思い出す。よく考えれば残酷だ。一歩間違えば死んでいただろう。
「もしかして、殺すつもりだった?」
つい、ボソッとティモシーはブラッドリーに聞いた。
彼は、少し間を置いてから、口を開く。
「そういう訳ではない。私は攻撃が苦手で結界が得意。だからあの方法を取った。彼の攻撃の威力が思ったより凄かっただけだ。殺すつもりなどなかった」
ブラッドリーの答えにランフレッドは驚いた。エイブに攻撃したのではなく、攻撃を反射したという答えだったからだ。何が起こったかは、レオナールには話してあるかもしれないが、実は語られていなかった。ここで真実を知っているのは、ティモシーとブラッドリーの二人だけである。
「でも、封印っていう……」
「残念ながら無理だな。彼に勝っているのは、結界だけだっただろう」
ティモシーの言葉に重なるように、ブラッドリーは答えた。ティモシーは信じられなかった。そうは見えなかったからである。堂々としていたし、エイブもそう思っていただろう。
「ブラッドリーさんは、とんだ策士だねぇ」
トンマーゾは、大袈裟なリアクションでニヤリと笑いながら言った。
「ねえ、いったいエイブさんが何をしたというの? 今の話からすると、攻撃を仕掛けてくるように仕向けたって事よね?」
そう……攻撃をするように仕向けた。そして、逃げられないようにして攻撃をした……。確実にダメージを与える為に。本当にあそこまで必要だったのだろうか? ティモシーは、売り飛ばそうとした相手だが、何故かそんなに悪い人ではないと思っていた。いや、この数日間でそう刷り込まれていたのかもしれない。
「彼が何をしたのかは、あなたには話せない。これは君を守る為でもある」
ザイダは、グスターファスの言葉に彼を睨みつけ俯いた。
「だったらもう何も話さないわ!」
「じゃ俺もそうするかな」
ザイダの言葉に合わせるようにトンマーゾは言う。彼は最初から話す気などないだろう。
「そうか。ならば仕方がない、今日はここまでとしよう」
グスターファスは、ティモシーも話さないだろうと思い、今日は終了する事にした。何とも後味が悪い終わり方になったと、彼は心の中でため息をついた。
部屋に戻って来たティモシーは、ボフンとベットに横になる。
「なあ、お前、誰かに何か言われたか?」
ランフレッドの言葉に、ティモシーはチラッと彼を見て、そして背を向ける。
「俺に誰が何を言うっていうんだ」
ティモシーの返事に、ランフレッドは何も返せない。彼に何かをいう者などいない。では一体ティモシーに何があったのか。ずっとこの頃すれ違いでまともに話していない。ティモシーに何が起きたかランフレッドは気づけなかった。
そして、夜も更けて行った――。
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「おう。エイブ」
光が彼に話しかけた。
「おや? トンマーゾさん? やってみる気になったんだ。どう? 楽しい?」
「お前はホント、呑気だな」
これまた光のトンマーゾがそう返す。
「俺はこれから助けを呼びに行ってくる」
「え? ここから逃げ出すの?」
「あぁ。今、あの魔術師の王子はここにいないみたいだからな。チャンスだ」
エイブは、ため息をつく。
「じゃ、俺の命もここまでか……」
「お前も連れて行くって」
「またまた、こんなお荷物殺して行くに決まってるでしょう?」
何故か間が空く。
「何とかしてやるって、ザイダを使えば……」
「彼女を? 協力者に仕立てる気? 難しいと思うけどなぁ。そうなれば、可能性はあるけど……」
トンマーゾの策にエイブは、うーんと唸る。
「お前のその能力、捨てるにはおしい」
「トンマーゾさんも出来てるみたいだけど?」
「なんとかな。死ぬ気でやってる」
その返事に、エイブはクスッと笑う。
「まあ、頑張って。期待しないでいるよ」
エイブは見えないがひらひらと手を振ると、トンマーゾは、スッとどこかへ飛んで行った。
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翌日、ティモシーが目を覚ますと、ランフレッドはぐっすりと眠っていた。昨日はあれから色々と打ち合わせなどがあり、ティモシーを部屋に送った後戻っていた。帰って来たのは遅いのだろう。ティモシーは、いつも通り先に寝ていた。
(起こさなくてもいいのか?)
今日の仕事の時間を聞いていないティモシーは、そう思うもほっておく事にする。遅刻しても王宮内だ。そこまで問題ないという結論になった。
ダグが迎えに来る前に部屋を出た。そして、逆に迎えに行く。
「おはようございます」
「おはよう。どうした?」
いきなり向かに来たので何かあったのかと思ったのである。
「うん? 別に。早く用意できたから……」
「そうか。じゃ行くか」
ティモシーが頷くと、二人は調合室に向かった。
午前中は数種類の調合をし、今日は午後も調合だった。
「何かまったりだね」
アリックがボソッと言った。
「……うん」
「だな」
二人が返事を返す。ベネットは休みだ。午前と午後の指示は、オーギュストが口頭で伝えるのみで、後は三人でまったりとやっていた。
そこに、ドアがノックされる。
「はい」
アリックが返事をし三人が振り向くと、オーギュストが顔を覗かせる。
「ティモシーにお客さんだ」
「え?」
ティモシーは、目をぱちくりとする。
(誰だろう?)
誰も思い当たらないが、正面入り口に向かう。そこには思いがけない人物がいた。両親だ。
一か月半ぐらい会っていなかっただけだが、色々あったせいか、すごっく久しぶりに感じた。
「元気にしていた?」
ティモシーの母親がそう声を掛ける。
彼女は、ティモシーと同じく銀の髪を一本に縛り、ティモシーに似て……いや逆か。整った顔で美人である。どう見ても二人は親子である。
「遅くなったがおめでとう。本当に薬師になってしまうなんてな」
残念そうにオズマンドは言う。
「ご無沙汰してます!」
三人に後ろから声を掛けて来た。ランフレッドだ。彼にも連絡がいっていた。
「いやぁ。すまないね」
「いえ。ちゃんとお勤めしてますよ」
オズマンドにランフレッドはそう返す。
「初めましてかしら? 母親のミュアンです」
ミュアンが頭を下げると、ランフレッドも頭を下げた。
「今日、二人共夜、ご飯一緒にどうだ? 時間取れそうか?」
オズマンドの誘いに、ランフレッドは二つ返事で返す。
「では、お二人の宿の方にお迎えに行きます」
ランフレッドがそう言うと、二人は頷き、また後でと去って行った。
「ティモシー……。その、色々あった事ないしょな」
すまなそうに言うランフレッドに、ティモシーは頷いた。
仕事を終えたティモシーとランフレッドは、ティモシーの両親と合流し食事処でディナーを食べていた。
ランフレッドが選んだにしては、小洒落た落ち着きのあるところだった。食べに行くと決まってから予約を入れていた。
「素敵なところね」
「ここ、酒も料理も美味しいですよ」
ランフレッドはそう言って、酒も勧める。
ティモシーは、どんな仕事か二人に話す。勿論、襲われた件は内緒にして。
「ティモシー、大丈夫そうだったら、このまま王宮で働いてもかまわないからね」
ミュアンは、そう言った。それは魔術師だとばれなさそうならばと言う意味だろう。ティモシーは、神妙な顔つきで頷く。もう色々な目に合い、一人の人にバレているとは言えない。
二人を宿に送り、ティモシーは名残惜しそうにランフレッドと王宮に向かう。
「大丈夫か?」
元気がなさそうなティモシーにランフレッドは声を掛ける。
「うん……」
そう答えながらもため息が漏れた。会えたのは嬉しいが、本当の事が言えず後ろめたい。ティモシーは、そう思いながら歩いていた。




