十九葉め
さて、もうそろそろでこの手紙も書き終わる。
外に出たら、まずは家族に謝らなければならない。
今度こそ、あのとき言えなかった言葉を残そう。『いままでたくさんの幸せをくれてありがとう』と、『辛い思いをさせてごめんなさい』、それから『さようなら』だ。
そして、この手紙を読んでいるあなたには教えてほしい。
――十四才の私は、けっしてこの世界で狂うまいと誓った。
それは守られたのだろうか。
私はあの世界に勝ったのか、負けたのか。
その判決を、酔狂にも最後までこんな話に付き合ってくれたあなたに、任せたい。
けれど、どんな判決が下されようとも、あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもう現世にはいないのだろう。
もしかしたら、常世に行ったところで、エドアルド国に生贄にされて死んで終わりなのかもしれない。
あるいは、私の魔力が尽きて、どこかで力尽きるのがオチかもしれない。
だけど、まずはシヨウの故郷に行ってみようと思う。
シヨウの生まれ育った国のことを、知ってみたい。
それに、やっぱり私は信じているのだ。
暖かな春の日に、満開の桜の下で、少し長い眠りについてしまったシヨウを起こしてあげて。そうして、「おかえり」と腕を広げて彼を迎えることができる日が、来るのではないかと。